サイエンス

「脳内の思考を自由に読み取ったり制御したりする技術」は一体どんなメリットや問題があるのか?


人の脳を読み取る試みについては、既に「ディープラーニングで脳波を読み取る」技術や、「頭の中のイメージを画像にする」技術が登場しています。こうした技術が実現することで犯罪を食い止めたり、精神障害を治療したりできると期待されていますが、その前にさまざまな課題を乗り越えなければならないと指摘されています。

Mind Reading and Mind Control Technologies Are Coming - Scientific American Blog Network
https://blogs.scientificamerican.com/observations/mind-reading-and-mind-control-technologies-are-coming/

「人の脳内の電気的活動を調査する『マインド・リーディング』は、生化学が体でやったことを脳にも行うようなものです」と指摘するのは、アメリカ国立衛生研究所の神経内科医であるR・ダグラス・フィールズ氏です。フィールズ氏によると、「マインド・リーディング」が実現すれば、まるで血液検査でコレステロール値を調べるような感覚で脳をモニタリングして、ADHDや統合失調症を診断することができるようになるとのこと。

実際に、フィールズ氏がワシントン大学の神経心理学者Chantel Prat氏に脳波測定をしてもらった結果、たった5分間の測定だけで「フィールズ氏が外国語を学ぶのが苦手」だということが見抜かれてしまったそうです。このようにして、IQや認知的な得手不得手を分析すれば、進学や職業選択に役立つとフィールズ氏は考えています。


また、カーネギーメロン大学の神経科学者であるマーセル・ジャスト氏らの研究チームは、fMRI技術で脳をイメージングすることで、被験者が頭の中で考えている数字や物体が何かを解析することに成功しています。ジャスト氏は「思考以上にプライベートなものはありません」と述べていますが、フィールズ氏は「プライバシーはもはや聖域ではありません」とコメントしました。

こうした技術は単に人の思考を読んでプライバシーを侵害する以外にも、人の役に立つさまざまな用途が考えられます。例えば、著名なシェフでテレビ番組の司会者でもあったアンソニー・ボーディンや、コメディアンとしても活躍していた俳優ロビン・ウィリアムズは、周囲の人に気取られることなく突然自殺して多くの人々を悲しませましたが、「マインド・リーディング」なら人が胸中に秘めた自殺念慮を事前に察知することが可能だとのこと。

また、2人の高校生が学校で銃を乱射し、15人を殺害してから自殺した1999年のコロンバイン高校銃乱射事件なども、「マインド・リーディング」で防げたかもしれないとのこと。その一方で、一体どんな脳の働きであれば正常で、どこからが異常として社会から隔離されるべきなのかの線引きは、難しい問題だとフィールズ氏は指摘しています。


こうした「マインド・リーディング」の先にあるのが「マインド・コントロール」です。この分野の技術は「マインド・リーディング」が発達するより前からさまざまな研究が行われてきましたが、それらの大半は場当たり的な薬物の乱用や、外科手術で脳を切り取るロボトミーなど悲惨なものばかりでした。

また、自作の機械で脳に電流を流す「経頭蓋直流刺激(tDCS)」も近年人気ですが、こうした技術についてフィールズ氏は「電流は脳の電気抵抗が最小な部分を通ってニューロンを刺激するものなので、不正確です」と指摘しています。

tDCSの詳細やその危険性については、以下の記事に詳しく書かれています。

脳に電流を流してハッキングしようとする人が急増中、科学者が警鐘をならす - GIGAZINE


一方、フィールズ氏が考えている「マインド・コントロール」は、正確な方法で脳の治療を行うという点で、旧来の技術とは一線を画しているとのこと。例えば動物実験では既に、光ファイバーで脳内にレーザーを照射して神経回路を精密に制御する光遺伝学的な手法が一定の成果を収めています。

フィールズ氏は「脳全体に電気ショックを加えたり、薬漬けにしたりするより、正確な方法で誤作動を起こしている脳の神経回路を治療する方がはるかに理にかなっています。しかし、光遺伝学技術は多くの神経障害や精神障害を軽減させる可能性があるものの、この手法を人間に使用することは今のところ倫理的だとはみなされていません」と述べて、まだ課題が多い技術であることを認めました。

by ulie Pryor

こうした点からフィールズ氏は、「脳を読み取ったり制御したりする技術の進歩により、それらを使って重い神経障害や精神障害に立ち向かおうとする人を止めることの方が非倫理的だとみなされる時代がすぐそこまで来ています」と述べて、新技術の登場は避けられない事を指摘。その一方で「脳の電気的活動を直接モニタリングしたり、制御したりするテクノロジーの確立は、これまで存在しなかった新たな倫理的問題を巻き起こすでしょう」と述べて、そうした技術の登場に備えて活発な議論が必要だとの考えを示しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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