世界で最初にATAPI接続に対応したCD-ROMドライブを探る
Advanced Technology Attachment Packet Interface(ATAPI)は、HDD用の接続インターフェースだったIDEコントローラーに対して、CD-ROMドライブやDVDドライブなどを接続可能にするために開発されたパケット型コマンドの接続インターフェースです。このATAPI接続に初めて対応したCD-ROMドライブについて、1980年代後半から1990年代にかけてのPCの歴史を扱うブログ「OS/2 Museum」が探究しています。
The Secret History of ATAPI | OS/2 Museum
https://www.os2museum.com/wp/the-secret-history-of-atapi/
1993年頃、CD-ROMドライブにはアメリカで規格化されたSCSIか、パナソニックやミツミ電機、ソニー、フィリップスなどがおのおの独自に開発したインターフェースが使われていました。しかし、1995年にはメーカー独自のインターフェースは事実上なくなり、ほとんどのCD-ROMドライブはATAPIインターフェースを採用するようになりました。
OS/2 Museumの調査で、1994年3月に開催されたコンピューター関連の見本市「Cebit '94」で、ATAPIを含めた「新しいIDEインターフェース」を採用したCD-ROMドライブ「CDD-300」をフィリップスが発表していたことが判明しました。このドライブがいつ発売されたのかは不明ですが、少なくとも1994年に登場したことは間違いないとのこと。
さらに調べてみると、日本電気(NEC)も遅くても1994年にATAPIに対応したCD-ROMドライブ「CDR-260」を発売していたことがわかりました。CDR-260は日本でPC-9800シリーズに搭載されていたCD-ROMドライブで、CDD-300よりも先にリリースされていた可能性が高いそうです。
Microsoftのサポート技術情報であるMicrosoft Knowledge Baseによると、NECのCDR-260は「ATAPI A1.8仕様に準拠しているものの、これはATAPIの協議団体による最終策定に至ってないプレリリース仕様です。また、CDR-260RというCD-ROMドライブはATAPI 1.2仕様に準拠しており、Windows NTのバージョン3.5で動作します」と記述されています。そして、1994年7月に撮影されたCDR-260の写真を見ると、8ビットバスと16ビットバスを備えており、ATAとATAPIのどちらにも対応していると考えられるとOS/2 Museumは述べています。
そこで、OS/2 Museumは1994年2月に製造されたCDR-260を入手。
1994年2月18日にリリースされたDOS用のNEC_IDE.SYSデバイスドライバーには「Rev A1.7」とあり、プレリリースのATAPI A1.7仕様に対応している可能性が非常に高い、とOS/2 Museumは述べています。
そして、1995年4月にリリースされたNEC_IDE.SYSは以下で、こちらはATAPI 1.2仕様に正式対応している可能性が高いとのこと。ただし、いずれのNEC_IDE.SYSにおいても、言及されているのはOak TechnologyのOTI-011というドライブチップのみで、汎用のATAPI仕様に対応できているかどうかは不明です。
CDR-260を分解して取り出した基板が以下。右下にOTI-011が搭載されているのが見えます。
Oak TechnologyのOTI-011というドライブチップが以下。OTI-01は1993年4月に考案されたそうですが、ATAPI 1.2のドラフトが発表されたのが1993年6月、仕様が策定されたのは1994年6月なので、Oak TechnologyにはあらかじめATAPIの仕様が伝えられていたと考えられます。
そして、CDR-260の具体的な発売日は不明だとのことですが、1994年6月にLinuxカーネルでこのCDR-260をサポートするためのパッチが開発されていました。このパッチは1994年2月にドラフトが公開され、6月10日に策定されたATAPI 1.2の仕様を反映していました。
OS/2 Museumによれば、LinuxはCDR-260を検出するそうですが、CD-ROMを挿入するとエラーとリセット試行が発生し、何も読み取ることはできなかったとのこと。DOSでNEC_IDE.SYS(1994年8月11日リリース)を適用すれば問題なく動作することから、CDR-260自体には問題ないそうです。
OS/2 Museumは、「私たちは、Oak Technologyが初期のATAPI接続対応CD-ROMドライブの進化において重要な役割を果たしていたこと、そしてATAPI接続に対応したCD-ROMドライブが1994年初頭、おそらくは最も初期のATAPI規格が最終策定される前の1993年後半に製造されていたことがわかりました。これらのドライブは、標準的なATAPIドライバソフトウェアとは互換性がない傾向がありますが、DOSドライバでは動作するようです」と述べています。
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