ほかの人には見えない夜空を目にしている「盲目の天文家」
夜空を見上げて星を見るという行為は普通の人にとっては何気ないものですが、目が不自由な人にとってはまったく違う世界が見えることもあります。生まれつきの障害が原因で通常の視力を失ったあるアマチュア天文家の目には、普通の人が見ることができない星の世界が見えているようです。
The Blind Astronomer of Nova Scotia - YouTube
サングラス姿でムービーに登場するのは、アマチュア天文家のティム・デュセットさん。「私は法定盲人です」と自ら語るとおり、デュセットさんは視覚に障害を持っている人物です。
何やら装置を手に操作しているのは……
どうやら巨大な天体望遠鏡。目が不自由なデュセットさんですが、「私は夜空を他の人よりもよく見ることができます。おそらく、あなたが見ているよりも綺麗な夜空をね」と話すとおり、通常の視覚を持つ人とは違う様子で星空が見えている様子。
目が不自由とはいえ、デュセットさんは自転車に乗ることも可能。ただしいつもデュセットさんの奥さんが付き添っているようです。
デュセットさんは、先天白内障をもって生まれたため、子どものころに眼球の水晶体を除去して瞳孔を広げる手術を受けたそうです。
通常の場合は周囲の状況によって瞳孔の大きさが変化することで、目に入る光の量を調整するのですが……
デュセットさんの場合は常に瞳孔が大きく開いているため、目に必要以上に多い光が入ってきてしまいます。
そのため、日中のデュセットさんの視界は真っ白に近い状態にぼやけてしまうそうです。これはまるで、デジタルカメラの設定を明るくしすぎてしまい、写真が真っ白に飛んでしまった状態とほぼ同じようなもので、デュセットさんの視覚は通常の10%程度になっているとのこと。
そんなデュセットさんの目ですが、夜になると普通にはない強みを発揮することになるそうです。
通常よりも多くの光を取り込むことができるデュセットさんの目には、他の人には見ることができない多くの星々が映っているそうなのです。
自費を投じ、自宅近くの丘の上に天文台を設置。「Deep Sky Eye」と名付けました。
デュセットさんは10代のころに視覚を改善する手術を受けたところ、夜空が劇的に綺麗に見えるようになりました。それから15年後、デュセットさんはその能力の素晴らしさを認識したそうです。
普通だとぼんやりとしか見えない小さな星雲も、デュセットさんの目には色鮮やかに映ります。
星間を漂う「ちり」の様子も、デュセットさんにはベルベットのカーテンのごとくハッキリと見え、その上に星のダイヤモンドがちりばめられているように映っているそうです。
デュセットさんと生活を共にする奥さん。実は奥さんも視覚に障害を抱える法定盲人だそうです。
奥さんは特に暗いところでの視力が弱いとのこと。しかし、デュセットさんは奥さんをよく天文台に連れて行き……
一緒に星空を「観察」。奥さんには夜空は見えないとのことですが、デュセットさんが見えている世界を語り、奥さんはそれに耳を傾けているそうです。
望遠鏡をのぞき込み、星空を眺めていると目の不自由さも大きな問題ではなくなるとのこと。自分が大きな宇宙の一員であることを、星空は教えてくれるそうです。
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