サイエンス

すべてのサンゴはあと1.5度の地球温暖化で深刻な白化現象に見舞われる


地球温暖化にとっての最初の被害者であるとされているサンゴは、海水があと1.5度温かくなるだけで、深刻な白化現象に見舞われることとなると新しい研究が指摘しています。

Future loss of local-scale thermal refugia in coral reef ecosystems
https://journals.plos.org/climate/article?id=10.1371/journal.pclm.0000004

All coral will suffer severe bleaching when global heating hits 1.5C, study finds | Climate crisis | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2022/feb/01/all-coral-will-suffer-severe-bleaching-when-global-heating-hits-15c-study-finds

Safe havens for coral reefs will be almost non-existent at 1.5°C of global warming – new study
https://theconversation.com/safe-havens-for-coral-reefs-will-be-almost-non-existent-at-1-5-c-of-global-warming-new-study-176084

サンゴは特定の温度範囲で生息する動物で、褐虫藻の光合成をエネルギー源としています。海水温度が長期にわたり上昇すると、このエネルギー源が失われることとなり、白化します。これを白化現象と呼び、白化が長期にわたるとサンゴは死んでしまうそうです。


気候変動の影響で世界中でより頻繁に海洋熱波が発生していますが、その影響が特に顕著に表れているのが熱帯地方でありサンゴです。サンゴは白化現象を引き起こしても、長い時間をかければ回復することが可能です。しかし、海洋熱波の発生頻度が高まるにつれ、サンゴが白化現象から回復するのに必要な時間が稼げなくなり、より多くの個体が死滅すると報告されています。海洋熱波は世界最大のサンゴ礁地帯であるグレートバリアリーフ北部やモルディブ諸島といったサンゴ礁の多い地域に大きな影響を与える可能性があります。

世界気象機関(WHO)および国際連合環境計画(UNEP)が設立した政府間組織の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2018年に公開したレポートでは、地球の平均気温は12年間で1.5度上昇し、世界のサンゴ礁の70~90%が消失すると予測されています。

「国連の機関が発表した気候変動に関するレポートは楽観的すぎる」という議論 - GIGAZINE

By Tabitha Kaylee Hawk

地球温暖化問題に取り組むあらゆる研究向けの査読付きオープンジャーナルであるPLOS Climateに掲載された最新の研究が、「温室効果ガスの排出を制限するための抜本的な行動なしに世界が2030年代初頭に到達すると、IPCCが予測した1.5度の平均気温の上昇により、世界のサンゴ礁の99%が回復困難な海洋熱波にさらされ死滅する」と予測しました。論文は、海洋熱波の頻度が高まることでサンゴ礁に生息する何千種もの生物とサンゴが死滅し、サンゴ礁の生態系から恩恵を受けている約10億人に大きな影響が出るとしています。

地球温暖化がサンゴを死滅させる可能性は多くの科学者が危惧しています。しかし、中にはサンゴ礁周辺の環境が、サンゴを適切な温度に保つ可能性を期待している研究者もいます。このサンゴ礁が適切な温度に保たれるための条件は、「冷たい水が地表に向けて湧き上がる海域」あるいは「強い海流が発生する海域」で、このような海域は「レフュジア」と呼ばれています。


1986年から2019年にかけて、世界中のサンゴ礁の84%が十分なレフュジア(青文字)でした。しかし、IPCCのレポートの通り、2030年までに平均気温が1.5度上昇すればほとんどのレフュジアが消え、サンゴ礁が死滅(赤文字)してしまうと研究チームは指摘。


地球温暖化による平均気温の上昇スピードを考慮すると、海洋熱波が今後より頻繁に発生するようになる可能性は十分高く、そうなれば世界中のサンゴ礁がほとんど死滅してしまいます。また、研究チームによれば世界中のほとんどのサンゴ礁が過去10年間で少なくとも1度は同じような死滅の危機に陥っているとのこと。

ただし、海洋熱波は地球規模で起こるものではないため、世界中のすべてのサンゴが白化するわけではありません。しかし、極端に高い温度に対応できるサンゴ種であっても、IPCCのレポートにあるような海洋熱波には耐えられない可能性が高く、ほとんどのサンゴが死滅すると示唆されています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logu_ii

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