サイエンス

男性ホルモンのテストステロン値は高すぎても低すぎてもうつ病のリスクが高いとの研究結果


男性ホルモンであるテストステロンは、値が低いとうつ病の発症リスクが高いと考えられてきました。しかし、イギリスの大規模な健康データベース「UKバイオバンク」に登録された男性13万3733人を対象とした研究では、テストステロン値が同年代の平均より低い男性だけでなく、平均より高い男性もうつ病の発症リスクが高いことが示されました。

The complex relationship between testosterone imbalance and the risk of depression and anxiety in men - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S016503272600666X

The complex relationship between testosterone imbalance and the risk of depression and anxiety in men - UK Biobank
https://www.ukbiobank.ac.uk/publications/the-complex-relationship-between-testosterone-imbalance-and-the-risk-of-depression-and-anxiety-in-men/

Men with atypical testosterone levels face a higher risk of depression
https://www.psypost.org/men-with-atypical-testosterone-levels-face-a-higher-risk-of-depression/


血液中のテストステロンにはタンパク質と結合しているものと、タンパク質と結合せず体内で作用しやすいものがあり、その両方を合わせた総量を「総テストステロン」、タンパク質と結合していないものを「遊離テストステロン」と呼びます。テストステロン値とメンタルヘルスに関する従来の研究はある一時点のデータを分析したものが多く、テストステロン値の違いが将来のうつ病発症とどう関係するのかは十分に分かっていませんでした。

そこで中国・西安交通大学の何丹氏らの研究チームは、UKバイオバンクに登録された40~70歳の男性について、研究開始時の血液サンプルから「総テストステロン」を測定するとともに、「遊離テストステロン」を算出。その後、参加者の医療記録を平均約11年間追跡しました。

なお、研究開始時にうつ病や不安症と診断されたことがある人、抗うつ薬やテストステロン値に影響する薬を服用していた人などは分析から除外されています。


何丹氏らは研究対象者を5歳刻みの6つの年齢層に分け、各年齢層の中で「平均からどの程度離れているか」に基づいてテストステロン値を低値・正常値・高値の3群に分類。その上で、肥満度や生活習慣、持病などを考慮し、研究開始時のテストステロン値とその後のうつ病診断との関連を分析しました。

追跡期間中には、研究対象者のうち3701人がうつ病と診断されました。何丹氏らの分析では、総テストステロンが正常値だった男性と比べて、総テストステロンが低値だった男性のうつ病発症リスクは「1.48倍」、総テストステロンが高値だった男性のうつ病発症リスクは「1.27倍」だったとのことです。


また、遊離テストステロンが低値だった男性のうつ病発症リスクは、遊離テストステロンが正常値だった男性の「1.99倍」でした。さらに、遊離テストステロン値を低値・正常値・高値の3群に分けずに、遊離テストステロン値の高低とうつ病発症リスクとの関連を分析したところ、同年代の平均付近と比べて遊離テストステロン値が低すぎても高すぎてもうつ病の発症リスクが高くなる傾向が確認されたと何丹氏らは説明しています。

なお、サイエンス系メディアのPsyPostによると、「年齢層別の分析では、55~59歳で遊離テストステロンが低値だった男性のうつ病発症リスクは、同年代の遊離テストステロンが正常値だった男性の3倍を超えていた」とのことです。


PsyPostは、今回の研究がテストステロン値を操作するのではなく、実際のテストステロンの測定値とその後の診断との関連を追った観察研究であるため、「テストステロン値の偏りがうつ病を引き起こす」という因果関係を示したものではないと指摘しています。

今回の研究ではテストステロン値を測定したのが研究開始時の1回だけだったため、今後はテストステロン値を繰り返し測定し、ホルモンの長期的な変化とメンタルヘルスの関係を調べる必要があると何丹氏らは述べています。

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in サイエンス, Posted by log1b_ok

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