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Pornhubの元モデレーターが「ポルノサイトの実態と失敗」について語る


世界最大のポルノサイトPornhubは、2020年12月に児童の性的虐待コンテンツ疑惑でカード決済を停止され、それに伴い1000万本以上のムービーを削除したり、2021年2月にはオンライン本人確認システムを導入したりと、性的コンテンツの扱いについて規制やルールを強めています。そのようなPornhubを初めとしたポルノサイトの動きについて、Pornhubなど多数のポルノサイトを運営するMindGeekの創業当初にコンテンツを監視・削除するモデレーターを務めたネイサン・マン氏が語っています。

Behind Pornhub’s decade-old moderation problems
https://www.theverge.com/c/22925906/pornhub-mindgeek-content-moderation

マン氏は2010年の夏に、古い友人のつてで「ポルノ会社がカスタマー・サポーターを募集している」と耳にしました。MindGeekは当時「Manwin Canada」という名前で運営されており、就業するまでマン氏はサービス内容を知らなかったそうです。最初はバイトの応募として履歴書を送ったものの、友人の同人冊子の編集経験があるというマン氏の経歴に興味を持ったManwinの女性から、「メディア・バイヤー」という役職を勧められたとマン氏は話します。


マン氏の最初の仕事は、会社が作っているポルノ以外のウェブサイトに掲載するためのコメディビデオを買うことでした。数週間後にサイトがオープンして仕事は終了しましたが、マン氏は継続して、無料でポルノをアップロードして鑑賞できるサイトのTwitterアカウントを運営することになります。そこでは、下品なジョークを連発して多くの人に受け入れられたため、幸先の良いスタートとマン氏は感じていたそうです。

Twitterの他にマン氏が任されていたのが、ユーザーからのメールに答えたり、動画の削除依頼に対応したりする仕事でした。これはどちらも経営陣からは「厄介ごと」だと思われていた内容でした。動画の削除要請があった場合、マン氏はその動画の一部を見て、実際に利用規約(未成年の出演者、深刻な暴力、目に見えるアルコール、動物の禁止など)に違反していることを確認してから削除しなければならないという仕事内容でしたが、マン氏は不穏なコンテンツや違法なコンテンツを見ることを嫌い、依頼があったビデオは内容を問わず削除することにしたとのこと。

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by Solen Feyissa

数カ月後、マン氏がとにかく削除していたビデオの中には何百万回も再生されたものもあったことから、上司はマン氏の仕事ぶりをひどく叱ったそうです。そこからはもっと注意深く動画を見るようになり、削除を求めるメールが何10通も届いた場合でも、上司からは「規約に違反していないから削除はできない」と言いつけられました。モデレーターの仕事に不安を覚え始めたのは、この時だったとマン氏は話します。

マン氏が削除依頼を受けてチェックしたものは、浮かれてセックスビデオをアップロードしたものの時間がたって後悔したカップルや、ユーザーから不快な動画だと苦情があったものなど多様でしたが、マン氏は自らの良心に従って削除対応や放置を選択しました。ただ、ひとつマン氏が気になったビデオとして語るのは、「水商売の女性が雇い主の男性とセックスしている」ように見られたもので、高圧的な男性の態度が合意の上の関係なのか、それとも搾取する側と被害者の不適切な関係なのか、あるいはカップルのロールプレイングなのか、ビデオの良しあしが判断できなかったとのこと。最終的にマン氏は自分の印象に従いビデオを削除し、これによって「実は毎日、自分は個人的な判断を下しており、自分が適切と思うことに基づいて判断しなければ、この仕事をすることはできないのだと気づきました」と述べています。

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Manwinという会社について、マン氏は「Manwinはかなり多様性に富んでおり、上級管理職には女性が就き、会社のあらゆるレベルに有色人種がいました」と多様性を認めつつも、「しかし、上層部はほぼ全員が男性で、権力と富、そしてにやにやした誇りを感じさせる集団でした」と嫌な印象についても話しています。Manwinは投資家からの支援も受け、複数のポルノサイトを買収し、どんどん大規模なマーケティングを展開していきます。

事業を広げることで顕在化したManwinのひとつ目の問題として、「ポルノを実際に制作して有料で販売する旧来の企業と、ユーザーがアップロードした無料ポルノ(その多くは海賊版)をインターネット上にあふれさせているサイトとの社内での派閥対立」が浮上していました。Manwinはその両陣営で力を持つことで前例のないビジネスモデルを作り上げていましたが、そこでのバランスが崩れていったそうです。マン氏がコンタクトを取ったかつての同僚のレオン氏(仮名)によると、無料ポルノのサイトのユーザー数が成長するにつれ、経営の優先順位もそちらに傾いてレオン氏が管理していた有料サイトは重要性を失っていったとのこと。レオン氏は、2013年にManwinがMindGeekへと名前を移行しているころ、有料サイトのマネージャーを務めていました。

そのような流れの中で、無料サイトの代表であるPornhubがどんどん成長していくのに対して、アップロードされるビデオの内容を確認するモデレーションはますます困難になっていきます。ユーザーはセキュリティを回避して好きなものをアップロードする方法を見つけるものの、経営陣はPornhubの成長への対応で手一杯でセキュリティ対策まで手が回らなかったとレオン氏は考えているそうです。


また、Pornhubが大きく成長するにつれて、「サイト内で海賊版が蔓延している」という悪評も高まっていきました。しかし社内での経営陣の目は経営上の飛躍的な成長に向いており、マン氏は豊かになる会社の環境に反比例するように、不穏なコンテンツに延々とさらされ、休みが欲しくて病欠し、仕事から離れるようになっていたとのこと。2012年6月にはついに解雇され、マン氏はその時の気分を「有頂天になった」と語ります。

その後大きな転換があったのは2020年11月、カナダのアルバータ州の20人の国会議員が、MindGeekが違法コンテンツを提供しているとして調査を要求する手紙を法務大臣に出しました。その翌月にはニューヨーク・タイムズ紙が、「The Children of Pornhub」と題した暴露記事を掲載し、「複数の若い女性が未成年時のポルノ動画をサイトに掲載された後、薬物中毒、自傷行為、自殺未遂など、悲惨な個人被害を受けている」ことを記述しました。その後、VisaとMastercardはMindGeekのネットワークに対するすべての支払い処理を停止し、MindGeekは資金源を失うことになります。

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MindGeekはすぐに、ユーザーがアップロードした約1000万本のビデオをPornhubから削除し、認証されていないユーザーによるコンテンツのアップロードを阻止するための新しいポリシーを制定しました。しかしマン氏はこれを、「知らず知らずのうちにポルノ出演者となり、人生を狂わされた人々にとっては、あまりにも小さく、あまりにも遅い措置であるに違いない」と批判的に捉えています。

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マン氏がManwinで仕事をしていたころ、上司に「明らかに違法と思われるコンテンツは間違いなく削除してほしい」と指示されていました。しかしながら、匿名の動画サイトのコンテンツ・モデレーターとしてユーザーがアップロードしたセックスビデオを監視するという難しさをマン氏は語ります。画面に映る出演者が法定年齢か、18歳の誕生日を数か月過ぎているか、数杯飲んでいるか、カメラが回り始める前に圧力をかけられたかを見分けることは、実質的に不可能とのこと。

マン氏がMindGeekに問い合わせたところ、広報担当者は「当時は、すべてのコンテンツを人間のモデレーターが審査していました。その後のすべてのチューブサイトにもこれが適用されています」と回答したそうです。一方でマン氏は、毎日何百、何千ものビデオがアップロードされる中で誰かが目視で審査しているという認識はなく、だとしたらなぜ違法なコンテンツや海賊版が掲載されているのか?と問いかけています。

2020年12月にPornhubのモデレーターが発言した内容によると、モデレーターはサイト上の何千ものビデオのリストを手渡され、レビューし、正当な理由があれば削除するように指示されているとのこと。これはつまり、いったんビデオが提供された後、少なくともしばらくの間はどんな種類の動画でもサイト上に存在できるようになっているということであるとマン氏は指摘します。


マン氏によると、Pornhubの最大の失敗は「ユーザーがビデオをダウンロードすることを許可していたこと」だと言います。この機能により、何度削除されても、誰でも何度でもサイトにビデオを再アップロードすることができたのであり、本質的にオンラインで永遠に生き続けることができるようになってしまったとのこと。ポルノ・プラットフォームについて研究するトロント大学の研究者マギー・マクドナルド氏は、「Pornhubから1000万本の未確認ビデオを削除し、アップロードの管理を改善するというMindGeekの決定は、本質的に支払い処理業者のためのショーでした」と批判的に捉え、「MindGeekは長い間、ユーザーの安全よりも利益を選んだのです」と結論付けています。

マン氏は最後に、「今思えば、私のコンテンツ・モデレーションの役割は、違法ポルノの被害者ではなく、主に会社を守ることだったような気がします」と考えをあらわにしています。「私があの2年間で助けようとした女性たちは、画面の向こう側で尊厳を取り戻すための味方を得ることができたのだと思いたいのです。しかし、ビデオのチェックの合間に会社の宣伝のためにツイートしていたにもかかわらず、自分は善人だと思い込もうとしていたのかもしれません」とマン氏は述べています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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