メモ

「誤情報コントロールの達人」としてインドネシア政府から信頼されるエンジニアの話


誤情報は国や社会を分断しており、実際に無実の人々が殺される事態にも発展していることから、各国政府は誤情報のコントロールに取り組んでいます。インドネシア政府も「誤情報コントロールの達人」と呼ばれるあるエンジニアに全幅の信頼を置いているのですが、このエンジニアの「立場の危うさ」についても指摘されています。

How one coder became Indonesia’s misinformation guru - Rest of World
https://restofworld.org/2021/drone-emprit/

インドネシア在住のIsmail Fahmi(イスマイル・ファーミ)氏は、インドネシアにおいて「誤情報を暴くエンジニア」として有名な人物。ファーミ氏が名を知られるようになったのは、2016年、インドネシアの政治家だったバスキ・プルナマ氏がイスラム教を冒瀆(ぼうとく)したとして、20万人規模のデモが発生したときでした。

ファーミ氏が2日間にわたってデモ関連のキーワードをソーシャルメディア上で追跡していたところ、「死」というキーワードが繰り返し出現するようになったことを発見。ファーミ氏が調査・分析したところ、デモの日に起こった、デモとは全く関係のない2人の死亡記事が「PojokSatu.id」というウェブサイトに投稿され、ボットネットを通じてソーシャルメディア上で拡散されていっていることが判明しました。「誤情報であるのは明らかだった」として、この事実をファーミ氏はFacebookで報告したとのこと。

写真の人物がファーミ氏。


すると翌月、ファーミ氏はインドネシアの通信情報技術省から呼び出され、「政府が秘密裏に中国人労働者を何百万人も雇っている」とする誤情報の出どころがどこかを割り出すことを求められました。ファーミ氏はデモの時と同様に出どころとなるニュースサイトを特定し、政府はそのウェブサイトをすぐにブロックしました。一連の出来事から、ファーミ氏は「ソーシャルメディアのマッピングツールによって生成されたデータを利用して誤情報と戦う人物」として有名になったそうです。

ファーミ氏はプロプライエタリソフトウェアである独自ソフト「Media Kernels」を使って上記のようにソーシャルメディアを監視し誤情報を暴く「デバンキングプロジェクト」を行っているほか、学術機関やNGOに無料でツールを提供したり、Media Kernelsによるメディア監視サービスをマーケティングツールとして有料で販売したりしているとのこと。

オーストラリア国立大学の研究者であるロス・タプセル氏はファーミ氏について「彼はこの分野のパイオニアです。これはビッグデータ分析を利用した新しい研究分野なので、ファーミ氏は国内外から需要があります」と述べています。

ファーミ氏は公共のためのメディア監視ツールを「Drone Emprit」と名付けており、営利目的で販売する商用ツールと分けています。もともとファーミ氏は「Googleはどのようにニュースを集めているのか?」という興味から、Googleと同様の方法でインドネシアのウェブサイトからニュースを収集するクローラを作成したとのこと。これがDrone Empritで最も有名な「ソーシャル・ネットワーク分析(SNA)マップ」の前身となったそうです。SNAマップはTwitterなどのリツイートやメンションを、ソースから放射状に広げる形で可視化するもの。またSNAマップは機械学習を利用して、SNSの反応を喜び・信頼・恐れ・怒り・期待・驚き・悲しみ・不信といったカテゴリに分類するとのこと。


Media Kernelsと同様にメディア分析サービスを提供するテクノロジー企業・NoLimit IndonesiaのCEOであるアクサス・ラシード・ナラディパ氏は、SNAマップはファーミ氏が作ったシステムにおける最も重要な部分だと語りつつも、「マーケティングツールとしては競争力が低い」と主張しています。また同様の視覚化ツールを提供するMapimizeのピーター・ヴィンセントCEOは、ファーミ氏のシステムが情報を視覚化するものの、システムは自動的に分析を行ってくれるわけでなく、パターンを見つけ出す行為自体は人間が行わなければならないことを指摘しています。

ファーミ氏はDrone Empritによって可視化を行い、自ら誤情報を暴くデバンキングプロジェクトを実行していますが、同時にメディアに対して有料でマーケティングサービス提供も行っています。この中で、サービスを使うクライアントが誤情報を発信しているケースもあり、実際にファーミ氏が誤情報を暴いたことが理由で顧客を失ったこともあるそうです。政府と連携するファーミ氏の役割が重要であることには疑いの余地がありませんが、一方でファーミ氏が政府の意向で誤情報を暴くターゲットをコントロールできることについて、専門家からは懸念の声が挙がっています。ファーミ氏は利害関係の境界線上でバランスをとっている状態であるためです。

ファーミ氏によると、Drone Empritのモットーは「中立を主張せず、真実を主張する」とのこと。「私はデータのプロです。データを示します。私は中立ではありませんし、中立にはなれません。データの側につかなければならないからです。しかし、ありのままを伝えようとしています。真実であるということは、正直であることです。私は正直であろうとしています」とファーミ氏は語りました。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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