サイエンス

瞳孔の大きさを自由自在に変える能力を持った男性が発見されて科学者を驚かせる


人間の瞳孔は網膜に到達する光を通す穴であり、明るい所では収縮して取り入れる光の量を抑え、暗い所では拡大してより多くの光を取り入れようとします。一般的に瞳孔の収縮・拡大は無意識に行われていますが、ドイツに住む23歳の男性が「自由自在に瞳孔を縮小・拡大する」という能力を持っていることが判明し、科学者を驚かせています。

Direct voluntary control of pupil constriction and dilation: Exploratory evidence from pupillometry, optometry, skin conductance, perception, and functional MRI - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0167876021008448

Man can change his pupil size on command, once thought an impossible feat | Live Science
https://www.livescience.com/man-can-control-pupil-dilation.html

瞳孔を囲んでいる虹彩には、交感神経によって支配される瞳孔散大筋と、副交感神経によって支配される瞳孔括約筋という2種類の筋肉が存在しています。瞳孔散大筋が収縮すると虹彩が外側に引っ張られて瞳孔が拡大し、瞳孔括約筋が収縮すると虹彩が内側に引っ張られて瞳孔が収縮します。

これまで、瞳孔の収縮・拡大プロセスは完全に無意識に行われると考えられてきました。たとえば、明るい場所から暗い場所に足を踏み入れた人はいちいち「瞳孔を大きくしよう」と考えなくても、自動で交感神経が興奮して瞳孔が大きくなり、明るい場所にいた時より多くの光を取り入れることが可能です。また、精神が興奮したり疲労したりすることでも、瞳孔のサイズが自動で変わることが知られています。

中には「明るい太陽の光を想像したり暗い部屋を想像したりする」ことで、間接的に瞳孔の大きさを変えることができる事例も確認されているそうです。しかし、腕や足の筋肉と同じように「瞳孔を意識して直接大きさを変える」ことは、人間には不可能だと考えられていたとのこと。


ところが、オランダ・ユトレヒト大学で実験心理学の助教を務めるChristoph Strauch氏は、ドイツのウルム大学で博士課程に在籍していた際、ある男子学生から「瞳孔の大きさを自由に変える能力を持っている」と連絡を受けました。論文中で「D.W.」と呼ばれているこの男性は、15~16歳の頃に長時間コンピューターゲームをプレイした後、目を震わせてリラックスさせる方法を独自に編み出したとのこと。そしてある日、友人にこのリラックス法を見せたところ、「瞳孔が小さくなっている」と指摘されたそうです。

当初、D.W.氏は物体に合わせた焦点をズラすことで瞳孔の大きさを変えていたそうですが、練習を重ねるうちに焦点を意識せずに瞳孔を縮小・拡大できるようになったとのこと。D.W.氏は、「瞳孔を収縮させると、何かをつかんだりピンと張ったりしたような気分になります。瞳孔を拡大させると、目を完全に解放してリラックスしたように感じます」と述べており、瞳孔の大きさを変えるために必要なのは「目に集中すること」だけだと主張しています。


Strauch氏は、明るい場所を想像するなどして間接的に瞳孔の大きさを変えることはできるものの、瞳孔の筋肉を直接動かすことは不可能だと考えていました。そこでD.W.氏の主張を確かめるため、皮膚に取りつけた装置で電気的特性を測定して精神的な努力をしていないかどうか調べたり、fMRIで脳スキャンを行って意思に関する部位の活性を測定したりする実験を行いました。

実験の結果、D.W.氏が直接瞳孔を制御していた確信は得られなかった一方、間接的な努力を行っている証拠も見つかりませんでした。D.W.氏は間接的な方法を使わずに、瞳孔を0.88mm~2.4mmの範囲で縮小・拡大できるとのことで、瞳孔を縮小させることで顔に近い物体に焦点を合わせることもできたそうです。

以下の画像は、D.W.氏の瞳孔を縮小時(constricted)・通常時(normal)・拡大時(dilated)で並べたもの。確かに瞳孔の大きさがそれぞれ違っているのがわかります。


Strauch氏は、D.W.氏と同様の能力を持つ人が他にもいるのではないかと考えており、より多くの人々を対象に調査を行うことで、瞳孔のサイズを自由に制御する方法を理解できるかもしれないと主張しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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