FIFAが2022ワールドカップで導入される「半自動オフサイドテクノロジー」について解説
国際サッカー連盟(FIFA)が2022年11月21日からカタールで開催される2022 FIFAワールドカップで使用される「Semi-automated offside technology(半自動オフサイドテクノロジー)」について解説しています。
Semi-automated offside technology to be used at FIFA World Cup 2022™
https://www.fifa.com/technical/media-releases/semi-automated-offside-technology-to-be-used-at-fifa-world-cup-2022-tm
Sensor-filled soccer balls to determine offside calls at 2022 FIFA World Cup | Mashable
https://mashable.com/article/fifa-world-cup-ai-offside-tech
ワールドカップでは、2018年のロシア大会で初めてVARテクノロジーが導入され、これが大きな成功を収めました。これを受け、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は、「テクノロジーを最大限に活用し、VARテクノロジーをさらに強化することに努める」と宣言していました。VAR強化の一環として、FIFAはアディダスやパートナー企業と共にテクノロジーの開発を進めおり、2022 FIFAワールドカップでは「半自動オフサイドテクノロジー」を採用すると発表しました。これにより、ピッチの審判団はより速く正確にオフサイド判定が行えるようになるとFIFAは説明しています。
FIFAの「半自動オフサイドテクノロジー」がどんなものになっているのかはYouTubeで公開されている動画や、FIFAのメディアリレーションディレクターのブライアン・スワンソン氏がTwitterで公開した動画を見ればわかります。
NEW: Semi-automated offside technology to be used at FIFA World Cup 2022. Full details on @FIFAcom. Here’s how it works ???? pic.twitter.com/qrDzjsXxph
— Bryan Swanson (@fifa_bryan) July 1, 2022
サッカーのルールの中で最も解釈が難しいのがオフサイドの判定です。Jリーグ公式によると、オフサイドは攻撃側チームの競技者が得点をするために守備側チームのフィールド内で待ち伏せすることを防ぐために定められたルールで、「オフサイドポジションにいる味方にパスを出す、あるいはオフサイドポジションにいる味方プレーヤーが相手を邪魔したり、ボールに関与すると反則となり、相手チームに間接フリーキックが与えられる」というもの。
問題は「この攻撃側チームの選手(画面奥の白色のシルエット)がオフサイドポジションにいるのか否か」を判断するのが難しいという点。
これをテクノロジーを用いてより正確に判定しようというのが、FIFAの「半自動オフサイドテクノロジー」です。2022 FIFAワールドカップの公式球であるアディダスの「アル・リフラ」には、慣性測定ユニットセンサー(IMU)が内蔵されており、人間の審判では判定が難しいようなオフサイドシーンを検出するために必要な重要な情報を提供してくれます。ボールに搭載されたセンサーはボールの位置情報を1秒間に500回ビデオ・オペレーション・ルームに送信します。
そして、スタジアムの屋根の下に取り付けられた12台の専用追跡カメラでは、「ボールの位置情報」と「選手に関する最大29個のデータポイント」を、1秒間に50回追跡します。
カメラが収集する「選手に関する最大29個のデータポイント」は以下のように、選手の四肢がどの位置にあるかを測定します。
「半自動オフサイドテクノロジー」は、ボール内のIMUが収集した「ボールの位置情報」と、スタジアムに設置された専用追跡カメラが収集する「プレイヤーの位置情報および四肢情報」を、人工知能(AI)を使って分析することでオフサイド判定を行います。
ピッチ上の攻撃側がボールを受けるたび、システムはビデオ・オペレーション・ルームのオペレーターに自動でオフサイド判定を送信。ビデオ・オペレーション・ルームのオペレーターは送信されてきたオフサイド判定をピッチ上の主審に伝える前にチェックすることで、システムの判定を人間の目で検証。これによりオフサイド判定を迅速かつ正確に行えるようになるとのこと。
システムのオフサイド判定をオペレーターがチェックし、ピッチ上の主審に送信され、最終的なオフサイド判定が決まったのち、判定がどのようなものであったかを端的に示すための3Dアニメーションが、専用追跡カメラが収集した選手の四肢に関するデータポイントをベースに生成されます。
この3Dアニメーションは、ピッチ上の巨大スクリーンおよびワールドカップの公式放送で流されるとのこと。
なお、FIFAの半自動オフサイドテクノロジーは多くのテストイベントでの運用に成功しており、2021 FIFAアラブカップやFIFAクラブワールドカップ2021といったFIFAの公式トーナメントでも採用されています。
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