サイエンス

近視の増加は「スクリーンを見る時間」よりも屋内での目の使い方が原因かもしれないとする仮説が登場


近視の増加はスマートフォンやPCの画面を見る時間の増加と結び付けて語られることが多いものの、アメリカ・ニューヨーク州立大学(SUNY)の視能学専門校であるSUNY College of Optometryの研究チームは、原因が「画面そのもの」ではなく、屋内で近くを見続ける際の目の使い方にあるとする新たな仮説を示しました。

Human accommodative visuomotor function is driven by contrast through ON and OFF pathways and is enhanced in myopia - Cell Reports
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(26)00016-1

New Research Suggests Myopia Could Be Caused By How We Use Our Eyes Indoors - SUNY College of Optometry
https://www.sunyopt.edu/new-research-suggests-myopia-could-be-caused-by-how-we-use-our-eyes-indoors/

Myopia Is Surging, And One Common Habit Could Be Driving It : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/myopia-is-surging-and-one-common-habit-could-be-driving-it


近視は遠くが見えにくくなる視覚の異常で、眼球の長さなどの変化によって目に入った光のピントが網膜より手前で合ってしまうことで起こります。遺伝の影響が大きい一方で、ここ数世代で急増していることから環境要因も重要だと考えられてきました。SUNY College of Optometryはアメリカとヨーロッパの若年成人で約半数、東アジアの一部では約9割が近視だと説明しています。

SUNY College of Optometryに所属するウルシャ・マハルジャン氏らの研究チームは、人間の目が近くを見るときに同時に行っている複数の反応に注目しました。具体的にはピントを合わせる動き、両目を内側に寄せる動き(輻輳眼球運動)、瞳孔の開き具合の調整です。


研究チームは、近視のある人はこうした反応が強く出る傾向があり、特に瞳孔が過剰に縮みやすい変化がみられたと報告しています。こうした変化が網膜の情報処理の働きの低下と関係している可能性があるとのことです。

科学系メディアであるScience Alertによると研究チームが行った実験には34人が参加し、内訳は近視のある人が21人、近視ではない人(正視)が13人でした。参加者には明るさやコントラストの異なる四角形の標的を見てもらい、片目ずつ近くにピントを合わせる課題を繰り返してもらった上で、目の動きや瞳孔の反応を測定したとのこと。

Science Alertは、今回の実験では明るさよりもコントラストの違いの方が、眼の内寄せや瞳孔収縮に強く影響した点が重要だと伝えています。また、近視のある人では、ピントを合わせる前の段階から目がやや内側に寄る傾向もみられたとのことです。

以下の画像は実験中に撮影した眼の様子を示したもので、左は標的を見ている注視眼(Fixating eye)、右は視覚情報が入らないようにふさいだ目(Occluded eye)で、上段が通常のピント合わせ条件(Focus)、下段が-5Dのピント負荷をかけた条件です。注視眼では-5D条件で瞳孔が小さくなっており、近くを見る際の瞳孔収縮の様子が分かります。


研究チームは実験の結果から、スマートフォン・タブレット・本のように近くの対象を屋内で見続けると、明るさではなく鮮明さを確保するために瞳孔が縮み、その結果として暗めの環境では網膜に届く光が不足しやすくなる可能性があるとする仮説を示しています。Science Alertはこの仕組みを「明るさよりもピント合わせが優先されることで、過剰補正が起きて悪化につながるループ」として説明しています。

この仮説が正しい場合、これまで別々に説明されることが多かった近視に関する現象を一つの説明でまとめられるかもしれないと研究チームは述べています。例えば屋外での活動が近視の予防に役立ちやすいこと、アトロピン点眼や多焦点レンズなどの治療が進行抑制に寄与しうること、近くを見る作業と暗い室内環境の組み合わせが問題になりやすいことなどです。

一方で「これはあくまで検証可能な仮説であり最終結論ではない」と研究チームは強調しています。Science Alertはこの研究の限界として「サンプル数が少ないこと」「視力の変化を長期追跡していないこと」「屋内条件と屋外条件を直接比較していないこと」などを挙げています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「視力回復トレーニング」に意味はあるのか? - GIGAZINE

新型コロナのパンデミックにより「近視の子ども」が急速に増加 - GIGAZINE

毎日の使用で近視を改善するHONORのAIデフォーカス技術がHONOR MagicPad 2タブレットとHONOR Magic V3折りたたみ式スマホで利用可能に - GIGAZINE

多くの人が悩まされている「近視(近眼)」を予防できる薬が登場か、原因遺伝子を特定 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1b_ok

You can read the machine translated English article A new hypothesis suggests that the rise ….