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Google社内では「言論統制」によって独占禁止法について考えることすら難しくなっているという指摘


Googleはアメリカの規制当局などから独占禁止法関連の訴訟を多数起こされていますが、その一方でGoogle検索結果の上部を「Googleが所有するウェブサイト」に置き換えるなどの施策を推し進めており、独占禁止法関連の訴訟を一切気にかけないそぶりを続けています。世間の批判を気にしないというGoogleの姿勢はどこから生まれてくるのかという疑問について、検索エンジン最適化(SEO)の専門家であるサイラス・シェパード氏が「社内の言論統制が原因である」と解説しています。

Googlespeak™ - How Google Limits Thought About Antitrust
https://zyppy.com/googlespeak/

Googleの独占に世界中の規制当局から懸念を表明されており、Googleが直面している独占禁止法関連の訴訟と規制は多岐にわたります。直近のものに話を絞った場合でも、検索及び検索広告市場における独占状態の違法な維持でアメリカ司法省から提訴されたり、アメリカの38州の司法当局に検索市場における独占禁止法違反で訴えられたり、ニュース使用料の支払いにおける独占禁止法違反の疑いでフランス当局から捜査を受けたり、Google Payを巡ってインドの規制当局から独占禁止法違反の調査を受けたり、Facebookと共謀して独占状態を維持していたという疑いをかけられたり、開発段階の新システムについて欧州委員会から独占禁止法違反で調査を受けたり、Google Payにおける自社決済システムの強制について新たな規制法がアメリカで提出されたりと、枚挙にいとまがないほど。

このようにGoogleは独占禁止法関連で世界中から批判されまくっているといえる状況ですが、その一方でGoogle検索結果の上部をGoogleが所有するウェブサイトにするという施策を推し進め続けています。以下の記事では、Google検索を使った場合、ユーザーがGoogle以外のウェブサイトにたどり着くためにはページ全体のおよそ42%をスクロールしなければならないという事実が示されています。

Googleの検索結果上位は「Googleが所有するウェブサイト」に占められているとの指摘 - GIGAZINE


以上のことからGoogleは独占禁止法関連の問題を多数抱えているにもかかわらず、その問題を気にもかけないそぶりが見られるわけです。Twitterで複数のGoogle社員と口論を繰り広げたシェパード氏によると、これらのGoogle社員は独占禁止法違反疑惑について「ばかげている」「無根拠だ」「愚かな」といった類いの発言を重ねたそうで、実際にGoogle社内で独占禁止法関連の問題は重要視されていないという姿勢が透けてみえたとのこと。

シェパード氏の主張は、この姿勢の原因が「Google社内の言論統制」にある、というもの。その主張を裏付ける証拠が、テクノロジーにおける倫理に関するアメリカの非営利団体The Markupが入手したGoogleの社内文書「Five Rules」です。

five-rules - Five-Rules-of-Thumb-for-Written-Communications.pdf
https://s3.documentcloud.org/documents/7016657/Five-Rules-of-Thumb-for-Written-Communications.pdf

Five Rulesは社内コミュニケーションに関する注意事項をまとめたガイドラインですが、出だしの一文が「言葉は重要です。特に独占禁止法においては」となっているのを見ればわかる通り、独占禁止法に抵触するような表現・語句は控えましょう、という内容。例えば第1条は「競合他社を痛めつけるのではなく、ユーザーを助けましょう。競合他社にどのような影響を与えるかに注目してはいけません。私たちは『潰す』『殺す』『傷つける』『妨害する』など、悪いことや悪いと思われるようなことをしてはいけません」といった内容になっており、自らの行為について独占を進めているのではなく「ユーザーを助けている」のだと考えるように仕向けています。


また、以下の「Communicating Safely」という文書では、使用すべきではない単語と使用すべき単語の具体例が記載されています。

Communicating-Safely.pdf
https://s3.documentcloud.org/documents/7016658/Communicating-Safely.pdf

この文書によると、「Market(市場)」「Market share(市場占有率)」「Dominant(独占)」などは不適切で、「Industry(産業)」「Revenue share(レベニューシェア)」「Successful(成功)」などは適切という扱い。


文章例では、「Get ahead of competitors (競合他社を打ち負かす)」という表現は不適切で、「Improve our product/service(自社プロダクト/サービスを改善する)」という表現が適切。「Defensive rationale : Acquire target before competition(防御理由:競合する前にターゲットを買収する)」という表現は不適切で、「Acquire target to improveour product/service(自社プロダクト/サービスの改善のためにターゲットを買収する)」という表現が適切とされていることがわかります。


こうしたGoogleの言論統制の中でも最も重要なポイントの1つは、「Googleは自分自身について独占的だと思っていない」ことにあるとのこと。前述のFive Rulesの第3条では、Googleは競合他社の例としてYahoo・Microsoft・Ask・Amazon・MapQuest・Facebook・Twitter・Apple・Kayak・Baidu・Seznam・Yandex・PayPal・Mozillaなどを列挙しており、「Google competes with every company that lets users access information and every company that sells advertising(Googleはユーザーに情報のアクセスを提供するあらゆる企業と広告を販売するあらゆる企業と競合しています)」とまで記しています。Googleは検索市場の92%を占める巨大企業ですが、ありとあらゆる情報業・広告業を競合相手とみなすならば、確かに市場を独占しているとはいえないわけです。


こうした内容について、シェパード氏は「例えばNetflixが顧客に海賊版映画を無料で提供したり、AmazonがKindleで扱うあらゆる本を無料化すれば、それはユーザーにとって良いことだといえますが、作品を制作する作家やアーティスト、そして競合他社に壊滅的な打撃を与えてしまいます」と述べ、Googleは競合他社を害する戦略を「ユーザーにとって良いこと」に置き換えようとしていると主張。Google社員6人が「Google社内では独占禁止法の問題について公に話すべきではないという暗黙の了解があった」と語ったというThe New York Timesの記事を挙げて、Google社内においては言論統制の結果独占禁止法に関する問題がなかったことになっていると指摘。このような状況をディストピア小説の古典的傑作であるジョージ・オーウェルの「一九八四年」に登場する、党の支配を盤石なものにするべく語彙と思考を制限した架空言語「ニュースピーク」になぞらえて、「Googleスピーク」と呼んでいます。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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