生き物

コウテイペンギンの個体数が99%減少する可能性があるとして絶滅危惧種に指定へ、気候変動の影響で


世界の気候変動は国連事務総長が「人類にとって赤信号」と発言するほどに進行しています。そんな気候変動の影響で南極の氷が溶けることにより、コウテイペンギンが絶滅の危機にひんしていることが報告され、絶滅危惧種に指定する動きが起きています。

The call of the emperor penguin: Legal responses to species threatened by climate change - Jenouvrier - - Global Change Biology - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/gcb.15806

98% of emperor penguin colonies could be extinct by 2100 as ice melts – can Endangered Species Act protection save them?
https://theconversation.com/98-of-emperor-penguin-colonies-could-be-extinct-by-2100-as-ice-melts-can-endangered-species-act-protection-save-them-165468

コウテイペンギンは、南極の海岸線と海上にまたがって存在する棚氷の上で、大規模な群れを形成して暮らしています。この棚氷は広すぎると海でエサを確保することが困難になり、狭すぎるとヒナが海に溺れる可能性が高くなるため、コウテイペンギンは絶妙なバランスの大きさの棚氷の上に群れを形成しています。研究チームは、気候変動によって棚氷の面積が減少しており、コウテイペンギンが暮らすのに必要な棚氷が失われて種全体が危険にさらされていると警告しています。

南極の研究者たちは、1960年代からPointe Géologieと呼ばれる地域で暮らすペンギンの群れを追跡調査してきました。この調査によってPointe Géologieで暮らすペンギンの個体数は、1970年代の棚氷の急激な面積縮小と共に減少したことが明らかになっています。その後、2020年に至るまで個体数が大きく回復することはなく、今後は気候変動の影響でさらに個体数が減少すると予測されています。


他にも、2016年に大規模な棚氷の崩壊が発生したハレーベイと呼ばれる地域では、その地域に存在していた南極で2番目に大きいコウテイペンギンの群れで、1万羽以上のヒナが死亡する事態が発生しました。この群れの個体数は記事作成時点でも回復に至っていないとのこと。

研究チームは上記の現状を踏まえて、南極各地のペンギンの群れが棚氷の面積減少によって受ける影響を調査しました。以下の画像は、南極の気温が2100年までに1.5度・2.6度・4.3度上昇した場合に、コウテイペンギンの群れ(黒・緑・黄色・赤のドット)の個体数がどれだけ減少するかを示したもの。画像を確認すると南極の気温が4.3度上昇した場合、棚氷の大部分が崩壊し、ほとんどの群れで個体数が90%以上減少すると予測されていることが分かります。


研究チームによると、気候変動が現状のまま続いた場合、コウテイペンギンの群れの98%が2100年までに消失し、コウテイペンギン全体の個体数は99%減少すると予測されるとのこと。この研究結果を踏まえて、アメリカ合衆国魚類野生生物局はコウテイペンギンを絶滅危惧種に指定することを提案しました。


今回の研究では、2100年までに気温の上昇が1.5度までに抑えられた場合、コウテイペンギンの個体数減少を食い止められる可能性も示されています。しかし、研究チームの一員であるステファニー・ジェノブリエ氏は、世界の気候変動対策はパリ協定で示された「気温上昇を1.5度未満に抑える」という目標を満たせるほどには進んでいないと指摘し、さらなる気候変動対策の実施を求めています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1o_hf

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