気候変動の抑制への取り組みには新型コロナウイルス対策なみの国際協調が必要と研究者が主張
世界最大の温室効果ガス排出国だった中国で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とその感染症(COVID-19)に伴う対応のため、CO₂排出量が1カ月の間に25%も削減されたことがわかっています。研究者は、今回のパンデミックと同様に気候変動を「緊急事態」と捉えるなら、同レベルの国際協調が必要であると提言しています。
Coronavirus and climate change: A tale of two crises | Environment| All topics from climate change to conservation | DW | 05.03.2020
https://www.dw.com/en/coronavirus-climate-change-emissions-environemt-china-covid19-crisis/a-52647140
SARS-CoV-2の感染拡大防止対応のため、中国国内では経済活動が大きく制限されています。このことは、NASAと欧州宇宙機関の衛星写真により、大気中の二酸化窒素(NO₂)の値が減少したことでも明確に示されています。左が2020年1月1日~20日、右が2020年2月10日~25日のNO₂の値を示したもの。500μmol/㎡以上を示す色の濃い部分がすっかりなくなっているのがわかります。
中国の大気汚染が激減、新型コロナウイルスの閉鎖措置の影響だと専門家 - GIGAZINE
気候変動の抑制は世界が協調して取り組んでいる問題の1つであり、国際協定である「パリ協定」によって、それぞれの国ごとに削減目標が定められています。中国の場合は「2030年ごろをピークとして、CO₂排出量をできるだけ早く削減するよう最大限努力する」という内容なので、2030年まではCO₂排出量が増加してもおかしくはありません。
しかし、ヘルシンキ大学エネルギー・大気清浄研究センターのLauri Myllivirta氏によると、中国国内の経済活動縮小により、CO₂排出量も25%削減されたことが確認されたとのこと。
経済活動の停滞・縮小は中国国内に限ったものではなく、イギリスのEU離脱や原油高騰などで業績が悪化していた航空会社のFlybeは、SARS-CoV-2の感染拡大の影響により倒産。国際会議やイベントのキャンセルが相次ぎ、世界経済の成長鈍化まで予測されています。石油需要の減少は、2008年の金融危機以来のものと目されています。
バーモント大学ガンド研究所の生態経済学者であるジョン・エリクソン氏は、ここ数週間の世界の動きについて、「危機を脱するために緊急を要する」のであれば世界は迅速に動けることを示していると述べ、「パンデミックを緊急事態として扱っているように、気候変動を本当に緊急事態として扱うのであれば、同じレベルの国際協調が必要です」と語っています。
ただし、Myllivirta氏によると、2008年の金融危機時も中国では輸出産業が大きなダメージを受け大気汚染が緩和されたものの、その後、景気刺激策として大規模な建設が行われたため、大気汚染物質の排出量が急増したとのこと。
今回も、中国の経済活動が回復基調になるのに伴い、汚染物質の濃度が再上昇していることが報じられており、環境改善は一時的なもので終わる可能性があります。
中国の経済活動に回復の兆し-大気汚染物質の濃度が再び上昇 - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-04/Q6NB94DWRGG201
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