生き物

南極の棚氷の下には少なくとも6000年前から生命のオアシスがあった


イギリス南極観測隊(BAS)やアルフレッド・ウェゲナー研究所極地海洋研究所(AWI)の研究チームによる調査により、南極の棚氷の下に、予想されていたよりも多くの海洋生物が生息していることがわかりました。

Richness, growth, and persistence of life under an Antarctic ice shelf: Current Biology
https://doi.org/10.1016/j.cub.2021.11.015


Abundance of life discovered beneath an Antarctic ice shelf - British Antarctic Survey
https://www.bas.ac.uk/media-post/abundance-of-life-discovered-beneath-an-antarctic-ice-shelf/

Scientists find unexpected trove of life forms beneath Antarctic ice shelf - The Verge
https://www.theverge.com/2021/12/29/22857125/discovery-antarctic-ice-biolife-ice-shelf

南極の棚氷は160万平方キロメートルという巨大な面積があって、その下には完全な暗闇が広がっており、地球上で最も知られていない表層の生息域であるともいわれます。


2021年2月には、BASにより南極・ウェッデル海南部のフィルヒナー棚氷の下から、未知の生物が見つかりました。

南極の厚さ900mの氷の下で未知の生物が発見される - GIGAZINE


2021年12月20日刊行の科学誌・Current Biologyに掲載された論文は、AWIが2018年にウェッデル海南東部・エクストロム棚氷の海底から採取した生物種に関するもの。

標本採取地点は外海から数km離れていたものの、コケムシやカンザシゴカイなど77種類の生物が見つかっており、標本は光と食料のある外洋の大陸棚よりも生物多様性が豊かだったそうです。

実際に採取された標本の一部、コケムシの断片。

by David Barnes

標本の顕微鏡調査では、4つの種において、外洋の大陸棚に生息する類似種と同等の成長を遂げていることがわかっています。

見つかった生物の多くは植物性プランクトンである微細藻類を食料としていますが、棚氷の下に広がる暗黒の海底には植物や藻類は生息できないと考えられることから、研究チームは「外洋から十分な藻類が運ばれていなければならない」と結論づけています。

このほか、見つかった標本の死骸の放射性炭素年代測定により、年代が現代から5800年前まで幅広いこともわかりました。これは、棚氷の下に少なくとも6000年近くにわたって、生命のオアシスが存在したことを示唆するものです。

なお、棚氷は気候変動の影響で崩壊が進んでおり、棚氷の下の生態系を保護して研究する時間が足りないということも指摘されています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logc_nt

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