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「フェイクニュースや誤情報を見分ける方法」をフィンランドでは学校で子どもたちに教えている


インターネットの発達は人々の情報共有や意見交換において重要な役割を果たしていますが、同時にフェイクニュースや誤情報が拡散しやすくなるという問題も発生しました。そんな中、教育水準が高いことでも知られるフィンランドでは、「フェイクニュースや誤情報を見分ける方法」を学校で教えているとのことです。

How Finland Is Teaching a Generation to Spot Misinformation - The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/01/10/world/europe/finland-misinformation-classes.html

フィンランドのハメーンリンナで中学校の教師を務めるSaara Martikka氏は、8年生(日本の中学2年生に相当)の生徒たちにニュースの記事を読ませて、「記事の目的は何か?」「いつ、どのように書かれた記事か?」「著者の中心的な主張は何か?」といった点について議論させる授業を行っています。また、別の授業では3本のTikTok動画を見せて、クリエイターの動機や視聴者に与える影響について話し合わせたとのこと。

一連の授業は、子どもたちの「インターネット上のフェイクニュースや誤情報を見分ける能力」を養うために行われたものです。Martikka氏は、「ニュースの内容が良かったからといって、それが真実であるとは限りません」と述べています。

教育水準が高いことで世界的に知られるフィンランドでは、フェイクニュースを見分けるための教育プログラムを就学前の児童の時点から実施しています。フィンランドにおけるメディアリテラシー教育を監督する国立視聴覚研究所のLeo Pekkala所長は、「教師が教えている科目が体育であれ、数学であれ、国語であれ、『若い子どもたちと関わる中で、メディアリテラシー教育の要素をどのように取り入れたらいいのか?』と考える必要があります」とコメントしました。


国家的なメディアリテラシー教育の成果は、国際的な調査結果にも反映されています。ブルガリアにあるOpen Society Instituteが発表した「フェイクニュースに対する回復力(レジリエンス)」に関する2022年の調査結果では、フィンランドが5年連続でヨーロッパ41カ国中の1位を獲得しました。

このランキングは報道の自由、社会に対する信頼のレベル、読解力、科学、数学のスコアに基づいて算出されたものです。なお、ランキングの2位以下はノルウェー、デンマーク、エストニア、スウェーデン、アイルランドと続き、下位の国々は北マケドニア、コソボ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アルバニアとなっています。


Open Society Instituteの調査にアメリカは含まれていませんが、別の世論調査では2016年以降、フェイクニュースや誤情報がまん延していることが示されています。調査会社のギャラップが2022年10月に発表した調査結果では、「マスメディアはニュースを正確に、公平に報道している」と考える人はアメリカ人のわずか34%しかいないことが判明しました。

一方、調査会社のIRO Researchによるアンケートによると、フィンランドでは76%の人々が紙またはデジタルの新聞を信頼できると考えていることが示されました。アメリカの日刊紙であるニューヨーク・タイムズは、フィンランドの優れた公立学校制度や大学の学費無償化といった教育水準を上げる政策、政府への高い信頼度、教師への尊敬といった面もフェイクニュースへ対抗するための利点になっていると主張しています。

また、フィンランド語の話者は約540万人程度と非常に少ないため、非ネイティブスピーカーによって書かれたフェイクニュースは、文法や構文のミスで簡単に識別できる場合があるとPekkala氏は述べています。


フィンランドの教師はメディアリテラシー教育を行うことが義務づけられていますが、授業の実施方法については大きな裁量権が与えられています。たとえばMartikka氏は、ニュース記事やTikTok動画について生徒たちに議論させる授業のほか、実際に自分の動画や写真を編集させることで、情報操作がいかに簡単なのかを実感させる授業も行っているとのこと。また、ヘルシンキの教師であるAnna Airas氏は「予防接種」といったワードを検索させ、検索アルゴリズムがどのように機能するのか、そして検索結果の上部に表示されたからといって必ずしも信頼できるとは限らない理由について議論させているそうです。

フィンランドでは2013年にメディアリテラシー教育の国家目標を策定し、その後数年間でフェイクニュースや誤情報の見分け方について教えるキャンペーンを加速させました。今日のティーンエイジャーはSNSのある中で成長してきましたが、若者も陰謀論にはまりやすいという研究結果があるように、SNSに慣れているからといってフェイクニュースにだまされにくいわけではありません。フィンランドは国境を接するロシアのプロパガンダキャンペーンにさらされやすいため、ロシアとウクライナとの戦争が始まった2022年以降は、メディアリテラシーの重要性がさらに増しています。

ヘルシンキの教師であるMari Uusitalo氏は、教師としての16年間で子どもたちの読解力が明らかに低下している様子を見てきたとのこと。Uusitalo氏はその理由について、ゲームや動画を見て過ごす時間が増え、読書に費やす時間が減ったことが原因ではないかと考えています。読解力が低くて注意力が持続しない場合、生徒は動画で見たフェイクニュースを信じたり、誤情報を見分ける知識が身につかなかったりする可能性が高いとUusitalo氏は指摘しています。

Uusitalo氏は、自分の目標は真実とうそを区別するための方法を生徒に教えることだと主張しています。「私は生徒たちに、私と同じように考えさせることはできません」「私は彼らに対し、彼ら自身の意見を作るためのツールを与える必要があるというだけなのです」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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