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オゾン層を破壊するフロンガス「CFC-11」が今なお世界のどこかで密かに生産され続けている強い可能性が判明

By Ken

宇宙から地球に降り注ぐ紫外線を吸収するオゾン層は地球の生態系を維持する上で重要な役割を果たしています。1980年代には地球の一部でオゾン層が消滅して「オゾンホール」が生じていることが判明して世界的な問題となり、オゾンに悪影響を与えるフロン類(フロンガス)などの製造や使用などが規制されました。その後は大気中のフロンガス濃度も徐々に減少してきたのですが、最新の研究からは規制されているフロンガス「CFC-11」の減少スピードが緩やかになっていることが判明しており、今なお地球のどこかでフロンガスの生産が続けられている疑いが強まっています。

An unexpected and persistent increase in global emissions of ozone-depleting CFC-11 | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-018-0106-2

It seems someone is producing a banned ozone-depleting chemical again | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2018/05/it-seems-someone-is-producing-a-banned-ozone-depleting-chemical-again/

地球上に生きる生物にとって、紫外線は基本的に有害なものです。紫外線は高いエネルギーを持つ電磁波の一種であり、生き物の体に強い紫外線が当たると皮膚組織が損傷を受けて充血や炎症などの症状が起こり、さらには遺伝子が損傷してしまうこともあります。そんな紫外線から地球の環境を守ってきてくれたのが、高度約25kmの辺りを中心に存在しているオゾン層です。オゾン層は、3つの酸素分子からなる酸素の同素体「オゾン」が大気中に多く存在している領域のことで、このオゾン層のおかげで地球は強い紫外線から守られ、何十億年と生物が生き続けて進化を続けてきました。

しかし、産業革命以降に人類が作り出した化学物質の一部に、オゾンを分解する作用を持つものが存在しました。中でも最も多く生産され、使われてきたのがエアコンや冷蔵庫などの冷媒や、スプレー缶の圧力ガスとして用いられていたフロンガスでした。かつて、役目を終えたフロンガスはそのまま大気中に放出され、徐々に上空のオゾン層へと達してオゾン分子を分解していたため、その結果として南極上空に大きなオゾンホールが生じることとなりました。

By NASA Goddard Space Flight Center

このことが問題視され、1987年には「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(モントリオール議定書)」が制定されてオゾン層を破壊する物質の生産や使用などが規制されました。それ以降、世界ではフロンガスなどの段階的な全廃が進められており、2020年までに代替フロンを含む全ての物質を全廃することが定められています。生産および使用の終了後は、大気中に存在するフロンガスの濃度が徐々に減少してきたのですが、2010年ごろを目安にその減少ペースが急激に落ちていることが確認されています。

この調査を行ったのは、アメリカ海洋大気庁のStephen Montzka氏が率いる研究チームです。以下のグラフは、大気中にフロンガス「CFC-11」の分子が存在する割合を一兆分率で示したもので、1995年から2005年ごろにかけては北半球のオゾン濃度(赤色)と南半球のオゾン濃度(青色)が予測ライン(灰色)に沿って減少していたことがわかります。しかしそれ以降、特に2005年以降はオゾン濃度のグラフが予測線から乖離(かいり)し始め、2015年ごろには減少ペースが目に見えて落ちている状態となっています。


この減少には地球の気候などいくつかの原因が考えられていますが、詳細な調査と環境モデリングなどを実施した結果、減少ペースが落ちている理由は、当初の減少ペースを下げるだけの「新たなCFC-11が地球のどこかで生産されていること」であるという可能性が強まっています。これまでの傾向を基にした計算によれば、現在の状況を説明する答えは「毎年6500トンから1万3000トンのCFC-11が大気に放出されている」ということになるとのことです。

報告書では「今回の結果は、1980年代後半に生産規制が実施されて以来、最も大量で長期にわたって存在する3つのCFCのうちの1つの排出が、持続的に増加したことを初めて示すものです」と述べられており、今後のオゾン層の回復に影響が及ぶことが懸念されています。具体的な国名などは示されていないとのことですが、フロンガスの生産モニタリングが不十分であるなどの理由で疑惑がある国はごく限られている模様です。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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