サイエンス

トンガの火山噴火はなぜ激烈なのか、今後の大噴火の予兆なのかについて火山学者が解説


2022年1月15日にトンガで発生した火山噴火の衝撃は、文字通り地球の半分を駆け巡り、ポリネシアから遠く離れた日本でも太平洋沿岸など広い地域に津波警報や津波注意報が発令されるなど大きな影響が出ました。この火山の噴火の規模がこれほど甚大な理由や今後予測される事態について、火山の専門家が解説しています。

Why the volcanic eruption in Tonga was so violent, and what to expect next
https://theconversation.com/why-the-volcanic-eruption-in-tonga-was-so-violent-and-what-to-expect-next-175035

今回噴火したフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山は、トンガ王国の首都・ヌクアロファの北65kmにあるフンガ・トンガ島とフンガ・ハアパイ島の間にある海底火山です。海抜は約100mに過ぎませんが、海底からの高さは約1.8km、幅は約20kmもある巨大火山なので、今回の噴火では宇宙に浮かぶ気象衛星からも衝撃波が大きく広がり付近の気圧が一時的に急上昇した様子が克明に記録されました。

High-resolution Himawari satellite imagery of the #HungaTongaHungaHaapai volcanic eruption in Tonga ????

Our climate stations recorded a brief spike in air pressure as the atmospheric shock wave pulsed across New Zealand. pic.twitter.com/BfLzdq6i57

— NIWA Weather (@NiwaWeather)


ニュージーランドにあるオークランド大学で地球科学を教えている火山学者のシェーン・クロニン教授によると、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山は定期的に噴火を繰り返す火山で、これまでにも2009年と2014年から2015年にかけての2回大きく噴火しているとのこと。しかし、今回の噴火の規模は前回と前々回をはるかにしのぐ大きさです。


海底火山の場合、マグマが地下から上昇しても海水で冷やされるので、それほど大きな爆発は起きないように思えます。実際、マグマが海水中にゆっくりと放出されるケースでは、マグマと水の間に水蒸気の膜ができて断熱材の役割を果たすので、1200度もあるマグマでもゆっくりと冷えていくとのこと。

しかし、火山ガスが充満した地中からマグマが勢いよく噴き出すと水蒸気の膜がすぐに破壊されるので、高温のマグマと水が直接触れて水蒸気爆発が発生し、その衝撃でマグマの表面が砕かれて高温のマグマがさらに水中に放たれます。火山研究者が「燃料・冷却材相互作用」と呼ぶこの現象により爆発が連鎖的に起きた結果、最終的にはまるで大型の爆弾のような大爆発と超音速の爆風が発生することになります。

2014年から2015年にかけて発生した前回の噴火では、新しく発生した火口と古い島が合体して1つの島になり、海底には大きなカルデラができました。

by Shane Cronin

カルデラは、大規模な噴火でマグマが火口の内側に崩れ落ちてできるクレーター状の盆地で、その後縁で小規模な噴火が起きることがありますが、カルデラ自体が再び大噴火することもあります。そして、クロニン教授が2016年に現地を訪れて海底の堆積物の年代測定を行った結果、トンガの火山は約1000年単位で大噴火を繰り返しており、最後の噴火は1100年ごろだったことが分かりました。つまり、2009年と2014年に起きた小さな噴火は大噴火の前兆に過ぎず、今回こそが1000年に1度の大噴火となる可能性があります。

クロニン教授は、今回の噴火が高さ20km、直径260kmもの噴煙を発生させたことに注目しています。なぜなら、これは眠っていたカルデラが再び目覚めて大量の火山ガスとマグマを噴出させたおそれがあることを意味しているからです。また、今回の噴火ではトンガやフィジー、サモアなど各地で波や潮位変化が観測されていますが、これもカルデラの崩壊や海底地滑りによるものの可能性があるとのこと。

こうした知見からクロニン教授は、「今回の噴火がクライマックスかは分かりません。マグマの圧力が大きく解放されたのは間違いないので、これで火山が落ち着く場合もあります。しかし、過去の噴火の歴史は1000年に一度のカルデラ大噴火が多くの爆発的な噴火を繰り返し発生させていたことを私たちに警告しています。従って、今回の噴火により今後数週間から数年にわたる火山の不安定期(volcanic unrest)が訪れることも考えられます。トンガの人々のことを思うと、私はそうならないことを望みます」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
6000年ぶりに噴火したアイスランドの火山に迫るドローン空撮&タイムラプス映像 - GIGAZINE

火山の噴火を人工的に模倣して地球温暖化を食い止める「成層圏エアロゾル注入」とは? - GIGAZINE

火山に突入して故障したドローンによるマグマの空撮ムービーが公開中 - GIGAZINE

古代の人類が噴火した直後の火山を見に行っていた可能性があると「35万年前の足跡の化石」から判明 - GIGAZINE

火山の噴火口にドローンで落として設置する装置「竜の卵」とは何か? - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1l_ks

You can read the machine translated English article here.