サイエンス

睡眠・運動・食事の「小さな改善」を組み合わせると寿命と健康寿命が大きく延びる可能性がある


睡眠・運動・食事はそれぞれ健康に関わる要素として語られがちですが、現実の生活では「眠れないと食べ方が崩れる」「眠くて運動できない日が続く」といった形で相互に影響します。オーストラリア・シドニー大学の研究チームが睡眠・身体活動・食事の3つの要素をまとめて少しずつ改善したときに寿命と健康寿命がどの程度伸びるのかをUK Biobankのデータから推定した結果、3つの要素をただ合算した以上の効果が出る可能性があることが判明しました。

Minimum combined sleep, physical activity, and nutrition variations associated with lifeSPAN and healthSPAN improvements: a population cohort study - eClinicalMedicine
https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(25)00676-5/fulltext

Tiny improvements in sleep, nutrition and exercise could significantly extend lifespan, study suggests | Live Science
https://www.livescience.com/health/tiny-improvements-in-sleep-nutrition-and-exercise-could-significantly-extend-lifespan-study-suggests

シドニー大学チャールズ・パーキンス・センターに所属する管理栄養士であるニコラス・コーメル氏やエマニュエル・スタマタキス氏らの研究チームが注目したのは、「睡眠時間」、速歩きや階段を上るといった中強度以上の運動に相当する「MVPA」、食事の質を表すスコアである「Diet Quality Score」という3つの要素です。睡眠と運動は参加者にリストバンド型の加速度計を7日間装着して測定し、食事の質は質問票から点数化しました。


研究チームはこれらの要素をイギリスで実施されている大規模な長期追跡研究のためのデータ基盤であるUK Biobankの約5万9000人の追跡データと結び付け、生活習慣の組み合わせごとに寿命や健康寿命がどれくらい変わるかを推定しています。

この研究のポイントは、3つの要素を「別々に」ではなく「組み合わせ」として扱っている点です。研究チームは、睡眠・中強度以上の運動・食事の質のそれぞれを低/中/高の範囲に分け、27通りの組み合わせで比較しました。すると、「睡眠が7時間~8時間程度で、中強度以上の運動が多く、食事の質も高い」という組み合わせが最も寿命と健康寿命の延び幅が大きくなる傾向が見えたとのことです。


コーメル氏は「複数の行動をまとめて少し変えると合算以上の違いが出る可能性がある」と述べています。たとえば睡眠だけで寿命を1年間分押し上げようとするとより大きな睡眠増加が必要になる一方で、運動と食事の質もまとめて少し改善すると必要量が小さくなるという考え方です。

下のグラフAは「SPAN Score」と「寿命が何年延びる可能性があるか」の関連を示したグラフです。横軸の「SPAN Score」は睡眠・中強度以上の運動(MVPA)・食事の質(DQS)をまとめて0〜100点で表す生活習慣の総合指標。3つの要素は同じ重みで扱われ、点が高いほど望ましい状態に近いと解釈されます。なお、睡眠は短すぎても長すぎてもリスクが上がる可能性があるため、死亡リスクとの関係が最も低くなる点が7.5時間付近になるように点数化したと研究チームは説明しています。グラフB、グラフC、グラフDはそれぞれ睡眠時間、MVPA、食事の質と「寿命が何年延びる可能性があるか」との関連を示すグラフ。グラフBの横軸が睡眠時間、グラフCの横軸がMVPA、グラフDの横軸が食事の質を表しており、縦軸は全グラフ共通で「寿命が何年延びる可能性があるか」を示しています。


研究チームは、睡眠・運動・食事の質を全部いきなり大きく変えることが難しい点を踏まえ、3つの要素を同時に「ほんの少しだけ」改善した場合に、慢性疾患のない健康寿命がどれくらい延びるかを推定しました。その結果、生活習慣が特に悪い層(睡眠・中強度以上の運動・食事の質がいずれも下位にある層)を基準にすると、睡眠を1日あたり5分間増やし、中強度以上の運動を約2分間増やし、食事の質をわずかに上げる(野菜を増やすなど)といった「小さな改善のセット」でも、推定上は健康寿命が約1年間分延びる可能性があると研究チームは説明しています。

下のグラフはSPAN Score、睡眠、MVPA、食事の質のそれぞれの指標と、「健康寿命がどれくらい延びるか」の関連を表したものです。グラフの横軸がそれぞれの指標、縦軸が「健康寿命が延びる可能性のある年数」を示しています。


一方で、この研究は参加者に睡眠や運動、食事の質を実際に変えさせて効果を測ったものではなく、UK Biobankのデータから「生活習慣が良い人ほど寿命や健康寿命が長い傾向があるか」を統計モデルで推定した解析です。そのため、差が見えても生活習慣の改善が直接の原因とまでは断定できません。

この研究について科学系メディアのLive Scienceは「睡眠と運動が7日間程度の計測であること」「食事が特定のタイミングでの評価であり長期の変化を追っていないこと」「「測定していない要因(たとえば所得や住環境など)が結果に影響した可能性があること」を指摘しており、ケンブリッジ大学の統計学者スティーブン・バージェス氏は「この研究単体では因果を証明できない」とコメントしています。

それでも、睡眠・運動・食事を完璧に改善する前に、まずは小さく改善してまとめて底上げするという考え方は、多くの人にとって取り入れやすい方向性かもしれません。研究チームは、睡眠・運動・食事を別々に語るのではなく3つの要素をセットで底上げする考え方を取り入れた指針につなげられる可能性があるとし、臨床や公衆衛生の場でどう活用できるかは追加研究が必要だとまとめています。

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in サイエンス, Posted by log1b_ok

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