インタビュー

「ファンがソニックを育てて映画にしてくれた」、映画『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』中原徹プロデューサーインタビュー


映画「ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ」が2022年8月19日(金)から絶賛公開中です。青いハリネズミのキャラクター「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」が縦横無尽に走り回るゲームからどのように映画が生み出されたのか、セガ側でビジネスとクリエイティブの両面の窓口を担当した中原徹プロデューサーに話をうかがいました。

映画『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』公式サイト
https://sonic-movie.jp/

今回インタビューに答えてくれた中原徹プロデューサー、トム・ワカウスキー役のジェームズ・マースデンとともに。


GIGAZINE(以下、G):
まずは中原さんが本作にどのように関わっているのかというところから伺いたいと思います。

中原徹プロデューサー(以下、中原):
映画の契約、脚本、撮影、宣伝広告、配給などにわたり、セガ側のプロデューサーとして、監督や映画会社(パラマウント社)の各担当責任者と協働しています。

G:
ほうほう。

中原:
「プロデューサー」という場合、契約交渉などのビジネス周りと制作に関するクリエイティブ周りで分かれます。映画会社内部でもその辺りの役割分担は明確に分かれていますが、私は『ソニック・ザ・ムービー(1作目・前作)』『ソニック VS ナックルズ(2作目・本作)』で両方の役割を兼ねていました。

G:
おお、なるほど。もしセガ側からパラマウント側に要望等があるときには、中原さん経由で伝えたという形でしょうか。

中原:
はい、そうですね。パラマウントに対していろいろな窓口を設けると情報が錯綜しますので。ソニックの映画については1作目、2作目と引き続き担当しています。

G:
『ソニック・ザ・ムービー』シリーズのすべてを知っているというわけですね。まさにそんな中原プロデューサーにうかがいたいのですが、本作は前作に比べてあっちこっちが激しく強化されていてド派手になっているという印象を受けました。どういった判断でこのような形になったのでしょうか。

中原:
これには理由が2つあります。1つは一般論になるのですが、2作目は1作目を超えるスケールでというファンの期待があります。お蔭様で1作目では利益を上げることができたので、当然、2作目を製作するなら、製作費・宣伝広告費を上げてもっとファンを喜ばせようということになりました。もうひとつの理由は、1作目で上手くソニックを全世界の人々に紹介できたので、2作目で本来のソニックワールドを反映する豊富なキャラクターとアクションを含む映画が製作できたという点です。


G:
ほうほう。

中原:
1作目では、ソニックをご存知ない方々にもソニックを紹介する必要がありました。例えば、『アベンジャーズ』を例に取ると、いきなりキャラクター勢揃いで大作を製作しても上手くは行かないと思います。『アイアンマン』『キャプテン・アメリカ』『ハルク』など、それぞれのキャラクターにファンが慣れ親しんでいるからこそ“勢揃い映画”が上手く行くと思うんです。その意味で、ソニックの1作目では、お客さんの心とソニックをつなぐための人間的な描写が必要だったんですね。

G:
なるほど、確かに。

中原:
多くのアクション映画の重要な構成要素は「アクション」「ジョーク」「感情」の3本柱ではないかと考えています。1作目では「感情」がいまお話ししたように重視されました。2作目では、より「アクション」を強調できる地盤ができたというわけです。


G:
ああー。

中原:
ジョークについては、1作目以上に2作目でも力を入れることができました。なんといっても、天才コメディアンのジム・キャリーが演じるドクター・ロボトニックが2作目でも登場しますし、その部下のエージェント・ストーンとのからみも面白いです。また1作目に続いて登場するお巡りさんのウェイドのジョークも笑えるのではないかと思います。


G:
本作はゲーム準拠というか、メガドライブの『ソニック』をやっていた身からすると、そのまんま盛り込まれているなと感じる部分がありました。

中原:
ゲームのソニックのファンが気づくことができる仕掛けを随所にまぶしています。同時に、ソニックをそこまでご存知なくても、ハリウッド発のファミリー向けアクション映画として存分に映画を楽しんでいただけるように、両立を図りました。

G:
確かにそうでした。

中原:
たとえば劇中に出てくる部屋や壁などのデザインひとつを取っても、知る人が見ればニヤッとしていただけるような工夫をしています。ジョークの中にも、ゲームのファンならクスッとなる要素を入れつつ、ゲームを知らなくても素直に笑えるように心がけました。

G:
「ゲームのファンならクスッとするようなもの」というのは、セガ側から提案したものなのでしょうか。それとも、脚本で盛り込まれたり、監督が提案したりしたものなのでしょうか。

中原:
1作目を作る前は、どちらかといえばセガの方が「いろいろ考えてファンを喜ばせて欲しい」と言っていたのですが、2作目では、監督やプロデューサーチームも、ものすごくソニックのゲームを研究しており、彼らからの提案もたくさんありました。やはり、1作目を製作し、公開する過程で、ハリウッドの面々が、いかにソニックのファンが熱烈なのかを理解したことで、よりソニックを研究されたのだと思います。ソニックのファンはソニックへの愛が強く、スポーツの人気球団の熱烈なファンに負けていません。

G:
(笑)

中原:
ファンの皆さんがこれまでソニックを育て、ハリウッドの映画化にまで持ってきてくださいました。そのファンの声を聞かずしてよい映画は作れないということを皆が学んだのだと思います。

G:
すごい(笑) それでゲームの雰囲気が強くなっているんですね。

中原:
監督や他のプロデューサーが「この部分のデザインとか、この場面の雰囲気とか、ビデオゲームの『ソニックアドベンチャー』に似てていいだろう」と誇らしげに提案をするなど、どっちがセガの人間か分からなくなるような場面すらありましたから(笑)。

G:
本作で感心したのはナックルズやテイルスのデザインが本当によくできているなという点です。


中原:
そこは本当に1作目で苦労したところで、ゲームのキャラクターをそのまま切り絵のように銀幕に貼り付けても上手く行きませんし、あまりにデザインが離れてもファンの中には違和感を覚えられる方もおられるでしょうし……。1作目のソニックのデザインで苦労したので、その苦労を乗り越えて完成した「映画版ソニック」に倣う形で、「映画版テイルス」「映画版ナックルズ」のデザインが完成しました。

G:
そういう流れだったんですね。確かに、1作目の時にはいろいろとありましたが、本作を見たときに、いかにもナックルズだなという感じがして、まったく違和感がなくてほっとしました。


中原:
そう言っていただけますと本当に嬉しいです。

G:
1作目の製作の際に、2作目の製作も決まっていたのでしょうか?

中原:
決まっていません。ただ、もちろん監督や役者の皆さん、我々セガには2作目を作りたいという思いはありました。

G:
すでに3作目もありそうな感じですが……。

中原:
1作目以上に2作目が成功したので、ぜひ製作したいという思いはあります。現在、実現に向けて関係者全員で努力しています。

G:
1作目は「ゲーム原作映画として過去最高のスタート」を切りましたが、それを上回っているとなれば続きには期待してしまいますね。

本作の制作にあたり、思ったより難しかったところ、そしてうまくいったところは、どういった点でしたか?

中原:
まず難しかったのは、やはり新型コロナ関連です。グリーンライト(製作の意思決定)が点灯して「よし、やるぞ」となったのが2020年4月~5月でした。ちょうどアメリカはロックダウンの最中で、僕はLA在住で身動きが取れませんでした。予算表を見たり、ロケをする予定のバンクーバーのロケ地詳細を確認したりするんですが、これをリモートでやり取りするのが大変でした。すごく効率が悪くて、「本当にこれで映画撮影ができるんだろうか?」と思ったぐらいです。

また、撮影現場においても、普段はいろいろな人が1つのパス(通行証)で撮影現場を行き来できるようにしているんですが、今回はパスの色を3色に分けて、監督や役者に近づける人を一握りにしました。つまり、第2エリアまでしか入れない人、第3エリアしか入れない人というのもいる。例えば、ケータリングを用意してくれる人は第3エリアまでとか、そういう区切りにして、第3エリアで感染者が出ても感染エリアを切り分けられるというようにしたんです。

G:
ははぁ、なるほど。

中原:
思っていたよりもよかった点は、1作目を作ったことで、監督、役者、パラマウント、他の多くのスタッフを含めてチームが強い信頼関係で1つになっていたところです。コロナによる不便を乗り越えられるぐらいのチームワークができていたんです。「どんな映画を作るの?アクションはどうなるの?感情の動きは?」ということについても、もうチームでスクラムが組めていたので、大方針に関する意見の違いで激論することはなく、「もっと良い映画にしよう」と建設的な意見がポンポン出されて、そういう意味では、(コロナで不便でしたが)楽しく、素敵な現場でした。

撮影中のジェフ・ファウラー監督


G:
そもそも本作の企画は最初、脚本を作るところからスタートしているのでしょうか?

中原:
そうです。ハリウッドは「脚本」を非常に重視します。たとえば「ロバート・ダウニー・Jr.とキャメロン・ディアスの主演でこういう映画を作りたいです」とか、「あの大作映画の監督がやる気です」などと、大物の名前だけを出すだけでは、まずグリーンライトは出されないと思います。

G:
脚本も、フルじゃないとダメですか。

中原:
フルではなくても、映画会社や製作費を出資する人たちが納得するレベルの完成度が通常は求められます。

G:
前作を見ずに本作から見る人もいると思います。最後に、中原さんからメッセージをお願いします。

中原:
『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』はまさにスカッとさわやか、すっきりした気持ちになれる、ハリウッドの王道冒険アクション映画です。笑いあり、涙あり、楽しく家族で見られる作品で、ゲームを知っている方はプラスアルファの楽しみ方があり、まったく知らない人でもゼロから楽しめます。アメリカをはじめとする世界中で公開され、おかげさまで興行収入は500億円を突破することができました。アメリカで活躍した日本生まれのキャラクターの凱旋帰国ということで、イチロー選手や大谷翔平選手が日本に帰ってきて試合に出ているような感じで楽しんでいただければと思います。

G:
本日はありがとうございました。

映画『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』は大ヒット上映中です。

映画『ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ』90秒メイン予告 最強バトル編! - YouTube

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in インタビュー,   動画,   映画,   アニメ, Posted by logc_nt

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