コラム

日本は本当に貧しい国といえるのか


「日本は貧しくなった」という言葉を耳にすることがあります。確かに、一人あたりのGDPといった数字は低迷しています。しかし、体感的には日本以上にコストパフォーマンスに優れた国はそうありません。この現象は何を意味しているのでしょう。

こんにちは、自転車で世界一周をした周藤卓也@チャリダーマンです。私は経済学者どころか大学すら出ていない一般人。それでも、150カ国ほど世界を見て周りました。誰もが使うモノは必然的に値段が下がります。世界は中国製品であふれています。そうした中国製品の影響が、日米欧で同じとは思えません。

◆格差
グローバル化した世界経済下では貿易によって先進国から途上国へと豊かさが流れていきます。日本は貧しくなったかもしれませんが、周辺の中国、東南アジアは豊かになりました。一方で何かと比較されるアメリカとヨーロッパはどうでしょう。中米からアメリカを目指す移民キャラバン、アフリカからヨーロッパを目指す移民船のニュースは、先進国と途上国の格差が大きいことが原因ではないでしょうか。

中米ホンジュラスの荒れた幹線道路。途上国では珍しくない光景ですが、こうした道路の穴ぼこを勝手に補修して通行車にお金を要求する人たちは異質でした。


◆貿易
グローバル化した世界経済下では貿易によって、あらゆるモノの値段が均一化されます。中国は世界の工場となりました。自転車世界一周中の旅で、私は世界各地で中国製品を手にしてきました。100円ショップにある商品を比較するなら、途上国では「質が悪くて値段が安い」、先進国では「質が悪くて値段が高い」。日本と同品質・同価格のモノが手に入る国はそうはありません。

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日本にある100円ショップは、ほぼ物価の底辺です。しかし、海外展開した日本の100円ショップは違います。日本と同じ商品であっても日本より高価格でした。中国には2元(約30円)ショップがあります。こちらは低価格で、かつ低品質。アメリカには1ドル(約105円)ショップがありました。こちらは同価格~高価格ながらも低品質、よくて同品質。自国生産がメインの食品は海外の方が低価格でしょうが、食品以外に限れば日本の100円ショップほどコストパフォーマンスに優れた店を知りません。

中国の2元ショップ。


アメリカの1ドルショップ。


100円ショップの食品以外に限らず、日用品、衣服、家電、家具、スポーツ、工具と、日本ではありとあらゆるモノが安く手に入ります。平成の日本はデフレの時代でした。日本のモノは安くなりました。だから、日本は貧しくなったのでしょうか。私はそうは思いません。

平成の日本は労働コストの安さから国内から海外への工場移転が進みました。新しく工場ができた国の経済は発展します。特に世界の工場となった中国は急速に発展しました。東南アジアも同様でしょう。中国に約14億人、東南アジアに約6億人、日本、韓国、北朝鮮、台湾で約2億人。単純計算して約22億人の生活が経済のグローバル化によって同質化していきます。世界人口の4分の1以上を占める地域です。100円ショップでもホームセンターでもドラッグストアでも日本で何か購入したら製造国を確認してみてください。中国製、タイ製、マレーシア製など低価格商品は日本の近辺が製造国でしょう。

500円の中国製折りたたみコンテナ。


300円の引き出しケース。


こちらはタイ製でした。


100円のマグネットポケットは日本製でした。100円ショップの中国製品は昔に比べると影響力が減少している気がします。中国の労働コストも増加しているので、100円ショップの商品も刻一刻変化していきます。


◆輸送コスト
アメリカのトランプ大統領は貿易が不均衡だとして、中国に対し圧力を強めています。中国が中国製品をアメリカに輸出するなら太平洋を越えなくてはなりません。日本より輸送コストがかかるアメリカですら中国製品は脅威だと排除に動いています。しかし、日本人にとって米中貿易摩擦はなぜか人ごと。日本の方がアメリカより中国製品の影響力を受けているはずなのに。より悪条件で競争しているはずなのに。

近距離ゆえに日本は中国産の食品の影響もアメリカより受けるでしょう。有名どころでは、お菓子のスニッカーズやオレオは中国産です。

日本製より割安な中国製のくだものゼリー。


中国からの海上輸送コストについてはWorld Freight Ratesというサイトで検索できます。

一例に同条件で中国の上海からのコンテナ輸送コストを計算してみます。

東京までだと、だいたい250ドル(約2万6000円)~276ドル(約2万9000円)。


ロサンゼルスまでだと1374ドル(約14万5000円)~1518ドル(約16万円)。


ドイツのハンブルクまでだと1535ドル(約16万2000円)~1696ドル(約17万9000円)。


同じ中国製品にしても輸送コストがある以上、アメリカでもドイツでも日本と同じ値段にはなりません。日本では100円の中国製品が、アメリカやドイツでは200円だとします。この場合、日本にある企業は100円の中国製品と競争します。しかし、アメリカやドイツの企業は200円の中国製品との競争をするということです。日本より生産性が低くても中国製品と戦えます。条件はもっと複雑かもしれませんが、中国に近い国ほど中国製品の影響を受けるのではないでしょうか。

イタリアの中華雑貨店。


オランダ資本の100均のようなディスカウントストア。


◆まとめ
世界経済のグローバル化によって、日本は中国、東南アジアとひとつになりつつあります。中国、東南アジアにモノがあふれ価格競争力がある以上、日本だけ豊かなままではいられません。その価格競争力は、あのアメリカですら問題提起したほど。日本でモノを作るには低価格な中国製や東南アジア製と競争します。アメリカやヨーロッパとは周辺の環境が違います。そうして安くなった日本は本当に貧しくなったのでしょうか。日本以上にモノのコストパフォーマンスが高い国はあるのでしょうか。数字だけでは判断できないモヤモヤを抱えてしまいます。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
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さらに、自転車世界一周についての紙の書籍出版の話も、着実に動いています。発売の際はよろしくお願いします。

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in コラム, Posted by logc_nt

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