なぜ言語学習能力には個人差があるのか?
外国語を学ぶことで、これまでとは違った価値観に触れたり、外国語話者と直接会話したりすることが可能ですが、「外国語の学習」が特に苦手な人もいます。なぜ外国語の学習能力に個人差があるのか、神経学者が1つの解を導き出しています。
Struggling to Learn a New Language? Blame It on Your Stable Brain | UC San Francisco
https://www.ucsf.edu/news/2021/08/421316/struggling-learn-new-language-blame-it-your-stable-brain
今回の実験では、過去にてんかんを発症して脳外科手術を受け、発作の原因を突き止めるために脳に電極を埋め込んでいる19歳~59歳の10人の患者が被験者となりました。研究を主導したハン・イー氏らはそれぞれに対し声調言語である北京語を聞かせ、脳がどのように反応するのかを電極を通じて読み取ろうとしました。声調言語は言葉に音程の変化という要素を持つ言語であり、被験者は全員が非声調言語である英語を母国語とするため、音の変化を識別するのが難しいと考えられていました。
イー氏らは「言語の音を学ぶことは言語学習の最初のステップだ」と考え、被験者に音の違いを認識させる実験を開始。まず、男性と女性両方の、年齢の異なる北京語のネイティブ話者の声を録音したものを被験者に聞かせました。話者は「ma」や「di」などの単語を、第一声から第四声までの異なる声調で話しました。そして、被験者はそれぞれの単語をそれぞれの声調で聞いた後、どの声調が何の声調であったかをイー氏らに報告し、正誤を確認。一連の学習を、数日間かけて約200回繰り返し行いました。
イー氏らが神経信号を分析したところ、被験者が言語を学習するにつれ、音の処理を担う脳領域の聴覚野全体でニューロンの動きが活発化していたことが判明。さらに、耳にした声調によって活発化する部位が異なっていたうえ、活発化する部位は個人によって場所に差があることも明らかになりました。
イー氏らは、聞く音によって活発化するニューロンが異なることこそが、人によって言語学習能力に差がある理由だと指摘。母国語を認識するニューロンを維持しながら、独自のニューロンで新しい言語を学ぶことで、バランスよく脳全体を使っていると結論付けました。
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