生成AIは世界経済に年間620兆円の価値を加えるとマッキンゼーが報告
コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーが2023年6月14日に、生成AIが世界経済に追加する価値は「年間2兆6000億ドル(約366兆円)から4兆4000億ドル(約620兆円)」に上るとの調査結果を発表しました。これは、日進月歩の進化を続けるAIが世界に与える経済効果は、イギリス並みの国がひとつ丸ごとできるのに相当するインパクトであることを示しています。
Economic potential of generative AI | McKinsey
https://www.mckinsey.com/capabilities/mckinsey-digital/our-insights/the-economic-potential-of-generative-ai-the-next-productivity-frontier
McKinsey: gen AI could add $4.4T annually to global economy | VentureBeat
https://venturebeat.com/ai/mckinsey-report-finds-generative-ai-could-add-up-to-4-4-trillion-a-year-to-the-global-economy/
マッキンゼーはレポートの中で、生成AIの発展スピードが速すぎるため、AIが社会に与える影響を推し量るのは容易ではなかったと述べています。例えば、大規模言語モデル(LLM)・GPT-3.5を搭載したチャットボット・ChatGPTは、2022年11月に登場するや否やその性能と精度で世界を驚かせましたが、それからたった4カ月後には能力が比べものにならないほど向上した次世代のLLM・GPT-4がリリースされました。
同様に、9000トークンを処理できるChatGPT対抗馬として2023年3月に登場したAnthropicの生成AI「Claude」は、5月には平均的な小説の長さである7万5000語に相当する10万トークンのテキストを1分間で処理できるようになりました。また、GoogleもAIと融合した検索技術・Search Generative Experienceやチャットボット・Bardなどに搭載する新世代LLMのPaLM 2を5月に発表しています。
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生成AIの経済効果を調べるため、マッキンゼーは世界の労働力の80%に相当する47カ国の850の職業と、それらの仕事に就いている人が行う2100の作業内容を対象に、生成AIの潜在的な影響を分析しました。そして、その結果から得られた洞察を次のようにまとめました。
◆生成AIは世界経済に膨大な価値を加える
マッキンゼーによると、生成AIは63のユースケース全体で年間2兆6000億ドルから4兆4000億ドル相当の価値を追加できると推定されるとのこと。参考として、イギリスの2021年のGDPは3兆1000億ドル(約437兆円)でした。この推定値は、対象となったユースケース以外のタスクに生成AIが組み込まれる可能性を考慮すると、さらに倍増するとマッキンゼーは指摘しています。
◆生成AIが提供する価値の75%は4つの分野にまたがる
4つの分野とは、具体的にはカスタマーオペレーション、マーケティングセールス、ソフトウェアエンジニアリング、研究開発(R&D)の4分野です。例えば、生成AIによる顧客との対話のサポート、データ利用の強化やSEO最適化を通じたマーケティングやセールスの向上、自然言語のプロンプトによるコードの構築、シミュレーションやテストの加速による製品開発の効率化などがこれに当たります。
◆生成AIはあらゆる産業分野に大きな影響を与える
産業の中でも銀行、ハイテク、ライフサイエンスは特に生成AIが収益に大きな影響を与えると推測される業界です。例えば銀行業界にAIが普及すれば、年間2000億ドル(約28兆円)から3400億ドル(約47兆円)の価値が追加されるとされています。また、小売業や消費者向けの商品には、年間4000億ドル(約56兆円)から6600億ドル(約93兆円)の潜在的なインパクトがあるとのこと。
◆生成AIは仕事の一部を自動化することで個々の労働者の能力を強化する
マッキンゼーは、労働時間の60~70%を占める仕事をAIで自動化できると考えています。特に、生成AIは労働時間の25%を占める仕事に必要な「自然言語を理解する能力」を大きく向上させるため、賃金や教育要件が高い知識労働、いわゆるナレッジワーカーの仕事に大きな影響を与えるとみられます。
◆労働力の変革のペースは加速する
技術開発の速度や経済的実現可能性、普及のタイムラインを加味したマッキンゼーのAI導入シナリオによると、2030年から2060年の間に2023年時点の仕事の半分がAIによって自動化される可能性があるとのこと。中間点は2045年で、これは以前の推定に比べて10年前倒しされたスケジュールです。
マッキンゼーは生成AIを「テクノロジーの触媒」として捉えており、業界を自動化させるだけでなく従業員の創造的な可能性を解放するものだと定義しています。
レポートの共著者のひとりで、マッキンゼーの子会社・QuantumBlackのシニアパートナー兼グローバルリーダーであるアレックス・スカレフスキー氏は「言うなれば、私たちは創造性の時代、つまりクリエイターの時代を迎えつつあると確信しています」とコメントしました。
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