500億円超でMicrosoft HoloLensを追加購入しようとする陸軍に議会が待ったをかける
Microsoftの複合現実(MR)ヘッドセット「HoloLens」の技術をベースにしたヘッドセットを最大6900台購入するというアメリカ陸軍の要求をアメリカ議会が拒否したと報じられています。アメリカ陸軍は1兆7500億ドル(約226兆円)の政府資金調達法案の中で、約4億ドル(約520億円)を要求していましたが、テスト中に頭痛や吐き気といった「任務に影響を与える身体的障害」が発生したと報告されていることで、議会が待ったをかけたとみられています。
Microsoft Combat Goggles Falter as Congress Says No to Buying More This Year - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-01-12/microsoft-combat-goggles-falter-as-congress-says-no-to-buying-more-this-year
Congress says the Army can’t spend $400 million buying Microsoft HoloLens headsets - The Verge
https://www.theverge.com/2023/1/12/23552132/microsoft-hololens-army-contract-denied-v1-2-improvements
アメリカ陸軍は統合視覚補強システム(IVAS)として、MicrosoftのHoloLensを軍用にカスタマイズしたモデルを導入する計画を2018年から進めています。IVASのHoloLensにはセンサーやナビゲーションといったリアルタイム情報が表示されるほか、暗視ゴーグルや赤外線ゴーグルの機能統合、拡張現実(AR)トレーニング機能が搭載される予定になっています。
すでにアメリカ陸軍は約1000人の兵士によるのべ10万時間に及ぶテストを行い、バージョン1.2と命名された新モデルのIVAS用HoloLensを開発。
アメリカ陸軍は10年間で12万1000個のデバイス・予備品・サポートサービスを供給する契約を219億ドル(約2兆8300億円)でMicrosoftと締結しており、すでに5000台のHoloLensを発注。このHoloLensは改良型が開発されるまでの訓練に使用される予定となっています。
Microsoftが2兆円超でアメリカ陸軍に「HoloLens」12万台を供給する契約を締結 - GIGAZINE
しかし、アメリカ議会は実地テストの結果に懸念があるとして、陸軍の要求を却下しました。このテストでは頭痛、眼精疲労、吐き気など「任務に影響する身体的障害」が明らかにされました。
Microsoft HoloLensのテストで米軍兵士の80%以上が頭痛や吐き気を覚えたことが判明 - GIGAZINE
アメリカ陸軍の広報担当者であるデヴィッド・パターソン氏は、これらの調達資金4億ドルのうち4000万ドル(約52億円)をゴーグルの新モデルを開発するために回すことが議会で承認されたと述べています。
なお、アメリカ陸軍はすでにテストで明らかになった身体的障害に対応するため、「新しいフォームファクター」と「UIと快適性を改善するための分散型カウンターウェイトを備えた薄型ヘッドアップディスプレイ」、ソフトウェアの改善を含んだIVASのバージョン1.2を用意していると述べています。このIVAS バージョン1.2を開発するため、アメリカ陸軍はすでに2022年度予算から1億2500万ドルを捻出してMirosoftと契約を交わしたと、Bloombergは報じています。
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