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NFTアートは本当に「分散型ディズニー」となれるのか?

by sⓘndy°

ブロックチェーンによってデジタルアートの真正を保証する「非代替性トークン(NFT)」は、ライセンス販売と組み合わせることで、クリエイターが収益を上げる革新的な仕組みを構築できると期待されています。著作権を独占することで収益を生み出すディズニーのようなビジネス構築が可能だとも言われますが、「NFTは著作権を自動的に付与するものではない」という点をテクノロジーメディア・The VergeのAdi Robertson氏が指摘しています。

NFT makers are trying to build the next Disney - The Verge
https://www.theverge.com/22785051/nft-collectibles-intellectual-property-decentralized-disney

ブロックチェーン上に記録される一意で代替不可能なデータ「非代替性トークン(NFT)」は、デジタルアート作品の真正を証明するのに最適だと注目されています。2021年5月頃からTwitterのアイコンを「サルのアバター画像」に変更する人が続出していますが、これもNFTを利用したデジタルアート。NFTアートは投資・芸術・コミュニティを合体させた新たなオンラインコミュニティ「NFTクラブ」と密につながり、その価値を向上させています。

NFTクラブがどのような仕組みで運営されているのかは、以下の記事から読むことが可能です。

Twitterで「サルのアイコン」が急増している裏側には何があるのか? - GIGAZINE


アート作品には贋作の問題がつきものですが、NFTがあればこの問題を解決可能であると考えられています。また、NFTクラブの中心となるブランドは独占権を有していることも多く、ライセンス販売を通じたビジネス構築を目標としていることから、NFTアートは「分散型ディズニー」と評されることも。

例えば、「サルのアイコン」といったNFTアバターは一意であることが証明されており、NFTアバターの購入者は単一のファンアートを作成したり、あるいは全く別のシリーズ作品をスピンオフで作成したりすることが可能です。多数の人が作成したスピンオフのうち1つが注目を集めるとサルのアイコン全体の知名度が上がるので、アイコン購入者やスピンオフ作成者は手持ちの作品を販売して利益を得ることができます。もちろん、全ての権利を販売して新たに別のプロジェクトに取り掛かってもOKです。

しかし、「NFTと紐づいた架空のキャラクターを所有すること」と「NFTを所有すること」は法的には異なるとRobertson氏は指摘。まず、NFTはブロックチェーンと呼ばれるデータベース上にある記録です。記録は特定の暗号資産ウォレットと紐づけられており、「NFTを所有する」ということは、自己の制御下にあるデジタルウォレットに紐づけられた記録を持つことを意味します。


これに対し、知的財産を所有するということは、作品に関連する著作権および商標を持つことを意味します。著作権の保有により、作品のコピーを販売したり、著作権に基づき別のメディアを制作したりが可能になります。また商標を有することで、商標登録したアイテムについて他の人が作品を販売することを防げます。

Robertson氏によると、NFTはそれ自体が特定の法的権利を付与するものではないとのこと。著作権や商標権は国や国際機関によって施行される複雑な法的枠組みを前提としていますが、NFTの魅力はむしろ「政府による裏付けを必要とせずに所有権を主張できること」であるとRobertson氏は述べています。

このため、NFTアートには個々にライセンスが付与されていますが、その形態はアートによってさまざま。「Chill City Penguin」というNFTアートの場合は1回限りにおいて非商用で印刷が可能であり、サルのアイコンを展開する「A Bored Ape Yacht Club」の場合は自分のサルのアイコンについては自由に商品を作って販売できますが、「Bored Ape」という文字が利用できるかどうかはNFT番号によって異なります。また、CryptoKittiesの場合はNFTの知的財産フレームワーク標準化を試みるNFT Licenseに準拠します。


ただ、ディズニーは独占権のもと厳しくコンテンツを取り締まりますが、基本的に多くのNFTはファンアートを歓迎しているとのこと。そしてコラボレーションの際にはブロックチェーンによる自動契約ではなく、手動でライセンス契約や1回限りの使用についての契約を結ぶ形が中心のようです。

上記の通り、NFTそのものは著作権において曖昧な立ち位置であり、権利のありかを自動的に証明するものではありません。2021年10月には6人の作家が物語の「核」を作成し、ファンがその核を元に作った作品をNFT化できるというプロジェクトがスタートしたものの、「著作権の所在が不明である」という批判を受けて閉鎖しました。このように、NFTの性質から「NFTは新しいメディアモデルだ」という賞賛の声がある一方で、「NFTは革新的な新しいメディアではなく、単にクリエイターがファンを使って収益化しようとする方法だ」と指摘する声もあります。

NFTが所有権を証明することは確かであり、「所有者不明」というケースの発生を防ぐのは確かです。一方で、著作権に関する裁判では所有権の証明が重要でない「フェアユース」で収まることも多々あります。著作権においてNFTが解決すべき課題は非常に多く、NFTが「分散型ディズニー」となるまでにはまだまだ時間がかかるというのが現状のようです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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