わざと患者の歯を傷つけて治療費を請求した悪徳歯科医に有罪判決が下る
「わざと患者の健康な歯を傷つけて、欠損部位にクラウンをかぶせる治療を行うことで利益を得ていた」として、アメリカ・ウィスコンシン州の歯科医に医療詐欺と虚偽請求の罪で有罪判決が下されました。
Wisconsin dentist guilty of damaging teeth in insurance fraud scheme
https://www.jsonline.com/story/news/crime/2022/03/11/wisconsin-dentist-guilty-damaging-teeth-insurance-fraud-scheme/7001739001/
Wisconsin dentist Scott Charmoli convicted of health-care fraud for intentionally breaking patients’ teeth - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/nation/2022/03/16/wisconsin-dentist-scott-charmoli-intentionally-breaks-patients-teeth/
Dentist found guilty of damaging patients’ teeth to boost profits | Wisconsin | The Guardian
https://www.theguardian.com/us-news/2022/mar/16/wisconsin-dentist-guilty-damaging-patients-teeth-boost-profits
検察によると、ウィスコンシン州のジャクソン郡で「ジャクソンファミリー歯科医院」を経営していたScott Charmoliという61歳の元歯科医は、わざと患者の歯を傷つけてから治療することで不当に治療費を請求していたとのこと。Charmoliはこの手法を使い、2014年に434件のクラウン治療を行って140万ドル(約1億6700万円)、2015年には1000件以上のクラウン治療を行って250万ドル(約3億円)を稼いだそうです。
Charmoliの手口は、最初に健康な患者の歯をX線で撮影し、その写真を患者に見せながら適当な線を「歯のひび割れ」などと偽って説明して、クラウンをかぶせる治療を勧めるというもの。患者の承諾を得たら「治療」を始め、このタイミングでわざと患者の歯を傷つけて再びX線撮影を行い、保険会社にはこの際の写真を「治療前の写真」と偽って提出していたそうです。一般的にクラウンをかぶせる治療は保険が一部しか適用されないため、患者は多額の治療費を自己負担する必要がありました。
2016年~2019年の間にCharmoliがクラウン治療で稼いだ金額は420万ドル(約5億円)に上り、2020年末までに680万ドル(約8億円)以上の資産を所有し、ウィスコンシン州とアリゾナ州に別荘を持っていました。ウィスコンシン州の保険会社幹部によると、ウィスコンシン州の平均的な医師が行うクラウン治療の件数は患者100人あたり6件未満なのに対し、Charmoliがクラウン治療を行う割合は100人あたり32件を超えていたとのこと。
検察官のJulie Stewart氏は、Charmoliが意図的に歯を傷つけて治療費を請求した患者の中には、社会的に脆弱な状態にあった人々も含まれていると主張。「これらの患者の中には虐待を受けている人、最近未亡人になった人、がんの生存者、その日暮らしの人など非常に弱い立場の人々が含まれており、人々はCharmoliが請求した不要な治療の自己負担金を支払うために、給料を削って生活していました」と述べています。
実際に被害を受けたTodd Tedeschi氏は、受診した際は自分の歯が健康だと考えていたものの、Charmoliに説得されて2カ所のクラウン治療を受けたとのこと。「これは過剰な治療に見えましたが、私にはそれ以上わかりませんでした。彼はプロフェッショナルだったので、私はただ信頼していたのです」と証言しました。
また、Charmoliの下で歯科助手を務めていたBaily Bayer氏によると、ジャクソンファミリー歯科医院が広い建物に移転したことをきっかけに治療が増加したとのこと。Bayer氏は、マーケティングの専門家がCharmoliに「より多くの治療費を患者から受け取るように」とアドバイスしたと証言しており、収益を追い求める方針に転換したことを不快に思って歯科医院をやめたそうです。Bayer氏は裁判の中で、「(歯科医院は)競って売り込むべきではありません。患者にとってそれが必要か、必要ではないかのどちらかです」と述べています。
Charmoliの悪事が発覚したのは、経営していたジャクソンファミリー歯科医院を2019年に売却したことがきっかけでした。歯科医院を購入した新オーナーのPako Major氏が引き継がれた診療ファイルを確認したところ、異様にクラウン治療の数が多いことに気がついて当局に告発したそうです。「患者の健康と安全は医師としての最大の関心事です。医療従事者として、私たちは患者に『害を与えない』という誓いを立てています。だからこそ、疑わしいと思われる行動を告発する倫理的な義務を感じていたのです」と、Major氏は公式ウェブサイトの声明で述べています。
法執行機関が告発に基づいて調査を進めた結果、Charmoliは2020年12月に医療詐欺や虚偽請求の罪で起訴され、2021年2月には歯科医師免許が停止されました。そして2022年3月10日、Charmoliには合計7件の罪で有罪判決が下されました。刑罰などを含めた最終的な判決は、2022年6月に言い渡される予定だとのことです。
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