学校のWi-Fiパスワードを学生がお金を稼ぐために販売してしまう
by Gulshan Khan for Rest of World
日本の小学校や中学校では給食が出るので、生徒は昼食の心配をせずに学校に行くことができます。しかし、そうとは限らない南アフリカの学校では、貧しい子どもが昼食代を稼ぐために学校のWi-Fiのパスワードを周辺住民に売っていると、非営利のジャーナリズム組織・Rest of Worldが報じています。
South African students are selling school Wi-Fi passwords for lunch money - Rest of World
https://restofworld.org/2021/south-african-students-are-selling-school-wi-fi-passwords-for-lunch-money/
南アフリカはアフリカ大陸で最も豊かで通信インフラが発達した国であると同時に、2014年時点のジニ指数(ジニ係数をパーセント表示したもの)が世界最高の63と、世界で最も不平等な国でもあります。参考までに、日本のジニ指数は32.1、先進国としては格差が大きいとされるアメリカでもジニ指数は41.5しかありません。
こうした所得格差があるため、南アフリカの貧しい家庭では満足にインターネットを使うことができません。今回、Rest of Worldの取材を受けたタボ君も、南アフリカに住む貧困層の子どもの1人です。タボ君は、保護者の許可を得て取材をしたRest of Worldに対し、「学校のWi-Fiのパスワードを教えると、料金として10~20ランド(約75~150円)、天気のいい日なら50ランド(約377円)は稼げるんだ」と話しました。
タボ君が通っているヨハネスブルグ南東部に位置するドゥドゥザの中学校には、生徒が無料で使えるWi-Fiが整備されています。一方、学校の周囲にある家庭の多くはインターネットを使用できず、携帯電話でもデータ通信ができないので、タボ君やタボ君のクラスメートはそうした周辺住民にWi-Fiのパスワードを売って昼食代の足しにしているとのこと。
多くのサービスがオンラインで提供されているにもかかわらず、貧困層の人々がインターネットを使えずサービスも受けられない状況を改善するため、南アフリカ政府は国内の通信会社に通信料を最大50%引き下げることを指示。これを受けて、南アフリカの大手通信会社3社は2020年に、データ通信料金の引き下げと生活に必要なサービスの通信料の無償化を発表しました。しかし、料金の引き下げは遅々として進んでおらず、貧困線である月収561ランド(約4200円)以下の家庭が多いドゥドゥザでは、最安値でも450ランド(約3400円)する無制限の4G通信プランに加入する余裕がない人が少なくありません。
そのため、タボ君が通っているTandi Eleanor Sibeko中学校やその近くにあるAsser Maloka中学校では、この2校のWi-Fiを利用するために6kmも歩いて学校の近くまで来る住民もいるそうです。ダーバンに住んでいる交際中の女性にメッセージを送るため、学校のWi-Fiを利用しているボンガニ・バディさんは、Rest of Worldに「Wi-Fiが使えるなら山にだって登りますよ。学校の警備員に追い回されることもありますが、海賊版Wi-Fiがあるおかげでドラッグの売買や非行に手を出さずに済んでいるのは確かです」と話しました。
バディさんは、南アフリカに住む多くの若者と同様に失職中とのこと。そのため、2km歩いて学校まで行き、そこで恋人にメッセージを送ったり仕事探しをしたりしています。しかし、これまで50回も履歴書を送ったにもかかわらず、仕事は得られていないそうです。
周辺住民がWi-Fiを使うため、学校の生徒や教師は授業中にインターネットが非常に遅くなるのを経験しています。こっそり学校のWi-Fiが使われるのを防ぐため、学校側もこれまでいくつか対策を行ったことがありますが、いずれも効果がありませんでした。Tandi Eleanor Sibeko中学校のモエニ・スコサナ校長は「いくら努力しても、若者たちを学校の敷地から追い出すことはできませんでした。私たちは目下、何かいい解決策はないかと模索しているところです」とコメント。また、同校の情報通信技術委員会のボンガニ・マシムラ代表は「私たちの学校には最新鋭のカメラシステムやセキュリティ機器がありましたが、夜のうちに全部盗まれてしまいました。この地域におけるインターネットの平等は、社会的不平等が解消されない限り達成できないでしょう」と話しました。
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