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発展途上国にもワクチンを行き渡らせる3つの方法とは?


記事作成時点では多くの国々で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が開始されていますが、ワクチン接種の進み具合は国によって大きな差が存在し、特に低・中所得国家でのワクチン接種率が低いのが現状です。そこで、オーストラリアの医学研究所であるバーネット研究所で疫学教授を務めるマイケル・トゥール氏が、「発展途上国にもワクチンを行き渡らせる3つの方法」について解説しています。

3 ways to vaccinate the world and make sure everyone benefits, rich and poor
https://theconversation.com/3-ways-to-vaccinate-the-world-and-make-sure-everyone-benefits-rich-and-poor-155943

イギリスの週刊新聞「エコノミスト」の調査部門であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニット推計によると、ヨーロッパを中心とした多くの高所得国家は2021年中にほぼ全国民へのワクチン接種が完了するとのこと。一方で中国や日本、韓国、オーストラリアといったアジア・オセアニア諸国や中所得国家では2022年までかかるほか、一部の低所得国家では2023年までかかるとみられています。

トゥール氏はワクチン接種の不平等が道徳的な問題を引き起こすだけでなく、世界的な健康・社会・経済問題を永続させると指摘。トゥール氏が主張する「ワクチン接種の不公平がもたらす問題」は以下の通り。

・1:ワクチン接種の遅れにより、本来は救えたはずの命が失われてしまう。
・2:ウイルスの流行を抑えるまでに時間がかかるほどウイルスはより多く変異し、ワクチンの有効性を低下させる可能性がある。
・3:パンデミックが終息していない地域があると貿易やサプライチェーンが混乱し、人の往来も減ってしまう。

ほとんどの国ではワクチン接種が行われていても、ワクチン接種を済んでいない国が「SARS-CoV-2変異株の繁殖地」となって他の国にもワクチンが効かない変異株をばらまく危険があるため、全世界を安全に保つにはあらゆる国の人がワクチン接種を受けるべきだと指摘されています。

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そこでトゥール氏は、以下の「世界的なワクチンの公平性を確保する3つの方法」を提唱し、先進国が率先して発展途上国のサポートを行うべきだと主張しています。

◆1:公平なワクチンへのアクセスを目指す「COVAX」の取り組みに協力する
COVAX」とは「COVID-19 Vaccines Global Access(COVID-19ワクチンの全世界アクセス)」の略称であり、世界保健機関(WHO)や感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)などが主導する、COVID-19ワクチンを発展途上国で展開する取り組みです。COVAXは2020年に複数メーカーとの交渉を完了しており、2021年末までに合計20億回分のワクチンを発展途上国に配布する予定だとのこと。

しかし、COVAXの取り組みにも限界があり、20億回分のワクチンを配布対象となる92カ国で分配した場合、1カ国に配布されるワクチンはその国の人口の20%以下になります。さらに、生産設備を保有する先進国で生産遅延が発生したり配送が滞ったりした場合、発展途上国でのワクチン接種に遅れが出るということも考えられます。こうした事態への対策のため、2021年2月にはWHOのテドロス・アダノム事務局長が、先進国がメーカーに追加発注するなどしてCOVAXの取り組みが損なわれることがないように要請しました。


◆2:低・中所得国家が独自のワクチン開発を行う
ワクチンは必ずしも先進国だけで製造されているのではなく、一部の発展途上国ではワクチンの国内製造を試みています。インドの医薬品メーカーであるセラム・インスティテュート・オブ・インディアはアストラゼネカが開発したCOVID-19ワクチンを製造しており、かつてはCOVAXに参加して他国への輸出にも意欲的でした。ところが記事作成時点では、インド国内の感染爆発を背景に輸出停止を余儀なくされています

また、キューバでは5種類もの国産ワクチンが開発中であり、すでに臨床試験の最終段階に入ったものもあるとのこと。順調に開発が進んだ場合、8月までに全国民の60%にワクチン接種を行う予定であり、中南米諸国も治験への協力や購入を申し出ているとのことです。他にはタイベトナムでもワクチン開発が進められているなど、発展途上国におけるワクチン開発にも望みがあるとトゥール氏は指摘しています。

◆3:先進国がワクチンを寄付する
COVAXの取り組みにも共通する考えですが、先進国は発展途上国にワクチンを寄付することができます。2月にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領が欧米諸国に対して「それぞれが確保した新型コロナウイルスのワクチンの最大5%を発展途上国に届ける」ことを呼びかけたほか、すでに独自のワクチン接種を進めているロシアや中国は、アフリカや中東、南米の発展途上国に自国製ワクチンの提供を行っています。


トゥール氏は、「世界の富裕層と貧困層との間に生じると予測されるワクチン接種の2年間のズレは道徳的に受け入れられず、世界の健康と経済回復における最大の障害です」と述べ、先進国主導の公平なワクチン配布の重要性を訴えました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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