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多機能コミュニケーションツール「Discord」のこれまでとこれからについて創業者が語る


ゲーマー向けのチャットツールとして成長し、今ではテレワークや教育分野などあらゆる用途で活用されるようになったコミュニケーションツールが「Discord」です。そんなDiscordが「身売り先を模索中」と報じられてから、Microsoft・Twitter・Amazon・Epic Gamesといった名だたる企業が買収に興味を示したものの、Discordの創設者でありCEOでもあるジェイソン・シトロン氏はそのすべてからの提案を拒否してきました。そんなシトロン氏が、Discordのこれまでとこれからについて経済紙・Financial Timesのインタビューに答えています。

Discord has won over gamers. Now it wants everybody else | Financial Times
https://www.ft.com/content/7e878e72-38b2-427a-a325-6a419d9f1c88

シトロン氏がDiscordを立ち上げたのは2015年のこと。自身がゲーム開発者であるシトロン氏は、独自のルールで運営されるサーバーを建て、招待された人たちだけがコミュニケーションをとることができるというコミュニケーションツールを作成しました。個々のサーバーの中ではユーザーコミュニケーションをとるためのチャネルが複数用意されており、その中でチャットを交わしたり音声通話でコミュニケーションをとったりすることができます。


そんなDiscordについて、「使い方を学ぶのが難しいと多くの人々から意見をもらうので、簡単にするために多くのエネルギーを費やしてきました」とシトロン氏は語っています。具体的には、アプリ上からニッチなゲーマー用語などを取り除く、などの努力がされたそうです。

元々はゲーマーの間で流行ったツールですが、近年は暗号資産愛好家や音楽愛好家の間でも情報のやり取りやコミュニケーションの場として人気を博しています。シトロン氏は「招待性の寮の部屋やカフェの一室などを持っている人を想像できるなら、Discordはそれらのデジタルバージョンのようなものです」と、Discordについて説明しています。


シトロン氏によると、Discordは新型コロナウイルスのパンデミックに際して若者を中心にユーザー数が激増したそうで、2020年のユーザー数は前年比で2倍を記録しているそうです。特に増加したのは13~24歳のユーザー層とのこと。

また、プライバシー上の懸念を理由にFacebookから離れたユーザーが、Discordに移行するというケースも多くみられたそうです。さらに、Discordはサービスを無料で提供するためにプラットフォーム上に広告を配置するのではなく、有料サービス「Nitro」を提供することで収益化を図ったこともコミュニティ全体の支持を得ることにつながったとしています。

なお、シトロン氏によるとDiscordの2020年の収益は前年比で3倍の1億3000万ドル(約140億円)を記録しています。また、調査企業のLightShed Partnersでベンチャーアナリストを務めるブランドン・ロス氏は、Discordの有料サービスについて「すでにかなり強固なビジネスになりつつある」と称賛しています。


それでもシトロン氏は既存のものとは別の収益源を確保すべく模索しているそうで、インフルエンサーやクリエイターがファンから直接収益を得られるような、YouTubeのスーパーチャットのような方法を検討しているそうです。

Discordが自社の売却を検討していると報じられたのは2021年3月のこと。「Discordは複数の買い手から売却取引を持ちかけられており、どの買い手に会社を売却するか検討中」と報じられており、具体的な買収先候補としてはMicrosoft、Amazon、Twitter、Googleといった大企業の名が挙げられました。実際、Discordの買収に乗り気だったMicrosoftは具体的な提案を持ちかけたのですが、Discordが提案を拒否したため、120億ドル(約1兆3000億円)での買収交渉は打ち切られることになったと報じられています

Discordが1兆円超で身売り先を模索中との報道 - GIGAZINE


この一連の騒動について問われたシトロン氏は、詳細についてはコメントを控えたものの、「私たちが成功し始めていることが明らかになって以降、多くの人々が我々にすり寄ってきました」と語り、2021年3月よりも前から多くの交渉があったことを示唆しています。

なお、Discordは2021年5月にPlayStationブランドの開発・運営を担当するソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)と提携し、2022年前半を目標にPlayStation上でDiscordが使えるようになることを目指すと発表しています。この提携に際し、SIEはDiscordに投資したことも明かしています。SIEとの提携についてシトロン氏は、「我々はすべてのゲーム機メーカーと話し合ってきました」と述べており、Microsoftや任天堂との間でも交渉があったことをにおわせています。

SIEがDiscordと新たなパートナーシップ締結 – SIE Blog (Japan)
https://www.sie.com/jp/blog/2021/05/04/announcing-playstations-new-partnership-with-discord/


Discordの規模が大きくなるにつれ、規制当局の目も厳しくなって来ることは明らかです。セキュリティ研究者から「Discordが悪意のあるリンクを広めるための温床になっている」と指摘されたこともあるため、Discordにとってはセキュリティ面の課題に取り組むことも非常に重要です。

Discordはその他のソーシャルメディアとは異なり、ユーザー同士がやり取りするメッセージ内容をスキャンしていることを認めており、「メッセージの中に子どもの性的搾取に当たるようなものがないかを積極的にスキャンしている」とシトロン氏は語りました。加えて、この取り組みを強化するためにDiscordはスタートアップのSentropyを買収しています。

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in ソフトウェア, Posted by logu_ii

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