メモ

「なぜ日本企業は多様な事業を行っているのか?」という記事が話題に、なぜ日本企業はAIやEVで世界的に通用しないのか?


TOTOは世界的なトイレメーカーとして有名ですが、実は建物用の光触媒コーティングや高齢者向けの補助器具、さらに半導体製造装置に欠かせない静電チャックという精密部品まで製造しています。TOTOと同様にさまざまな事業を手がける日本企業は数多く存在するとのことで、経済やテクノロジーに関するライターのデヴィッド・オクス氏が、「なぜ日本企業はこれほど多様な事業を行っているのか」に関する記事を公開しました。

Why Japanese companies do so many different things
https://davidoks.blog/p/why-japanese-companies-do-so-many

当然ですが、多種多様な事業を手がける企業は日本以外にも存在しており、たとえばインド経済の多くはアダニ・グループなどの少数の大企業グループによって支配されています。しかしインドは比較的貧しい国であり、経済の専門化レベルも低く、巨大複合企業もセメントや鉄鋼といった比較的単純な事業に特化しています。一方で日本はすでに裕福で発展した国であり、世界で最も経済的に複雑な国であるにもかかわらず、企業は非常に高いレベルで事業多角化を行っているとのこと。


日本企業の多角化経営は多くの先進国の企業と異なっています。アメリカでは何よりも選択と集中を優先する傾向があり、日本の王子製紙がコンサートホールや空港の機内食事業を手がけるように、製紙工場がさまざまな事業を手がけることは一般的ではありません。また、技術力の高い企業の多さで日本に匹敵するドイツでさえ、日本企業のように幅広い事業展開を行うのはシーメンスのような巨大複合企業に限られます。韓国ではサムスンやSKのような財閥が多角的な事業を行っていますが、これは国家と密接に結びついて後押しされてきた企業であり、一般的な企業が多角化している日本とは状況が異なります。

オクス氏は日本企業が高いレベルで事業の多角化を行っている理由について、「その組織構造に内在する特性」によるものだと主張しています。アメリカで一般的な企業形態は専門化され、市場志向であり、株主の利益を第一とするものですが、日本企業はこれとまったく異なる資本や労働力の調整を行っているとのこと。


オクス氏がまず注目すべき点として挙げているのが、日本企業は欧米企業とは異なり終身雇用制度を採用しているということです。日本では高校や大学を卒業したばかりの若者を一斉に雇い、定年退職まで雇い続けるというのが一般的な方針であり、たとえ深刻な経営難に陥ったとしても配置転換や子会社への出向といったさまざまな手段を講じ、社員を解雇せずに乗り切ります。また、個人の業績はキャリアや給与においてそれほど重要な評価基準ではなく、昇進や昇給は主に勤続年数に基づいて行われ、ボーナスも企業の業績と連動しているという点も特徴です。

さらに、日本においては労働組合は企業間にまたがったものではなく、特定の企業内に存在する組織であることがほとんどで、外部の労働組合による圧力をあまり受けません。同じサプライヤーと数十年にわたって強固な関係を築いていたり、取締役会のほとんどが自社の経営幹部で占められていたり、株式の大部分を他の日本企業と相互所有していたり、単一のメインバンクが資金調達や業績監視を担っていたりと、外部からの資金圧力に屈しにくい構造もみられます。

その結果、日本企業は株主への利益還元にあまり力を入れる必要がなく、利益のほとんどは事業に再投資されているとのこと。スタンフォード大学の名誉教授を務めた経済学者の青木昌彦氏は、終身雇用・個人業績に対する報酬の不在・外部資金への敵意といった要素が「J(Japanese:日本)型企業」を形作っており、これは欧米でみられる「H(hierarchy:階層)型企業」と対照的だと指摘しています。

J型企業とH型企業の根本的な違いは、H型企業では生産体制が垂直的に組織されているのに対し、J型企業では水平的に組織されているという点です。たとえばH型企業では生産ラインに欠陥が出た場合、ラインマネージャーから上層部に報告され、上層部が問題解決に乗り出します。一方でJ型企業では生産ラインの作業員らが集まり、その場で問題解決に取り組むとのこと。

こうしたJ型企業の水平的な連携を実現するには、作業員同士が相互の役割を認識しており、自分の作業だけではなく生産ラインの多様な業務に精通していなくてはいけません。そのためには幅広い研修や職務のローテーションが不可欠ですが、終身雇用制度がなく従業員が流動的に入れ替わるH型企業では、こうした幅広い研修を行う意味がありません。また、さまざまな業務に精通させるJ型企業で個人業績連動型の報酬を導入すると、自分が慣れていない新たな職務にローテーションされることは給与の低下を意味するため、ローテーションや研修に対する従業員の反発を招きます。


つまり、典型的なJ型企業では「解雇できない終身雇用の従業員を多数抱えており、そのスキルは特定の職種のみに特化しているのではなく、自社のニーズに合わせて調整されている」という状況が生じます。このシステムは外部投資家にとっては不合理で生産性に欠けるものですが、外部圧力から隔離されたJ型企業の従業員にとっては都合がいいものだとオクス氏は説明しています。

その結果、株主の利益を目的とするH型企業は「利益を上げて株主に還元するため」に存在する一方で、株主のことをほとんど考えなくていいJ型企業は「ただ存続するため」に存在するとのこと。このJ型企業に特有の生存本能こそが、日本企業が事業を多角化する理由だとオクス氏は考えています。

オクス氏は、「従業員を終身雇用すると約束したのであれば、現在の仕事が意味をなさなくなった場合でも、彼らのために新たな仕事を作り出す必要があります。実際、彼らに任せる仕事が見つからなくても、雇用を維持しなくてはならないかもしれません。収益性をそれほど重視しておらず、十分な訓練を受けた汎用(はんよう)性の高い従業員を多数抱えているのであれば、会社の収益を新事業への進出に再投資することは理にかなっています。そうすることで投資ポートフォリオが多様化し、リスクが低減されるため会社の存続期間が延びるだけでなく、余剰人員を何らかの形で働かせ続けることも可能になるからです」と述べました。

一見するとJ型企業は従業員にとって理想的な環境であるかのように思われますが、J型企業がうまく機能するのは自動車・工作機械・産業ロボット・光学分野・精密材料のように、漸進的な改良を必要とする分野に限られます。この分野はトップダウンの戦略的介入が必須なほど流動的ではなく、比較的安定した予測可能な需要を持っています。しかし、トップダウンの戦略的介入が必須な変動の激しい分野、つまりソフトウェア・インターネットプラットフォーム・AI・EVといった分野では、トップダウンの選択と集中に優れたH型企業が優位に立つとのこと。

オクス氏は、J型企業の根本的な弱点こそが、日本企業が一部の分野で圧倒的な存在感を示す一方で、他の分野ではまったく存在感を示せない理由だと結論付けました。

この記事はソーシャルニュースサイトのHacker Newsでも話題となっています。

Why Japanese companies do so many different things | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=48237163

韓国人だというあるユーザーは、Hacker Newsのようなプラットフォームでは西洋人が日本を理想化しがちだと指摘。記事の中では日本企業が「水平的な組織」とされていますが、実際のところ日本には年齢による区別が存在し、特にソフトウェア業界では明らかに垂直的な構造が存在しており、日本人開発者は上層部への承認や報告といったプロセスに追われていると説明しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
なぜ日本経済は90年代以降停滞し続けているのか? - GIGAZINE

日本のソフトウェアの品質が低すぎる理由とは? - GIGAZINE

日本は労働力不足を背景に「フィジカルAI」に注力しておりスタートアップと大企業のハイブリッドモデルが台頭しているとの海外報道 - GIGAZINE

世界の半導体切削機器の約75%を製造する日本企業・ディスコでは上司が部下に指示を出すことがなく業務や意思決定はすべて社内通貨の「Will」で決められる - GIGAZINE

世界最大級の匿名掲示板「4chan」の影にいる日本企業とは? - GIGAZINE

日本のチョコレートメーカーは環境や労働にとって「世界最悪」という評価 - GIGAZINE

経済発展には「競争」と「平等」のバランスこそが大切だと考えた世界の事例 - GIGAZINE

日本は本当に貧しい国といえるのか - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article An article titled 'Why do Japanese compa….