思考をコンピューターにリアルタイムで出力することにFacebookが成功
「思考をコンピューターで読み取る」というSFのような技術についての研究が、近年は実際に進んでいます。そんな中、2021年7月14日付けでFacebookが新たに、「脳卒中によって話す能力を失った人が、考えをコンピューターに出力する技術」を開発したと発表しました。
BCI milestone: New research from UCSF with support from Facebook shows the potential of brain-computer interfaces for restoring speech communication
https://tech.fb.com/bci-milestone-new-research-from-ucsf-with-support-from-facebook-shows-the-potential-of-brain-computer-interfaces-for-restoring-speech-communication/
“Neuroprosthesis” Restores Words to Man with Paralysis | UC San Francisco
https://www.ucsf.edu/news/2021/07/420946/neuroprosthesis-restores-words-man-paralysis
Facebook's "brain reading" tech works but it's still giving up on it - SlashGear
https://www.slashgear.com/facebooks-brain-reading-tech-works-but-its-still-giving-up-on-it-15682598/
テスラやSpaceXの創業者であるイーロン・マスク氏が脳インプラントで思考を取り出す研究を行っているNeuralinkを始めとし、近年は「脳から直接考えを読み取る技術」に注目が集まっています。このような技術が実現すれば、体に不自由を抱える人の生活の質が大幅に向上するほか、人の思考をコンピューターに保存し、人とAIの「ハイブリッド」を実現することも可能になると考えられています。
Facebookの研究組織であるFacebook Reality Labsは主に拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の分野の研究を行っていますが、上記のような可能性に着目し、2017年には直接出力できる非侵襲的なインターフェースの開発を計画中であると発表していました。
そして2021年7月14日付でFacebook Reality Labsは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者チームの共同研究として、人が考えるのと同時に考えをコンピューターに出力する「ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)」について発表。当初の目標は非侵襲的な方法の開発でしたが、今回の研究では脳インプラントが利用されています。
今回の研究内容は以下のムービーでまとめられています。
“Neuroprosthesis” Restores Words to Man with Paralysis - YouTube
脳インプラントは人の発声を制御する部分に埋め込まれ、脳信号をコンピューターへと送信します。
これが全体図。脳インプラントから送られた信号が、「脳信号処理」「発話検知」「単語分類」「言語モデリング」といったコンピューター処理をへて、画面に出力されていきます。
これが実際の映像。画面に表示された「今日の気分は?」という質問に対し、脳卒中によって話す能力を失った被験者が頭の中で答えを思い浮かべると、それがリアルタイムで返答として表示されていきます。BCIは脳信号を使って1分間に100単語を出力することが可能とのこと。また1分間15単語で出力する場合、言葉の精度の中央値は74%と高いものだったとFacebookは述べています。
一方で、FacebookはBCIテクノロジーを使ったヘッドマウントについて「長期的な可能性を信じている」としつつも、「市場への短期的な道筋を持つ別のニューラルインターフェイスアプローチに、当面の取り組みを集中させると決定しました」と発表。この別のアプローチとは、Facebookが2021年3月に発表した、「手の動きだけでコンピューターを制御可能にする技術」のこと。これは、表面筋電位(EMG)と呼ばれる信号を読み取ることで「人が指をどのように動作させたいか」を認識するというものとなっています。
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