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LinuxをインストールしたApple シリコン搭載Macで「DRM保護されたNetflixムービー」を鑑賞する方法


Asahi Linux」の登場によって、M1やM2といったApple製チップ搭載MacにLinuxをインストールすることが可能となりましたが、Asahi Linuxには「Netflixのムービーを閲覧できない」という問題が存在していました。この問題が発生していた理由や対策方法の確立に至った経緯をセキュリティ研究家のDavid Buchanan氏が解説しています。

The Quest for Netflix on Asahi Linux | Blog
https://www.da.vidbuchanan.co.uk/blog/netflix-on-asahi.html

ムービー配信サービスや音楽配信サービスはDRMと呼ばれる保護技術を用いてコンテンツの不正コピーを防いでいます。WindowsやmacOSを搭載したマシンではEdgeやSafari、Chromeといった各種ブラウザがDRMに対応しているためコンテンツの閲覧に問題が生じることは少ないのですが、Linux搭載マシンやArm系CPU採用マシンなどのマイナーな環境ではDRMが原因でコンテンツを再生できない問題が頻繁に発生します。

Netflixは、Googleが開発したDRMの一種「Widevine」を用いてコンテンツを保護しています。しかし、LinuxにおけるWidevineの公式サポートは「x86もしくはx64対応CPUを搭載したマシンでChromeを使用する」という場合に限って提供されているため、「M1やM2などのApple シリコン(Arm系CPUを搭載したSoC)採用Mac」での動作を想定したAsahi LinuxではNetflixのコンテンツを再生することが不可能でした。インターネット上にはWidevineを迂回するソフトウェアも出回っていますが、Buchanan氏は「正当な手段」でのNetflix利用にこだわり、Asahi LinuxでWidevineを使用可能にすることを目指しました。


上記の通り、LinuxにおけるWidevineの公式サポートはChromeのみに提供されていますが、FirefoxなどのブラウザはChromiumプロジェクト(Chromeの基盤となっているオープンソースプロジェクト)で管理されているWidevine実装方式を参考にしてWidevineに対応しています。しかし、このような裏技的対応方法は「x86もしくはx64対応CPUを搭載したマシン」でのみ可能で、Asahi LinuxのようなArmマシンで動作するOSでは別の対応策を考える必要があります。

Armマシンで動作する著名OSの1つに、Googleが開発しているChrome OSがあります。上記の通りWidevineはArmマシンではサポートされていないはずですが、Chrome OSではWidevineがサポートされており、Netflixなどのコンテンツを閲覧可能。さらに、シングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」の開発チームがChrome OS向けWidevineを参考に「Raspberry Pi向けWidevine」を開発した前例も存在しています。


Asahi Linuxは、Linuxディストリビューション「Arch Linux」のArm対応版をベースに開発されています。Buchanan氏が調べた結果、Arm対応版Arch Linux向けに開発されたWidevineのパッケージが存在することが判明しました。このパッケージはArch Linuxによって公式サポートされたものではありませんが、インストールすることで問題なくNetflixのコンテンツを閲覧可能になるとのこと。


Arm対応版Arch LinuxでWidevineを利用可能なら、Asahi LinuxでもWidevineをすんなり利用可能に思えます。しかし、Asahi Linuxには「ページサイズが16Kである」という問題が存在しており、ページサイズ4Kを前提に開発されているWidevineをそのまま動作させることは不可能だったとのこと。

そこで、Buchanan氏は「Arm対応版Arch Linux向けWidevineパッケージ」を16Kに対応させるためのパッチを開発し、同パッケージのメンテナーと連絡を取ってパッチを取り込んでもらいました。これにより、Asahi Linuxユーザーは同パッケージをインストールすることでWidevineで保護されたコンテンツを閲覧できるようになりました。

しかし、Netflixはブラウザのユーザーエージェントの確認も行っているため、上記のパッケージをインストールしただけではNetflixのコンテンツを閲覧することは不可能でした。そこで、Buchanan氏は以下に示すChrome OSのユーザーエージェントを用いてChrome OSになりすまし、Netflixコンテンツの閲覧に成功しました。

Mozilla/5.0 (X11; CrOS aarch64 15236.80.0) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/109.0.5414.125 Safari/537.36


ただし、上記の方法ではムービーの解像度が最大720pに制限されていたとのこと。この問題の対策として、Buchanan氏は「明示的に1080pでの再生を要求する」という操作を自動化できるブラウザ拡張機能「Netflix 1080p」を導入。これによって、ついに「Asahi LinuxをインストールしたMacで1080pのNetflixムービーを再生する」という環境が実現しました。


当初の目標通り、Asahi LinuxでNetflixムービーを再生することには成功しました。しかし、Buchanan氏は「DRMに対応させるよりも、Torrentクライアントを使う(違法アップロードされたNetflixムービーをダウンロードする)方が圧倒的に簡単です」と述べ、コンテンツを保護するはずのDRMが違法ダウンロードを助長する結果につながっていると指摘。その上で、Googleに対してArm版Linux向けWidevineの公式サポートを求めています。

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in ソフトウェア, Posted by log1o_hf

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