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地下で何カ月も一人で過ごすと人間の「時間」はどのように歪んでいくのかを自己実験した結果とは


日の光が届かない場所に時計を持たず長時間滞在すると、人は時間の感覚を失ってしまいます。1962年、たった一人で地下の洞窟に潜り63日間を過ごした探検家、ミシェル・シフレ氏について、科学雑誌のNew Scientistが取り上げました。

Michel Siffre: This man spent months alone underground – and it warped his mind | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/mg23931900-400-this-man-spent-months-alone-underground-and-it-warped-his-mind/

地質学者で探検家だったシフレ氏は、生涯で三度にわたり時間の感覚を喪失させる空間に長期滞在した経験を持ちます。一度目は1962年のことでした。


ユーリ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行士となって間もなかったこの頃、アメリカとソ連は長期宇宙滞在が宇宙飛行士に及ぼす影響を解明しようとしていました。人間は昼夜のない環境でも24時間周期の生活が可能だと推測されていましたが、実証はされていなかったのです。

当時23歳だったシフレ氏はこの課題へ興味を示し、地下130メートルの洞窟で長期滞在する実験を自ら敢行。当初は氷河研究のための探検として計画された試みは、時間に関する情報を一切持たずに生活する人間の反応を調べた最初の研究として知られるようになりました。


シフレ氏は地下空間にキャンプを設営し、63日間にわたり一人で生活しました。唯一の光は懐中電灯だけで、時間の経過を知らせるようなものは一切ありません。シフレ氏が外界と繋がる唯一の手段は地上のキャンプへ通じる電話回線でした。常に誰かが応答する体制が整えられており、シフレ氏は起床時と就寝前に電話をかけて脈拍や体温などの情報を伝えました。応答する地上の人たちには、時間の手がかりを一切与えないよう指示されていました。

シフレ氏によると、当時はシャルル・ド・ゴールの回顧録を読んで時間を過ごしていたとのこと。「孤独ではなかったのか?」という問いに「そうでもない。恋人が恋しかったけど」と答えるシフレ氏は、洞窟の中ではモチベーションにあふれていたと当時を振り返っています。

それでも肉体的には過酷な体験でした。洞窟内の気温は3度しかなく、テントの床には結露が溜まり、足は常に濡れて冷たかったそうです。さらに悪いことに頭上にある氷河から氷塊や岩塊が定期的に落下し、近くで轟音を立てて砕け散るため、恐怖に襲われたこともありました。あるときは恐ろしい落石を経験して10時間以上も電話を切らなかったといいます。


実験が終了したとき、日記を付けていたシフレ氏には予定より25日早く終わったという感覚があったとのこと。記録では、睡眠と覚醒の周期が24時間30分にまで長くなっていて、毎日少しずつ寝る時間と起きる時間が遅くなり、ついには夜行性になったことが示されていました。

実験後は「同じレコードを何度も繰り返し再生し、ついさっき聴いたばかりだということを忘れてしまう」といった一時的な後遺症はあったものの、精神は健在だったそうです。この実験を経験したシフレ氏は「脳は時間を把握しません。時間など存在しないからです。起きたことを書き留めなければ、すぐに忘れてしまうのです」と説明しました。

その後10年間、シフレ氏は他のボランティアが参加する実験を監督し、体内時計を48時間周期にまで延長できることを実証。1972年、シフレ氏は再び洞窟に乗り込みます。滞在期間は過去最長の6カ月でした。シフレ氏は頭皮と体に電極を貼り付け、毎日認知テストを行うなどして過ごしましたが、3カ月目に精神が疲弊し自ら電極を取り払ったそうです。それでも実験は諦めず、認知テストは継続。その後義務感にかられ再び電極を装着しましたが、それ以降は「洞窟が牢獄のよう」と感じられるようになり、洞窟で親しくなった小さなネズミがいなければ実験を完遂できなかったとシフレ氏は回想しました。

この実験でシフレ氏は二度にわたり体内時計を48時間周期にすることに成功したものの、うつ病を発症し、洞窟を離れた後も続きました。さらに資金が底をついて自己破産を経験し、妻とも破局しました。

2000年になって、77歳の宇宙飛行士ジョン・グレン氏が宇宙を飛行したニュースをきっかけに、60歳になったシフレ氏は再び洞窟に潜り、2カ月を過ごしました。シフレ氏はまたしても、時間の感覚が早まっているように感じたそうです。

晩年、シフレ氏は故郷のフランスで過ごし、2024年に亡くなりました。

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in メモ, Posted by log1p_kr

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