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「NFTはアーティストを守るはずだったがそうはなってない」という指摘


非代替性トークン(NFT)」を用いることで、アート作品や映像データを「コピー不可能なデジタル作品」として取引する市場が活況を呈しています。NFTコンテンツを購入することはデジタルコンテンツの所有権を購入するようなものであるため、これまで無断でデータをコピー&共有されまくってきたデジタルコンテンツクリエイターにとって、NFTはNFTは救いになるはずでした。しかし、起業家のアニル・ダッシュ氏が「NFTはアーティストを守るはずだったがそうはなってない」と指摘しています。

NFTs Were Supposed to Protect Artists. They Don't. - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2021/04/nfts-werent-supposed-end-like/618488/

2014年5月、ダッシュ氏はニューヨークで毎年開催されているハッカソンイベントのSeven on Sevenに参加し、アーティストのケヴィン・マッコイ氏と出会います。


当時、アーティストやイラストレーターといったコンテンツクリエイターたちは、所有権などの情報が完全に欠けた状態のデジタルコンテンツをインターネット上で共有していました。そのため、オークションハウスやメディアのコンサルタントとして働いていたというダッシュ氏は、デジタルデータの所有権や共有・管理方法について考えるようになっていったそうです。

Seven on Sevenでマッコイ氏と出会ったダッシュ氏は、オリジナルのデジタルアート作品の所有権をブロックチェーンで裏打ちするシステムを共同で開発します。なお、ダッシュ氏とマッコイ氏はこのシステムに「monetized graphics(収益化されたグラフィックス)」という名前をつけ、これにムービーデータを登録し、ダッシュ氏が4ドル(約440円)でムービーの所有権を購入しました。ダッシュ氏とマッコイ氏が「monetized graphics」について発表する様子は、以下のムービーで見ることができます。

Seven on Seven 2014: Kevin McCoy & Anil Dash on Vimeo


ダッシュ氏とマッコイ氏はこのシステムのアイデアに関する特許を取得しておらず、マッコイ氏は数年間にわたってシステムを普及させようとしましたが、広く利用されることはありませんでした。そのため、ダッシュ氏は「私たちが最初に行ったデモは時代を先取りしていたかもしれませんが、成功することはありませんでした」と語っています。

ダッシュ氏とマッコイ氏が作り出した「monetized graphics」が普及することはありませんでしたが、現在、「monetized graphics」と同じようにブロックチェーンを用いてデジタルデータを「コピー不可能なデジタルデータ」として取り扱う「NFT」が注目を集めています。デジタルデータをNFT形式で売買する市場は近年注目を集めており、その市場規模は10億ドル(約1100億ドル)にものぼるといわれています。2021年3月にはNFTアートが史上最高額の6900万ドル(約75億円)で落札されており、これを機にNFTに興味を持ちはじめたという人も多いはず。

1枚のNFTアートが史上最高額の75億円で落札される - GIGAZINE

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NFTコンテンツのオリジナルデータには固有の所有権証明書が付属しています。この証明書はブロックチェーンに刻印されているため、改ざんすることができず、誰の所有物であるかが常に証明されているのが特徴です。NFTコンテンツについては、「データにシリアル番号が刻印されているようなもの」と表現されることもあります。

NFTの起源や、なぜNFTがアーティストをサポートする強力なツールになると考えられているのかについては、以下の記事にまとめられています。

インターネットの「無限の複製」能力を封じる可能性を秘めたコピー不可能なデジタルデータ「NFT」とは? - GIGAZINE

by beeple

そんなNFTの現状について、ダッシュ氏は「NFTの背後にある考えは今も昔も変わりません。アーティストが自分の作品を管理し、より簡単に販売し、他人が許可なくデータを流用することができないようにするというものです。マッコイと私は特に芸術方面にこの種のテクノロジーを利用することで、コンテンツクリエイターを手助けできるようになると期待していました。しかし、想定通りには何も進んでいません。アーティストに力を与えるという我々の夢は実現しておらず、NFTに対する誇大表現が生まれています」と語り、NFTは「monetized graphics」を開発した際に自分たちが想定したような使い方はされていないと述べました。

一晩のハッカソンで作り出されたNFTのプロトタイプである「monetized graphics」には、いくつかの欠陥がありました。特に大きな欠点だったのが、デジタルデータをブロックチェーンに直接保存することができなかったという点です。ダッシュ氏らは一晩のハッカソンの中で「monetized graphics」を作成したため、ブロックチェーン内にデータ全体を保存することをあきらめ、オリジナルデータが保存されているアドレスや圧縮データをブロックチェーン上に保存したと説明しています。

しかし、この「妥協策」は今日のNFTコンテンツにも採用されています。そのため、実際のNFTコンテンツの売買で取引されているのは「NFTコンテンツのリンク」であるとダッシュ氏は指摘。さらにダッシュ氏は、「NFTコンテンツの売買でやり取りされるリンクは、数年以内にサービスを終了してしまう可能性が高いスタートアップのウェブサイト上に存在しています」と語り、新興サービス上に保存されたNFTコンテンツを売買することの危険性を挙げています。

ソフトウェアエンジニアのJonty Wareing氏も、「好奇心から、ユーザーが購入したNFTコンテンツがどこを参照しているか調査したところ、ほとんどの場合はスタートアップが運営するインターネット上のIPFSゲートウェイを参照していることがわかりました。NFTコンテンツに含まれるURLはメディアの保存場所ではなく、JSONメタデータファイルの保存場所を指しており、このJSONメタデータファイルから購入した実際のデジタルデータを参照します。そのため、もしもサービス提供者が破産してURLが機能しなくなれば、NFTコンテンツは無価値となります」とTwitter上で指摘しています。


さらに、ブロックチェーンをベースとした暗号通貨に対して資産家からの注目が集まっているという状況が、デジタルコンテンツクリエイターとNFTコンテンツの現状をさらに悪化させるとダッシュ氏は指摘。暗号通貨の取引アプリは非常に人気を集めていますが、ほとんど閉じた経済の上に成り立っているため、「取引することはできても暗号通貨を現金化することはほとんどできない」とダッシュ氏は述べています。そのため、暗号通貨を多数保有する資産家たちは、暗号通貨で不動産を購入したり高級車を購入したりすることができず、唯一の消費手段としてNFTコンテンツを購入しており、そのような状況がNFTに対する誇大表現を生み出しているとダッシュ氏は述べました。

ただし、NFTコンテンツに対する楽観的な見方をあきらめたくないとダッシュ氏は語り、マッコイ氏もNFTのようなブロックチェーン技術がアーティストの作品を適切に扱う役に立つと「今でも信じています」と語りました。

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in メモ, Posted by logu_ii

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