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「週40時間労働」は長いのか?短いのか?


日本の労働基準法においては、使用者は原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて従業員を労働させてはならないと定められています。一方で独立行政法人労働政策研究・研修機構によると、ドイツやフランス、イギリスでは、労働時間の上限は基本的に週48時間とされているとのこと。このように定められた「週に40時間~50時間」という数字はどこから来て、どんな歴史をたどってきたのかについて、セキュリティや認証サービスを展開するOktaが紹介しました。

Is 40 hours a week too much? Here’s what history and science say | Okta Australia
https://www.okta.com/au/identity-101/40-hour-work-week/

1日8時間という労働時間の決まりには長い歴史があります。さかのぼること1817年、産業革命後に労働者のために活躍したロバート・オーウェンが「8時間の労働、8時間の娯楽、8時間の休息」という言葉を作り出しており、この頃から1日に8時間働くという条件の兆しが見えていました。

Oktaによると、1800年代における製造業では週に6日、10時間から16時間のシフト制で、1週間に100時間近く働くことが一般的だったとのこと。その後1866年に全米労働組合が議会に対して8時間労働制を義務付ける法律を制定するよう要請しましたが、この法律は成立しませんでした。しかし、この議論は8時間労働制への国民の支持を高めることになります。


1900年代初頭には多くの産業が8時間労働制を導入しましたが、ほとんどの人はまだ週に6日働いており、1926年にヘンリー・フォードが従業員の労働時間を1日短縮するまではこの状態が続いたそうです。

ヘンリー・フォードといえば、革新的な大量生産方法を取り入れて世界中に規模を拡大させた自動車メーカー「フォード・モーター」の創業者として有名な人物です。フォードがそれまで1日8時間、週6日だった労働時間を週5日に減らしたところ、これまで以上に生産性が高まることを発見し、積極的に週5日、つまり週40時間労働を推し進めるようになります。Oktaは「フォードの成功に刺激され、全米の製造業が週40時間労働制を導入するようになりました」と指摘します。


1938年にはアメリカが公正労働基準法を制定、1週間の労働時間が44時間を超えるすべての労働者に残業代を支払うことを雇用主に義務づけました。この数字は2年後に週40時間と改められ、2022年時点ではこの40時間という数字が1つの基準となっています。

長い時間をかけて減少してきた労働時間ですが、週に40時間という労働時間は「少なすぎるのでは?」という疑問も投げかけられることがあるとのこと。これについてOktaは「明確な答えはノーです。100年以上にわたる研究とテストから、それを証明する証拠が山ほどあるのです」と回答しました。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が52本の応用心理学研究を要約した調査によると、長時間のシフトと定期的な残業は、雇用者と労働者の両方にとってマイナスの影響があることが分かったとのこと。

いくつかの研究によると、残業が常態化している人はそうでない人に比べて健康状態が悪く、太りやすく、病気になりやすく、仕事中にけがをしやすいことが分かっているそうです。また、1日の労働のうち8時間目以降は注意力が低下し、ミスを犯す可能性が高くなるとのこと。長時間労働や残業が常態化している人は、1日8時間、週40時間労働の人よりも生産性が低くなるという結果を示している研究もあったそうです。

また、労働時間を短縮することのメリットも示されています。1974年にイギリスが週休4日制を試験的に導入したところ、生産性はわずか6%しか落ちなかったとのこと。フランスは2000年から2008年まで1週間の最長労働時間を35時間に制限しましたが、労働者を対象にした調査では、半数以上が「労働時間を減らして働く方が幸せ」「仕事と生活のバランスを取ることができる」と回答していました。


このような結果が示されているにもかかわらず、労働者の実質的な労働時間は近年増加傾向にあるとOktaは指摘します。かねてから続く週40時間という数字について、Oktaは「昔とは環境が異なるため、自社に最適なスケジュールを見つけることが大切です」と述べています。

現代のテクノロジーの進歩により、工場に出勤していた100年前とは違い「いつでもどこでも」仕事ができるようになりました。また近年では時給制よりも月給制が増えて「時間外労働」の定義が曖昧になりつつあるほか、労働時間外に育児を行わなければいけない共働き世帯も増加傾向にあることから、週40時間労働の負担が増しつつあるとも考えられます。

Oktaは「決定的な結論を出すには十分ではありませんが、週40時間労働は長すぎるという証拠がいくつかあるのです。1週間の労働時間を35時間にする、週休4日制に移行することを検討する、働く時間は自分で決められるようにするなど、潜在的なメリットを検討してはどうでしょうか」と述べました。

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in Posted by log1p_kr

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