Twitterが5000以上ものボットアカウントを「デマを拡散した」として凍結、謎の「親トランプ」ネットワークの存在が浮き彫りに
by Gage Skidmore
2016年に行われたアメリカ大統領選にロシアが介入したという「ロシアゲート疑惑」について、ロバート・モラー元FBI長官が2019年3月に報告書を提出し、同年4月18日に報告書の一部が公表されました。そんな中、「Twitter上で報告書を否定するツイートを拡散していた5000以上のボットアカウントが一斉に凍結された」と海外メディアのArsTechnicaが報じています。
Twitter shuts down 5,000 pro-Trump bots retweeting anti-Mueller report invective | Ars Technica
https://arstechnica.com/information-technology/2019/04/twitter-shuts-down-network-of-5000-possibly-saudi-pro-trump-bots/
モラー氏の報告書は機密扱いで2019年3月に提出され、2019年4月18日に編集版が公表されました。その報告書の大部分は黒塗りで、内容の詳細についてはわからない部分も多くあるものの、報告書の中でモラー氏は「大統領が不正行為に関わったことを結論づけるものではないが、容疑を完全に晴らすものではない」と述べています。
ロシア疑惑めぐるモラー報告書が公開、民主党議員らは議会証言を要請 - CNET Japan
https://japan.cnet.com/article/35136010/
トランプ大統領は報告書の一部公開を受けてTwitter上で怒りをあらわにし、「報告書はトランプ嫌いである13人の怒れる民主党議員によって書かれたものだ」と内容を否定しました
Despite the fact that the Mueller Report should not have been authorized in the first place & was written as nastily as possible by 13 (18) Angry Democrats who were true Trump Haters, including highly conflicted Bob Mueller himself, the end result is No Collusion, No Obstruction!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年4月20日
対して民主党の次期大統領候補であるエリザベス・ウォーレン氏は、「これは不名誉な話です。ロバート・モラー氏は議会で公に証言すべきです」とツイートしました。
This is a disgrace. The American people deserve answers—and Special Counsel Robert Mueller should testify publicly before Congress. #ReleaseTheFullReport pic.twitter.com/ROG0Bt6JVq
— Elizabeth Warren (@ewarren) 2019年4月18日
そんな中、Twitterは、モラー氏の報告書を非難するようなツイートを拡散する5000以上のアカウントを凍結しました。凍結されたアカウントのほとんどが投稿数が3件ほどと少なく、ボットであったとみられています。
シンクタンクのForeign Policy Research Instituteの研究員であるクリント・ワッツ氏とCNBCによる共同調査では、凍結されたボットアカウントが、@TheGlobusというアカウントからリツイートする形でロシアゲート疑惑否定論を展開していたことが判明しました。つまり、今回凍結されたボットアカウントは、@TheGlobusを中心とした巨大な親トランプネットワークを形成していたというわけです。
記事作成時点で凍結されている@TheGlobusは、かつて「Arabian Veritas」という中東のニュースサイトの公式アカウントとして存在していましたが、いつの間にか「The Globus」に名前が変更されていたとのこと。プロフィールにはThe GlobusというニュースサイトのURLが書かれていますが、theglobus.netはコンテンツが何もない空っぽの状態になっています。
ArsTechnicaの調査によると、@TheGlobusは2017年10月に登録され、2019年3月から更新を行っていたそうです。Internet Archivesにある2019年4月20日のスナップショットによると、ツイートしていたのはサウジアラビアやエジプト政府についての肯定的なメッセージ、イランとトルコに対する否定的な記事、モラー氏の報告書についてまとめた一連のニュースだったとのこと。ツイート数は126件のみでしたが、フォロワー数は2万1200人ほどで、そのうち少なくとも5000人が今回凍結されたボットだった模様。
ワッツ氏はArsTechnicaとの電話インタビューで「反ロシアゲートのキャンペーンは本当に大ざっぱなもので、ハッシュタグをつけて可視化することを狙っていた」と答えています。#RussiaGateなどのハッシュタグは、保守系政治評論家で知られるショーン・ハニティー氏をはじめとするトランプ大統領支持者によって、大統領を支持するツイートやモラー報告書を非難するようなツイートにしばしば使われていたとのこと。
ArsTechnicaの質問に対してTwitterの広報担当者は「Twitterの規約に違反しているため、アカウントのネットワークとそれに関わる他のネットワークを凍結しました」とコメントし、陰謀論やフェイクニュースの拡散を理由にボットネットワークをまるごと凍結したことを明かしました。しかし、ボットによる親トランプネットワークは機能しなくなったものの、ロシアゲート疑惑を否定するアカウントネットワークの背後に誰がいるのかはまだわかっていない、とArsTechnicaは述べました。
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