Activision Blizzard買収・メタバースの展望・ゲームの未来などについてMicrosoftのサティア・ナデラCEOのインタビューが公開中
by Fortune Brainstorm TECH
2022年1月19日に大手ゲームメーカー・Activision Blizzardの買収を発表したことで、Microsoftはテンセントとソニーに次ぐ世界第3位のゲーム企業の地位に躍り出ることになります。そんなMicrosoftを率いるサティア・ナデラCEOに、メタバースやゲームの今後、さらにはActivision Blizzard買収によりMicrosoftが直面する規制問題などについて尋ねたインタビューを、イギリスの経済誌・Financial Timesが公開しています。
Satya Nadella: ‘Being great at game building gives us permission to build the next internet’ | Financial Times
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ナデラ氏が2014年にMicrosoftのCEOに就任した時、社内にはゲーム事業を捨ててクラウドコンピューティング事業にリソースを集中させ、Amazonなどのライバルに対抗すべきだという声が上がっていたとのこと。しかし、ナデラ氏がCEOとして最初に手を付けたのは、箱庭ゲーム「マインクラフト」の買収でした。Microsoftに買収された後もマインクラフトは成長を続け、2019年には累計販売本数が1億7600万本を突破し「世界で最も売れたゲーム」となっています。
◆Activision Blizzard買収について
ゲーム事業重視の姿勢を鮮明に打ち出しているナデラ氏に対し、Financial Timesは「Microsoftがクラウド企業に移行しつつある中、Microsoftが大手ゲーム会社を買収したことについて、人々はいったいどういうことなのか疑問に思っているのではないでしょうか」と切り出しました。
これに対しナデラ氏は「今や、MicrosoftのGame PassやxCloudがゲームの未来となっていますが、その中で私が最も気に入っているのは、『クラウドで動くゲームをストリーミングでプレイできる』という点です。ですから、私にとってクラウドとゲームは、どちらかが副次的なものというわけではなくより統合されたものです」と答えました。
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一方、MicrosoftがActivision Blizzardを吸収したことについては、連邦取引委員会が審査に乗り出すことを公表しているなど、市場競争の観点から厳しい視線が注がれています。この点を念頭に、Financial Timesは「Activision Blizzardの買収は、Microsoftが大企業だということを改めて私たちに意識させました。それでは、私たちが警戒している他のテクノロジー企業とMicrosoftは同じではないということを、私たちに納得させるための一手をお考えでしょうか?」と尋ねました。
ナデラ氏は、同社のゲーム業界での規模について「私たちは、今回の買収後でさえ10%台前半のシェアです。また、トッププレーヤーでさえシェア率は10%台にとどまっています。これが意味するのは、コンテンツ制作プラットフォームがいかに細分化されているかということです。私たちは、この細分化された場所で大きな存在となりました」
「また、なぜコンテンツ企業が大きくなろうとしているのかも考える必要があります。その答えは、流通がボトルネックになっているという点にあります。ゲームコンテンツにとって唯一のオープンなプラットフォームはWindowsであり、Windowsで最大のストアは私たちが運営していないSteamです。こうした環境を踏まえ、私はたとえシェアが低くても大きくなることで、多くの中小企業がxCloudなどを通じて販路を広げられるようにしたいと思っています」と答えました。
さらに、規制に直面している点については「規制の枠組みは、前向きかつ後ろ向きに考える必要があります。私たちは、すでにオープンウェブやオープンストアに近いものを運営していると言っていいでしょう。つまり、私が念頭に置いているのは、すべての参加者に平等な交通ルールを提供するということです。それが法律や規制などどのような形になるのであれ、私たちはオープンかつ積極的に関与していくつもりです」とコメントしました。
◆メタバースの今後
Financial Timesの次の質問は、ゲームが人々の生活にどのように関わってくるかというものです。これに対し、ナデラ氏はメタバースに言及した上で、「こうしたインタビューも、近い将来アバターやホログラムで作られた会議室で行われるようになるでしょう。そして、それと同様のことをずっとやってきたものはなんでしょうか?それがゲームです」と回答しました。
また、メタバースの展望については「今のところ、私たちはゲームをプレイしているのであってゲームの中にいるのではありません。しかし、今後はメタバースの会議室でミーティングをするように、文字通りゲームの中に入れるメタバースが日常生活のさまざまな場所で見られるようになるはずです。メタバースはまた、ビジネスの場面にも現れてきます。例えば小売業や建設業の分野だと、工場をどのように運営していくかをメタバースで視覚的にシミュレートするようになります。これは、はたから見るとゲームのようにも見えるかもしれませんが、実際には工場の機能の再現なのです」と話しました。
ナデラ氏は、こうしたプラットフォームを「本質的に次のインターネットと言える『具現化された存在(embodied presence)』」と形容しています。
ナデラ氏によると、Microsoftはメタバースを通じてビジネスや会議、ゲームを同じプラットフォームで行えるアプリケーションの開発に着手しているとのこと。これを聞いたFinancial Timesは難色を示しましたが、ナデラ氏は「私が技術畑の人と話をすると、必ずと言っていいほどゼロからものごとを考え直さないといけないと返ってきますが、実際には単なる進化に過ぎません。つまり、いきなり現実の仕事場を捨てなければならない、というわけではないのです。今回のパンデミックで、私たちはデジタルでつながりつつチームを組み、ともに働きながらスキルを向上できるということを学ぶことができました」と述べて、メタバースは現実の職場に置き換わるのではなく働き方を拡張するものであるとの見方を示しました。
◆メタバースとインターネットの未来について
メタバースについて語るナデラ氏に、Financial Timesは「メタバースがインターネットのようになるというお話がありました。つまり、各メタバースが孤立しているのではなく地続きのプラットフォームになると。しかし、どうしてそうなると言い切れるのでしょうか?メタバースは今のところ、Microsoftが作るゲームのようにスタンドアロンのものにとどまっています」と切り返しました。
これに対し、ナデラ氏は「ある意味では、インターネットも未完成と言えます。あるウェブサイトから別のウェブサイトへ移動すると、アイデンティティを持ち越せないからです。従って、私はウェブサイトからウェブサイトへ、ゲームからゲームへと、誰かの仲介なしに移動できるという基本に立ち返らせようと思っています」と述べました。
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また、その具体的な方法については「私たちがまず目指しているのは、『アイデンティティのシンジケーション』とでも呼ぶべき物を実現することです。これは、組織であれ個人であれ、ユーザーとして自分のアイデンティティをさまざまな方法で使えるようにするにはどうすればいいのかという問題です。その答えは、一度のユーザー認証で複数のサービスを利用できるシングルサインオンに近いものです。私たちは、この仕組みの共有の幅を広げたいと考えており、Windows Storeがその出発点となるでしょう。そこでは、さまざまな支払い手段が使えるだけでなく、複数のストアからの買い物も柔軟にできます。これは、複数のアイデンティティと複数のストアをつなげる方法の見本と言えます」と話しました。
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