睡眠不足が続くと「内臓脂肪が増加してしまう」ことが実験で判明
睡眠不足は精神と身体に大きなダメージを及ぼすことが知られているほか、「睡眠時間を長くすると摂取カロリーや体重が減る」という研究結果も報告されています。新たにアメリカのメイヨー・クリニックの研究チームが行った実験では、「睡眠不足が続くと腹部の内臓脂肪が増加してしまう」ことが判明しました。
Effects of Experimental Sleep Restriction on Energy Intake, Energy Expenditure, and Visceral Obesity - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0735109722003102
Lack of sleep increases unhealthy abdominal fat - Mayo Clinic News Network
https://newsnetwork.mayoclinic.org/discussion/lack-of-sleep-increases-unhealthy-abdominal-fat/
Scientists Reveal Another Consequence of Poor Sleep: More Belly Fat
https://www.sciencealert.com/study-reveals-another-consequence-of-poor-sleep-more-belly-fat
日本では成人の睡眠時間が世界的に見ても短いことがよく指摘されていますが、アメリカでも成人の3分の1以上が十分な睡眠を取れていないことが問題となっています。メイヨー・クリニックの心血管研究者であるNaima Covassin博士が率いる研究チームは、睡眠不足が体の脂肪蓄積にどのような影響を及ぼすのかを実験で確かめました。
研究では健康かつ肥満ではない19~39歳の被験者12人を集め、「4日間の順応期間・14日間の実験期間・3日間の回復期間」からなる計21日間の実験を行いました。この実験では被験者を「1日4時間睡眠の実験群」と「1日9時間睡眠の対照群」に分け、順応期間では2グループともに1日9時間までの睡眠を許可し。その後の実験期間では睡眠をそれぞれ割り当てられた時間に制限し、最後の回復期間ではいずれのグループも9時間まで睡眠を許可しました。また、3カ月の間隔を空けた後、今度は実験群と対照群を入れ替えて再び21日間の実験を行ったとのこと。
研究チームは実験全体を通して被験者のエネルギー摂取量・消費量・体重・体組成・脂肪分布などを追跡したそうで、腹部脂肪についてはCTスキャンも行ったとのこと。その結果、1日4時間睡眠の実験群に割り当てられた被験者は、実験期間における摂取カロリーが順応期間と比較して1日あたり300kcalも増加し、摂取するタンパク質は13%、脂肪は17%増えたことが判明。一方、実験期間中の消費カロリーは順応期間とほぼ同じだったそうです。
また、睡眠時間が4時間に制限された実験群では、9時間睡眠の対照群と比較して腹部脂肪の総面積が9%、腹部内臓脂肪が11%も増加していたことが確認されました。体重の増加は1ポンド(約450g)ほどと控えめだったため、腹部脂肪をCTスキャンで調査しなければ、この悪影響が見逃されていた可能性があるとCovassin博士は指摘しています。
腹部の奥深くにある内臓周囲に蓄積する内臓脂肪は、過去の研究から心臓病や代謝性疾患に関わっていることが知られており、一般的な脂肪よりも危険なタイプの脂肪といえます。メイヨー・クリニックのVirend Somers医師は、「私たちの実験の結果は若く健康で比較的やせた被験者でさえ、睡眠不足がカロリー摂取量の増加、体重のわずかな増加、そして腹部の内臓脂肪の有意な増加と関連していることを示しています」「通常、脂肪は皮下に優先的に蓄積しますが、不十分な睡眠は脂肪をより危険な内臓領域へ移動させるようです」と述べました。
さらに今回の研究では、実験期間が終了して回復期間に入るとカロリー摂取量と体重が減少したものの、内臓脂肪はその間も増え続けていたことがわかっています。つまり、少なくとも短期的には、睡眠時間を十分な長さに戻したからといって内臓脂肪の蓄積が逆転しないことが示唆されています。
Covassin博士は、「体重の測定だけでは、不十分な睡眠が健康に及ぼす影響について、誤った安心感を与えることになります。また、睡眠不足が繰り返されることで内臓脂肪が数年にわたり累積して増加するという、潜在的な影響も懸念されます」と述べました。
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