Discordの「成り立ち」「機能」「ユーザー層」を解説するとこうなる
コミュケーションアプリのDiscordはゲーマーや投資家などの幅広いユーザーに使われています。そんなDiscordの成り立ちや特徴について経済関連ニュースレター・Not Boringの執筆者であるパッキー・マコーミック氏が解説しています。
Discord: Imagine a Place - Not Boring by Packy McCormick
https://www.notboring.co/p/discord-imagine-a-place
◆Discordの成り立ち
Discordの創業者であるジェイソン・シトロン氏は、2008年にiPhone向けゲーム「Aurora Feint」を公開しました。Aurora Feintは中毒性が高いゲームとして一定の評価を得ましたが、爆発的なヒットを記録したわけではありません。しかし、Aurora Feintにはチャットルームやリーダーボードが用意されており、他の大規模なオンラインゲームにはないコミュニティが形成されていました。
その後、シトロン氏はAurora Feintのコミュニティ機能を基に、ゲームコミュニティプラットフォーム「OpenFeint」を開発。OpenFeintは2011年に、GREEによって約85億7000万円で買収されました。OpenFeintの売却後、シトロン氏はゲーム開発会社「Hammer & Chisel」を立ち上げてMOBAゲーム「Fates Forever」をリリースします。しかし、Fates Foreverの売上は目標に届かなかったとのことで、Discordの共同設立者であるスタン・ビシュネフスキー氏は「これ以上ゲームを作りたくありません」と述べていました。
加えて、ビシュネフスキー氏は「私たちはチャットサービスの構築について話し合ってきましたが、それをどのように実行するかについての考えがあります」と発言。それから数カ月間、Hammer & Chiselの従業員たちはゲーマー向けチャットサービスを調査し、「常時通話可能なゲーム用のプライベートカフェ」を構築するというアイデアにたどり着きました。
そして、シトロン氏らは2015年にDiscordをリリースしました。Discordのリリース当時は「TeamSpeak」や「Skype」といった通話アプリが人気を集めていたためリリース当初の利用者は少数でした。しかし、ある日オンライン掲示板・Redditのファイナルファンタジーに関するサブレディットでDiscordが話題に上ったことからユーザー数が増加し始めたとのこと。その後数年間でDiscordは数億人のユーザーを抱えるまでに成長しました。
◆Discordの機能
Discordには数多くの機能が搭載されているため、Discordで可能なことを一言で表すことは困難ですが、ビジネス関連ニュースサイトQuartzはDiscordについて「SlackやAOL Instant Messenger、Zoomの大ざっぱな組み合わせを想像してください。そうすれば、Discordに近いものができあがります」と説明しています。また、ゲーム関連サイトPCGamerは、Discordの特筆すべき機能として「時間無制限の高品質通話」「ラグの少ないライブ配信」「複数のライブ配信を同時閲覧」「事実上無制限のアーカイブを持ったテキストチャット」「ファイル共有」「スマートフォンでも使用可能」といった点を挙げています。
またマコーミック氏は、Discordの「非常に簡単に任意の話題に関するサーバーを作成できる機能」に着目して、Discordの本質は搭載された機能の優位性ではなく、ユーザーに「場所」を提供することにあると主張しています。
◆DiscordとSlackの違い
近年人気のチャットアプリとしては、企業のコミュニケーションアプリとして多く採用されているSlackが挙げられます。ただし、Slackでは主要な機能を使うためには有料プランを契約する必要があります。これに対して、Discordでは無料でほとんどの機能を使うことができます。また、Slackは基本的にコミュニティをまたいだコミュニケーションは発生しませんが、Discordではユーザー名さえ知っていればダイレクトメッセージのやり取りが可能です。
マコーミック氏は、DiscordとSlackの最も注目すべき相違点は拡張機能の数だと主張しています。Slackは公式サイトで「2400を超えるアプリ」をアピールしていますが、Discordには記事作成時点で数百万のBOT(Discord内で多様な機能を提供する拡張機能)が存在しています。
DiscordのBOTには、音楽を再生するものや、タイマー機能を提供するもの、サーバー内の権限を管理するものなど多様な種類が存在しています。また、DiscordはBOTエコシステムの拡充に取り組んでいるとのことで、今後もユーザーの需要に合わせた新たなBOTの登場が期待されています。
また、マコーミック氏はDiscordとTwitterやFacebookなどのSNSとの違いとして「フォロワー数が表示されない」「全ての参加サーバーの投稿一覧を一括表示するタイムラインが存在しない」といった点を挙げています。
◆Discordのユーザー
Discordのユーザー数は約3億人と推定されており、そのうち1億5000万人が毎月Discordにログインしています。また、Discordのサーバー検索機能で「注目のコミュニティ」欄に表示される上位10件のサーバーのうち9件がゲーム関連のサーバーで、残り1件はアニメに関するサーバーです。マコーミック氏は、「Discordはもともとゲーマー向けに開発されました。また、ゲームファンとアニメファンの類似性を考えると、この結果は納得できます」と述べています。
ゲーム関連サーバー以外にも、教育・投資・暗号資産といったジャンルの話題を扱うサーバーも増加しています。マコーミック氏はアメリカのゲーマーの5分の1が18歳未満である現状から「子どもたちがゲームに使うツールを勉強にも使うのは、自然な話です」と指摘しています。
教育関連サーバーには、「宿題を手伝うサーバー」や「一緒に勉強するサーバー」といった子ども向けのサーバーの他に、「英語学習サーバー」などの大人向けサーバーも存在しています。また、Discordで新たなサーバーを作成する際には、「ゲーム」の次に学習に関連するテンプレートが表示されます。
加えて、学生専用サーバー作成サービス「Student Hub」も用意されています。これらのことから、Discordが学習関連サーバーの拡充に力を注いでいることが分かります。
マコーミック氏は「FacebookやInstagramでは、若者の扱いに関する問題が発生しています。このような状況の中で、DiscordがSNSを求める若者の受け皿になる可能性があります」と指摘しています。
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