古代の人類が噴火した直後の火山を見に行っていた可能性があると「35万年前の足跡の化石」から判明
by edmondo gnerre
イタリア・カンパニア州の北部にあるロッカモンフィーナ火山の付近には、「Ciampate del Diavolo(悪魔の足跡)」と呼ばれる火砕流の堆積層に残った足跡の化石が存在しています。この足跡を詳細に分析した結果、「一部の足跡は噴火した火山から逃げているのではなく、むしろ噴火した直後の山頂に向かっている」ことがわかりました。
On the devil's tracks: unexpected news from the Foresta ichnosite (Roccamonfina volcano, central Italy) - Panarello - - Journal of Quaternary Science - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/jqs.3186
Mysterious Footprints Indicate Neanderthals Climbed a Volcano Right After It Erupted
https://www.sciencealert.com/hundreds-of-thousands-of-years-ago-neanderthals-left-their-footprints-on-an-active-volcano
ロッカモンフィーナ火山はおよそ65万年前~5万年前に活動していたとされる火山であり、記事作成時点では死火山に分類されています。このロッカモンフィーナ火山が噴火した際、火砕流の堆積層に残された足跡が「悪魔の足跡」です。
21世紀に入ってから、悪魔の足跡が人類の一種によって付けられたものだと確認され、研究者らは悪魔の足跡についての調査を行ってきました。岩石層の年代測定によって悪魔の足跡は約35万年前に作られたことが確認されており、アフリカを除くとイギリスのヘイズブラ足跡に次ぐ古い人類の足跡化石だとのこと。
by edmondo gnerre
イタリアの研究チームによると、近年の調査によって発見された足跡の総数は81個にまで増加しており、足跡がある場所は大まかに3つの地点に分けられるそうです。これらの足跡を分析したところ、足跡は少なくとも5人の個体によって付けられており、そのうち1人は成人の男性である可能性が高いとのこと。
また、どの足跡も1秒あたり1メートルほどの速度で残されたもので、急いでいたわけではなく、「噴火によって慌てて山を駆け下りた」というシナリオには合致しません。さらに、いくつかの足跡は「山頂に向かって登っている」ことも判明したとのことで、「古代の人類が噴火の後に火口の様子を見に山を登った」可能性があると研究チームは指摘。古代の人類が山を登ったのは、噴火から数時間が経過して火砕流の堆積層が摂氏50度ほどに冷やされたころだと推定されています。
科学系メディアのScience Alertは、「私たちはしばしば有害ガスの雲や灰を噴出する山の近くに住むコミュニティを想像できます」「災害ツーリズム(ダークツーリズム)は最近始まったわけではないかもしれません」と述べました。
by Lifeonwhite
また、記事作成時点で見つかっている最も古い現生人類の化石が31万5000年前のものであることを考えると、35万年前の噴火で残された悪魔の足跡は現生人類以外の人類によって付けられたことになります。研究チームによると、悪魔の足跡に記録された足の形状は、スペイン北部にあるシマ・デ・ロス・ウエソス遺跡から発見された43万年前の個体と似ているとのこと。
このシマ・デ・ロス・ウエソス遺跡から発見された個体の種については、ホモ・ハイデルベルゲンシス、デニソワ人、ネアンデルタール人などさまざまな説が提唱されています。研究チームのAdolfo Panarello氏は、「特定の種への帰属を保留することにしました」と述べ、足跡の主がどの種類の人類かについて明言しませんでした。
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