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ウェブの父ティム・バーナーズ=リーが「ウェブが武器にならないようにテック企業を規制する」必要性を語る

By Kristina D.C. Hoeppner

現代のインターネット社会の礎を築いたイギリス人のティム・バーナーズ=リー氏が、TwitterやFacebookなどネット上の巨大企業にネットの世界が集中することで生じる弊害について述べ、ウェブの可能性を狭めないために何らかの取り組みが行われる必要性を論じています。

Tim Berners-Lee: we must regulate tech firms to prevent 'weaponised' web | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2018/mar/11/tim-berners-lee-tech-companies-regulations

バーナーズ=リー氏はウェブ誕生から29年を迎えるにあたって公開した公開書簡の中で、「近年、ソーシャルメディア上で話題を集めている陰謀論や、TwitterやFacebookなどに行けるフェイクアカウントが社会的緊張を助長する状況、外部の人間による選挙への関与、そして膨大な量の個人情報が盗まれるという状況が存在します」と述べ、ウェブにまつわる問題が存在することを挙げています。

これらの問題の背景には、FacebookやGoogle、Twitterなどの「どの考え方や意見を見せ、シェアされるかをコントロールする」いくつかのプラットフォームが存在するからだとするバーナーズ=リー氏は、現在のウェブの状況について「かつては豊富なブログやウェブサイトのよりすぐりだったものが、いくつかの独占的なプラットフォームによる力によって圧縮されてしまいました」と見方を示しています。

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バーナーズ=リー氏はまた、これらのプラットフォームが小さな競合他者を買収することで新しいイノベーション技術を吸収し、業界の優れた才能を次々と囲い入れることで、他者の追随を許さない「独り勝ち」の状態が生まれてしまっていると述べています。

事実、記事作成時点では世界中のウェブ検索の87%がGoogleで行われています。また、Facebookは22億人という月間アクティブユーザー数を誇っており、これはかつて興隆を見せたMySpaceのピーク時の20倍にも匹敵する規模です。また、YouTubeやInstagramといった関連企業をひっくるめると、全世界のデジタル広告のうち実に60%がGoogleとFacebookによって運用されているという実績もあるとのこと。またバーナーズ=リー氏によると、この点に関してはGoogleもFacebookも問題を把握してはいるとのことですが、その問題解決のために行っている取り組みはあくまで「企業としての収益を最大化するためであり、社会を良くするためではない」とも語っています。

バーナーズ=リー氏はこのような問題を解決するためには「法律か、規制のフレームワークが緊張を緩和する手助けになる」と考えているとのこと。技術側に対するインセンティブ(動機)と、ユーザーや社会に対するインセンティブを大きな規模で合致させることには、ビジネスの世界や政治、市民社会、学問の世界、そして芸術分野など幅広い多様性を持つ人々のグループからの助言が必要になるだろうとバーナーズ=リー氏は考えています。

またバーナーズ=リー氏は、「2つの神話」にも注意するように述べています。2つの神話とは「オンライン企業にとって唯一のビジネスモデルは広告である」ということと、「プラットフォームの運営の仕方を変えるには遅すぎる」というものだとのこと。これらの「神話」を人々が受け入れてしまうことで改善のための想像力が限定されてしまうため、その神話に惑わされずに人々が知恵を出し合うことが重要であると述べています。バーナーズ=リー氏はウェブの在り方について「ウェブは、我々の心の中にある恐怖を増幅したり『違い』を溝深くするのではなく、我々の希望が反映され、夢にあふれるものになって欲しい」と述べています。

くしくも2018年は、世界人口の半分がオンラインになると見られており、ますます多くの人がインターネットに「つながる」社会が構築されると考えられています。しかし、世界規模でオンライン化が進むと、逆にそのメリットを享受できない人との隔たり「デジタル・デバイド」が生じてきます。バーナーズ=リー氏はこの点について、「今日、インターネットにつながらないことは、学習や就業、さまざまな価値のあるサービス、そして民主的な議論に参加することから除外されてしまうことを意味します。もしこの隔たりをなくすために真剣に取り組まないでいると、最後の10億人がウェブにつながるのは2042年のこととなってしまうでしょう。その人たちは、他の人たちに比べて完全に『一世代遅れ』でウェブの世界に入ることになります」と警鐘を鳴らしています。2016年、国連は「インターネットにつながること」はきれいな水や住居、食糧、電力といった基本的な要素と同等の基本的人権の一つであると宣言しました。しかし今でもなお、インターネットにつなげることが非常に高価な場所も世界各地には存在しています。

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2016年のアメリカ大統領選挙では、いわゆる「フェイクニュース」がFacebookなどのSNS上で横行し、各SNSプラットフォームはロシアを発信源とする広告を多く掲載することで多くの広告収入を得ていたと非難されています。この指摘を受けたSNS各社は問題点を把握し、政治的広告が一体誰によって出稿されているのかについての透明性を高める取り組みを進めることを発表しています。

バーナーズ=リー氏はこれまでも、自身が創造に携わったウェブは良きにつけ悪しきにつけ、「人間」そのものが反映されたものであると述べてきました。しかし、ごく限られたプラットフォームによってその世界が狭められてしまうのは、バーナーズ=リー氏が掲げる「誰でも情報を交換でき、地理的障壁に関係なく誰もが機会と協力を与えられるオープンなプラットフォーム」の実現を難しくするものとなりかねません。2017年11月のインタビューでバーナーズ=リー氏は、私は今でも楽観主義者ですが、実際には丘の上に立ってひどい嵐を受けながら、フェンスに必死にしがみついた状態の楽観主義者です」「私たちは歯を食いしばり、このフェンスにしがみつくことで、ウェブは素晴らしいものをもたらしてくれるということが『当たり前ではない』ことをかみしめなければなりません」と語っていました。

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in メモ, Posted by logx_tm