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なぜ日本経済は90年代以降停滞し続けているのか?


世界第3位の経済大国だった日本は、2024年にその座をドイツに奪われました。なぜ日本が経済的に後れを取っているのかについて、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が「日本の強烈な伝統主義が日本経済の重荷になっている」と解説しています。

Why Japan's Shrinking Economy Is Stuck in the ‘90s | WSJ - YouTube


日本は海外から「イノベーションの国」として見られることが多い国です。新幹線や先進的なロボットなど、数々のテクノロジーで世界をリードしているため、「テクノロジーの最先端に日本がいると思うのも仕方のないことです」とWSJのピーター・ランダース氏は語っています。


一方で、日本には強烈な伝統主義が存在しており、これが経済成長の足かせとなり、他国に後れを取るきっかけとなっているとも指摘しました。


日本はかつて世界第3位の経済大国でしたが、2024年にその座をドイツに奪われています。ドイツに世界第3位の座を奪われた理由を、ランダース氏は「日本では数十年にわたって経済成長と生産性が鈍化しているから」と分析しました。


日本経済が停滞している理由のひとつは、「古いテクノロジーに依存したままである」ためです。その最たる例としてランダース氏が挙げたのが、契約書や請求書、公文書などで署名の代わりに使用される「はんこ」。何世紀にもわたって身元を証明するためのツールとして使用されてきたはんこは、2025年時点でも日常のさまざまな場面で使用されています。例えば、銀行口座を開設したり、宅配便の荷物を受け取ったりする際に、はんこを使用するとランダース氏は指摘。


1992年からはんこ職人として働いているというアラミ・ヒデキ氏は「大切なことはめんどくさい方がいい、と僕は思ってるんですよ。デジタル世界の怖いところは、犯罪者が世界に出ちゃうところ」と語りました。


一方で、ランダース氏は「このような慣行が企業の生産性を低下させている可能性があります。日本の生産性はアメリカの3分の2、ドイツの4分の3程度です。これはかなり低いと言えますし、この状態が何年も続いているというのは問題です」と指摘。


効率的な方法や生産性の高い方法と、伝統的で広く愛される方法のバランスを取ることは非常に難しいもの。バランスを取るのに失敗した結果、日本は「文化は豊かだが変化に抵抗する国になってしまった」とランダース氏は評しています。


1986年から日本で暮らしているという経済学者のジェスパー・コル氏は、日本では名刺にいまだにFAXの番号が残っていることを指摘。コル氏は日本文化について、「日本人はあまりにも衒学的になってしまいました。精度にこだわり過ぎるようになってしまいました。はんこはシールが貼ってある線に触れてしまうと、無効になってしまいます。そうなれば書類全体をもう一度書き直す必要があります。このようなプロセスはとても美しいとも言えますが、同時に非常に腹立たしくもあります」と、日本在住の外国人ならではの意見を語っています。


はんこ以外にも古い慣習がいまだに残っているケースは複数あります。「日本企業ではいまだにFAXが頻繁に使用されており、重要な書類はメールではなくFAXで送信されるケースがほとんど」とランダース氏。


コル氏は「日本はとても良い国で、アーリーアダプターでもありました。1970年代や1980年代初頭を見てみると、ウォークマンを発明するなどさまざまな新しいものを生み出しました。ウォークマンは人間が音楽を聴く方法に、完全に革命を起こしました。それにもかかわらず、日本ではアナログからデジタルへの移行が起こりませんでした」と述べ、日本の変化を嫌う性質は古くから存在することを指摘しています。

「ある意味、日本は1990年代からあまり変わっていません。多くの労働者が依然として終身雇用で働いており、日本の賃金水準は30年間ほとんど変化がないままです」「多くの日本人が長時間労働に勤しんでいますが、生産性は低いままです」とランダース氏は語りました。


さらに、「日本は信じられないほど労働集約的です。是非一度、日本のスターバックスへ足を運んでみてください。アメリカのスターバックスの場合、2人の従業員が注文を受けてカフェラテを作りますが、日本の場合は少なくとも5人もの従業員が働いています」とコル氏は言及。


このような日本の労働環境における慣習について、ランダース氏は「日本の厳格な労働文化は依然として効率よりも適合性を優先しています」と指摘しています。

しかし、このような状況も徐々に変化しつつあり、その流れを主導しているのが日本のデジタル大臣である河野太郎氏です。ランダース氏は河野氏による行政手続きにおけるアナログ規制全般の見直し施策を紹介しています。


日本ではデジタルによる代替手段が用意されていても、従来のアナログ式の手段が好まれるケースが多くあります。これは日本が内容よりも形式を重視する衒学主義的な側面を持ち合わせているためだとコル氏は指摘。このような状況から脱却するための鍵として、コル氏は「アーリーアダプターであること」と「最新技術を採用することでデジタル技術を迅速に活用すること」を挙げました。


ランダース氏は「日本は常に独自のリズムで前進しながら、最新のテクノロジーを取り込んできました。そのため、経済的には停滞していたとしても、独自の文化と魅力を持っています。しかし、日本経済を再び活性化させるには、歴史の一部をそぎ落とす必要があるのかもしれません」と語っています。

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in 動画, Posted by logu_ii

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