NASAの火星探査機「パーサヴィアランス」が岩石サンプルの採取に失敗、その理由は？

NASAの無人探査機「パーサヴィアランス」が、2021年8月6日に初となる岩石サンプルの採掘を実行しましたが、全計器から「正常に完了した」というデータが得られていたのにもかかわらず、「サンプル容器が空」という奇妙な失敗をしていたことが明らかになりました。この失敗の原因について岩石サンプル採取＆格納担当チーフエンジニアのルイーズ・ジャンドゥラ氏が解説しています。

Assessing Perseverance's First Sample Attempt - NASA Mars
https://mars.nasa.gov/mars2020/mission/status/320/assessing-perseverances-first-sample-attempt/

Why Perseverance’s first Mars drilling test came up empty | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/08/why-perseverances-first-mars-drilling-test-came-up-empty/

NASAの火星探査機・パーサヴィアランスは火星ヘリコプター「インジェニュイティ」や酸素生成システム「MOXIE」、サンプル採取＆格納システム「Sample Caching System」を搭載しており、火星における生命の痕跡を見つけ出すべく活動しています。パーサヴィアランスの機能や任務の詳細は以下の記事で確認できます。

火星着陸が秒読みに入ったNASAの探査機「パーサヴィアランス」の機能と任務まとめ - GIGAZINE

パーサヴィアランスは2021年2月19日に火星への着陸に成功し、4月19日にはインジェニュイティによる地球外惑星初の動力飛行に成功。さらに4月21日にはMOXIEによる酸素生成にも成功しました。

そして8月6日には、パーサヴィアランスによる初のサンプル採取が実行されました。同じくNASAの火星探査機である「キュリオシティ」も火星のサンプル採取に成功していますが、この時採取されたサンプルは火星の岩石を粉砕して得られたものでした。これに対して、パーサヴィアランスは新たに開発された岩石サンプル採掘用ドリル「Corer」でリンゴの芯をくりぬくように岩石を掘り進め、岩石サンプルを粉砕せずに収集することを目指しました。

岩石採掘後の採掘地点の写真が以下。赤枠部分に採掘の跡が残っています。この写真と同時に、地球には「7センチメートルの深さまで掘り進めることに成功した」というデータが届きました。

上記の写真が地球に届いた翌朝には、サンプルを納める容器を正常に密閉し、格納庫への収納も正常に完了したとするデータが地球に送られてきました。しかし、その後に送られてきたサンプルの体積測定データと写真は「サンプルが入っているはずの容器が、空である」ということを示していたとのこと。ジャンドゥラ氏は「この結果を受け入れるのに数分間かかりました。しかし探査チームはすぐに調査モードに切り替わりました。それが私たちの仕事であり、科学と工学の基本です」と当時の心境を語っています。

探査チームは2日間かけてデータの詳細な分析を実施。パーサヴィアランスが移動した範囲の写真や動作記録を確認した結果、Corerが動作に異常をきたした可能性や火星の地表にサンプルが落下した可能性は排除されました。一連の可能性を検討した探査チームは、Corerが採掘した岩石の写真から「岩石が頑丈ではなかったためCorerによって粉砕されてしまった」と推測しています。

ジャンドゥラ氏は「サンプル回収システムは命令通りに動作しましたが、今回は岩石が協力してくれませんでした。これは、どれだけ準備しても結果が保証されることはないという探検の本質を思い出させてくれます」「今回はサンプルの採取に失敗しましたが、サンプル回収システムが火星で完全自律動作することを示しました」と、今回の試みの成果を語っています。

なお、パーサヴィアランスによるサンプル採取は今後も続き、9月上旬には2回目のサンプリングが実行される予定です。