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反ワクチンになりがちな陰謀論者も「友人や家族がワクチンを支持していると自分も接種する可能性が高い」との研究結果


陰謀論者の人々は、世の中の出来事や状況について「裏側に何か強大な組織や謀略が存在している」と信じてしまう傾向を持っており、反ワクチン(ワクチン忌避)に陥りやすいことが知られています。ところが新たに発表された論文では、「反ワクチンに傾倒しがちな陰謀論者の人々でも、友人や家族がワクチンを支持していると自分もワクチンを受け入れやすい」との研究結果が示されました。

Pro‐vaccination subjective norms moderate the relationship between conspiracy mentality and vaccination intentions - Winter - - British Journal of Health Psychology - Wiley Online Library
https://bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/bjhp.12550


People with a conspiracy mindset are no less likely to accept vaccines — so long as their friends accept them, too
https://www.psypost.org/2021/08/people-with-a-conspiracy-mindset-are-no-less-likely-to-accept-vaccines-so-long-as-their-friends-accept-them-too-61640

Friends of Conspiracy Theorists May Help Reduce Vaccine Hesitancy, Study Shows
https://www.sciencealert.com/friends-of-conspiracy-theorists-can-make-a-difference-to-vaccine-hesitancy

主流の見解とは違う考えを持っている陰謀論者の人々は、一般的に受け入れられているワクチン接種にも反対する傾向が強いことが過去の研究で示されています。ワクチン接種をしない人が多いほどウイルスが流行する余地が残るため、反ワクチンは公衆衛生上の脅威と捉えられており、2019年にはWHOが「世界の健康に対する10の脅威」に反ワクチンをリストアップしました。

そして、2020年から世界を襲っている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、反ワクチンによる悪影響を浮き彫りにしています。各国は「ワクチン接種を行った人に現金や景品を与えるサービス」などを展開し、ワクチン接種率を増加させるための努力を重ねていますが、「現金配布や宝くじに接種率向上の効果はほとんどない」との研究結果も報告されています。

ドイツ・テュービンゲン大学のポスドク研究員であるKevin Winter氏らの研究チームは、ワクチン接種に対する陰謀論者の姿勢に周囲の人々が及ぼす影響を調べる実験を行いました。Winter氏は、「このトピックについてさらなる研究を行い、陰謀論への信念に根ざしたワクチン忌避に介入する潜在的な出発点を見つける必要があるのは明らかでした」と述べています。

研究チームは、「人間は社会的な動物であり、友人や家族など親しい他者の信念や態度に自分の認識が大きく左右されます。これらの認識はしばしば『主観的規範』と呼ばれます」と指摘。主観的規範は必ずしも社会全体の規範と一致するわけではないため、社会的に主流の見解を拒否する陰謀論者であっても、主観的な規範は受け入れる可能性があるとの仮説を基に実験を行いました。


研究チームは5つの実験で、「ワクチン接種をためらっているものの、完全にワクチン接種を拒否しているわけではない」という被験者を合計1280人集めました。それぞれの研究では被験者に対し、「外国への渡航に必要なワクチン」「子どもをB型肝炎から守るためのワクチン」「自分の身を守るためのインフルエンザワクチン」「ダニ媒介性脳炎から自分を守るワクチン」「COVID-19のワクチン」などの異なるワクチンについて、どれほど接種する意思があるかどうかを尋ねました。

また、研究チームは被験者に「自分が大切に思っている人がワクチン接種を支持すると思うかどうか」を質問したほか、陰謀論を信じる傾向がどれほどあるのかも測定しました。なお、今回の実験を行った時点では、まだCOVID-19ワクチンは利用可能になっていなかったとのこと。


実験結果を分析した結果、陰謀論者の傾向が低い人ほどワクチン接種を受け入れる傾向が強く、陰謀論を信じている人ほどワクチンを忌避する傾向が確認されました。しかし、「大切に思っている人がワクチンを支持している」と被験者が認識している場合は、陰謀論者の傾向が強くてもワクチン接種を受け入れやすいことが判明しました。

Winter氏は、「私たちの論文の中心的なポイントは、陰謀論の影響を受けやすいことは予防接種を受ける意思の低下と無条件に関連しているわけではないという点です。重要な要素は、『他の人がワクチン接種についてどう考えているのか』という点です」「私たちの調査結果は、友人や家族が予防接種を承認すると、陰謀論への信念が予防接種の意思を予測する役割を果たさなくなったことを示唆しています」と述べています。


今回の研究結果は、陰謀論に傾倒している人にワクチン接種を受けさせたい場合、その人が信じる陰謀を否定して説得しようとするのではなく、友人や家族などの親しい人々がワクチンへの支持を表明することで十分かもしれないと示唆しています。

しかし、今回の研究はあくまで相関関係を見つけただけであり、「陰謀論者との会話を変えるとワクチン接種を受け入れる傾向が強まる」と証明されたわけではありません。また、研究対象となったのは「ワクチン接種をためらっている人」であり、「完全にワクチンを拒絶している人」は被験者に含まれていません。そのため、本当に根強くワクチンを拒否している人には、今回の調査結果が当てはまらない可能性もあるとのことです。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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