フライパンやシャンプーに使われる「永遠の化学物質」を簡単かつ安全に破壊する方法が発見される
フライパンのコーティングや消火剤、ファストフードの包装紙などには、はっ水性・はつ油性があり、熱や薬品に強い「ペルフルオロアルキル物質・ポリフルオロアルキル化合物(PFAS)」という物質が使われています。しかし、このPFASは極めて分解されにくく何十年も環境に残留するため、「永遠の化学物質」と呼ばれ、問題となっています。そんなPFASを簡単かつ安全に分解できる方法を発見したと、ノースウェスタン大学の研究チームが発表しました。
Simple mix of soap and solvent could help destroy ‘forever chemicals’ | Science | AAAS
https://www.science.org/content/article/simple-mix-soap-and-solvent-could-help-destroy-forever-chemicals
Scientists find simple, safe method to destroy 'forever chemicals'
https://www.france24.com/en/live-news/20220818-scientists-find-simple-safe-method-to-destroy-forever-chemicals
PFASが分解されにくい理由は、PFASの分子に炭素-フッ素の共有結合が含まれているからです。フッ素は電気陰性度が最も高いため、炭素との共有結合は非常に強い化学結合の1つです。PFASはこの炭素-フッ素の共有結合が鎖のように長くつながる化合物になります。
しかし、研究チームによると、一部PFASが持つカルボキシ基(R-COOH)が弱点だとのこと。一般的に溶剤として使われるジメチルスルホキシド(DMSO)と水酸化ナトリウム水溶液の混合液にPFASを混ぜ、80℃~120℃で加熱したところ、DMSOによってカルボキシ基が壊れ、連鎖的に炭素とフッ素の共有結合が切れていくことが判明しました。
PFASの分解後に残されるのは回収しやすいフッ素イオンと、炭素と酸素を含む無害な化合物だったと研究チームは報告しています。DMSOと水酸化ナトリウムのコストが低く、比較的低温であるために処理が容易で安全性が高いのも、今回の分解方法の大きなメリット。そのため、簡単な設備で飲料水からPFASを予め分解して除去できるようになる可能性も示唆されています。
ただし、アメリカ環境保護庁に登録されているPFASは1万2000種類もありますが、カルボキシ基を持つPFASは全体の約40%です。研究チームはこの40%のPFASがDMSOを用いて分解できる可能性があると述べていますが、テストは行われていません。また、難燃剤や電池に使われるPFASはカルボキシ基の代わりにスルホン基(R-SO3H)を持つため、DMSOによって分解されないとのこと。
研究チームは、「どんな分子でも、それぞれに独自の弱点があります。それを特定できれば、破壊する方法もわかります」と述べ、今後の研究に期待を寄せています。
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