NASAの火星探査機「パーサヴィアランス」の酸素生成器がまもなく稼働、どのような機器なのか?
by Kevin Gill
2021年2月18日に火星に無事着陸したNASAの「パーサヴィアランス」は、火星における生命の痕跡を調査する探査機です。このパーサヴィアランスは地球から持ち込んだ資源だけではなく、現地で収集した資源を活用する機構が組み込まれており、まもなく火星の大気から酸素を生成する予定です。
Mars Oxygen In-Situ Resource Utilization Experiment (MOXIE) - NASA Mars
https://mars.nasa.gov/mars2020/spacecraft/instruments/moxie/
Crazy Engineering: Making Oxygen on Mars with MOXIE - YouTube
This golden box will soon make oxygen on Mars. That's great news for human explorers. | Live Science
https://www.livescience.com/mars-perseverance-moxie-makes-oxygen.html
物体にかかる重力はその物体の質量に比例するため、探査機などは「できる限り軽いほうが望ましい」と考えられます。このアイデアに従ってNASAは探査機に積み込む資源を減らすため、「In-Situ Resource Utilization(その場での資源利用技術:ISRU)」という、その場で得られる資源から宇宙飛行士の生存に必要な資源や宇宙基地の建材などを生産する技術を推し進めています。
2021年2月18日に火星に到着したパーサヴィアランスには「火星有人探査」を見据えて、火星の大気から酸素を生成する実証実験用機器「MOXIE」というISRUが搭載されています。火星の大気は二酸化炭素が96%、酸素はわずか0.13%であり、地球との距離ゆえに長期ミッションで使用する全酸素を地球から持ち込むというのはほぼ不可能。有人火星探査の際には酸素の現地生産は必須であるため、今回MOXIEで酸素の現地生産をテストするという運びになりました。以下がMOXIEの実物。
By NASA/JPL-Caltech
今回パーサヴィアランスに搭載されたMOXIEは、火星の大気から回収した二酸化炭素を800℃近くまで加熱し、電気分解によって酸素と一酸化炭素を生成して酸素のみを活用するというシステム。大きさは23.9×23.9×30.9cm、重量は17.1kgという一般的な自動車に搭載されるバッテリークラスのサイズ。稼働には300Wの電力が必要で、パーサヴィアランスの電力生成量と電力容量の関係から1カ月あたり数時間しか起動できず、酸素生成量は1時間あたり10g。人間の生存には1時間あたり20gの酸素が必要で、さらに地球に帰還するのに必要な混合燃料には酸素が3万~4万5000kgの酸素が必要なので、仮に長期ミッションで使用する全酸素を現状のMOXIEでまかなおうとした場合は最低でも現状の100倍のサイズのMOXIEが必要です。
今回パーサヴィアランスに搭載されたMOXIEが行うのはあくまで実証実験で、生成された酸素も火星大気中に放出するだけという、「酸素の生成」のみを目的としています。MOXIEは着陸成功の数日後に機器が正常に稼働することが確認されており、2021年4月中に初回の試運転が行われる予定です。
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