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「隣国の通信事業者の闇SIMカード」によりジンバブエ国境の町がリモートワークの拠点になっている


アフリカ南部の内陸国であるジンバブエは、アフリカの中でも特にモバイルインターネット価格が高い国です。そんな中、隣国のモザンビークの通信事業者が提供する安価なモバイルインターネットが利用できるという理由から、ジンバブエとモザンビークの国境沿いの町・チマニマニがリモートワークの拠点に生まれ変わっていると、海外メディアのRest of Worldが報じています。

Black market SIM cards turned a Zimbabwean border town into a remote work hub - Rest of World
https://restofworld.org/2022/black-market-sim-cards-zimbabwe-border-work-hub/

インターネットアクセスの擁護団体であるAlliance for Affordable Internet(AAI)調査結果によると、ジンバブエは国民の平均収入と比較して、モバイルインターネットの価格が最も高価な国の1つだとのこと。AAIは妥当な通信料として「1GBの通信料が国民の平均月収の2%」という基準を定めていますが、ジンバブエ最大の通信事業者であるEcoNetが販売するプランは、1.4GBのデータ通信量で2000ジンバブエドル(約1900円)というAAIが定める基準の2倍以上の額となっています。また、ジンバブエで2番目に大きな通信事業者のNetOneは、2022年2月にデータ通信料を最大600%引き上げると発表し、世間の大反対を受けて決定を覆したこともありました。

ジンバブエにおけるデータ通信料が高い理由には、通信事業を運営するために必要な通信機器の輸入関税の割高さにくわえて、外貨リスクや脆弱なインフラといった問題から、通信事業者間の競争が起きにくいことが挙げられます。ジンバブエの電気通信規制当局によると、2020年末の時点で国内の市場シェアは94.5%が前述したEcoNetとNetOneに占められていたそうです。

チマニマニの小売センターで都市間の商品輸送の仕事をしているNever Mtisi氏は、急速に変化することがあるジンバブエ国内の卸売価格を知るため、WhatsAppの取引業者グループに参加していますが、ここで問題となるのがジンバブエの高額なデータ通信料です。「ジンバブエのデータ通信料は狂っています。まるでジンバブエが自国民のオンライン化を望んでいないみたいです」とMtisi氏は述べています。

ところが、モザンビークとの国境沿いにあるチマニマニでは、データ通信料を安く抑える「抜け道」が存在します。それが、モザンビーク最大の通信事業者であるMovitelのSIMカードを闇市場で入手し、モザンビークから丘陵地帯を越えて届く電波を拾ってインターネットにアクセスするという手段です。Movitelの通信プランは2GBのデータ通信料がわずか200メティカル(約380円)とのことで、ジンバブエ国内の通信事業者よりはるかに格安でインターネットを利用できます。


チマニマニのトレーダーは徒歩やバイクでモザンビークとの国境を越え、MovitelのSIMカードを大量に購入してチマニマニへ戻り、50%ほど利益を上乗せしてスーパーマーケットや商店で販売するとのこと。チマニマニ中心部のキオスクのオーナーであるLevy Manjeni氏は、「MovitelのSIMカードはパンのように好調に売れています。ほとんどの買い物客はジンバブエのEcoNetやNetOneのSIMカードを無視しています」と話しました。

首都のハラレに拠点を置く環境保護団体のEnvironmental Buddiesに勤めるLuke Doda氏は、仕事においてZoomやWhatsApp、Skype、電子会議などが必要であることから、チマニマニでMovitelのSIMカードを利用しているとのこと。他にも、孤児に無料の数学レッスンを提供するOrphans DreamsというNGO団体の創設者・Nollen Singo氏も、チマニマニで利用できる安価なインターネットの恩恵を受けていると述べています。

Doda氏やSingo氏はチマニマニで事業を行っていますが、中には安価なインターネット通信を求めてチマニマニへ引っ越してくる人々もいます。漢方薬事業を営むTatenda Moyo氏はもともとハラレに住んでいたものの、安価なインターネット通信を求めて2019年5月にチマニマニへ引っ越したそうで、「チマニマニに到着して最初にしたことは、ジンバブエのEcoNetのSIMカードを捨て、モザンビークのMovitelのSIMカードを入手することでした」とコメント。漢方薬事業では、500km離れた診療所の医師に処方箋を指示するといった場面もあるため、ZoomやWhatsAppを使用してのやり取りが必要だとのこと。

Rest of Worldは、「より安価なデータ通信が可能となったことで、チマニマニはあり得そうになかったリモートワークの拠点にさえなっています」と指摘。この影響でチマニマニは、アフリカの他の農村と違って若い労働者が多いと述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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