ドナルド・トランプを大統領に押し上げたフェイクニュースネットワーク運営者「ハッカーX」が雇用主を明かす
「2016年のアメリカ大統領選に際してドナルド・トランプ氏を大統領に押し上げるために対立候補をおとしめるようなフェイクニュースを大規模に展開する作戦を実行していた」と告白した「ハッカーX」ことロバート・ウィリス氏が新たに代替医療・疑似科学・極右過激主義を奨励するウェブサイト「Natural News」に雇用されていたと明かしました。
Statement: 10/18/21 – @rej_ex
https://robertwillishacking.com/statement-10-18-21/
Disinformation guru “Hacker X” names his employer: NaturalNews.com | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2021/10/disinformation-guru-hacker-x-names-his-employer-naturalnews-com/
ウィリス氏は、2021年10月14日に「ドナルド・トランプ候補を大統領に押し上げるためにフェイクニュースサイトを作成した」とIT系ニュースサイトのArs Technicaに告白した人物。ウィリス氏はホワイトハウスの元最高情報責任者でサイバーセキュリティの専門家であるテレサ・ペイトン氏が2020年に出版した著書にも登場しており、その際には氏名を秘匿するために、「ハッカーX」という通称を用いていましたが、手口などの詳細を明かす際に氏名などを公表しました。
ウィリス氏がどのようにしてフェイクニュースサイトを作成する仕事に携わったのかや、2016年のアメリカ大統領選に際してどのような作戦を展開していたかは以下の記事で詳しく報じています。
ドナルド・トランプを大統領にしたフェイクニュースネットワークの運営者「ハッカーX」はなぜ今自分の正体を明かしたのか? - GIGAZINE
by Gage Skidmore
そんなウィリス氏が2021年10月18日付けのブログ投稿で告白したところによると、同氏は代替医療・疑似科学・極右過激主義などの記事で知られたウェブサイト「Natural News」に雇用されていたとのこと。ウィリス氏はArs Technicaの取材に応じる際に法的問題を回避するために雇用者の氏名については秘匿することを条件としていましたが、「当該記事のコメント欄を見て、『名前を出さないことでフェイクニュース運営組織を守ったのでは』と多くの人が考えたことに気づきました」とのことで、ユーザーの声を受けて改めて雇用者を明かす決断をしたそうです。
Natural Newsはさまざまなフッ素含有飲料水・制汗剤・洗濯用洗剤・グルタミン酸ナトリウム・アスパルテーム・ワクチン・遺伝子組み換え作物の危険性を主張したり、エボラ出血熱に対するホメオパシー療法を推奨したり、HIVに対する抗レトロウイルス薬の有効性や糖尿病に対するインスリンの有効性を否定したりといった、代替医療・疑似科学を奨励するウェブサイトの中でも最も悪名高いウェブサイトです。創設者のマイケル・アレン・アダムズ氏も疑似科学信者で陰謀論を支持していることで有名ですが、ウィリス氏は被雇用時にはアダムズ氏について一切知らなかったものの、「Natural Newsが報じていたナチュラルヘルス系の記事はYahoo Newsで見知っていた」とのこと。
ウィリス氏は自身が携わったフェイクニュースサイト運営事業について、「報じていた記事がフェイクニュースだという自覚はなかった」とのこと。ウィリス氏によると、あくまで自分の脳内のことなので証明は一切できないものの、当時気にしていたのはアクセス数のみであり、記事が真実かどうかは一切気にしていなかったそうです。ウィリス氏は「記事がフェイクだというと私が馬鹿みたいに見えますが、事実です」「『お尻の大きい女性は頭がいい』といった記事に人気があったのは覚えていますが、これはエンターテインメント的な記事で、(フェイクニュースであるというよりは)こんなものを信じる人はいないだろうと考えていました」と語っています。
ウィリス氏は、「ドナルド・トランプ氏の大統領選勝利には、自身が関与したNatural Newsのフェイクニュースサイト運営事業が貢献した」と再三主張しており、ロシアを筆頭に国外勢力がフェイクニュースを作成していたといった説については、「(同氏が見る限りでは)なかったと思う」とコメントしています。
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