テスラ車の修理価格が公式サービスセンターは民間業者の22倍、「修理する権利」の教訓とは?
電子機器や電化製品などが故障した際に、ユーザーによる修理をメーカーが禁止しているケースがあります。これは、修理や交換などのサポートも含めた価格設定などを行っているためでもありますが、ユーザーに高額な修理代などを一方的に請求できてしまうため、消費者の権利を守るため「修理する権利」として消費者を保護する運動が活発になっています。この実例として、テスラの車を傷つけた際の修理見積が、テスラのサービスセンターに依頼したときと直接修理を試みたときとで1万ドル(約110万円)以上の差異が出た事例を、車関係のニュースを掲載するThe Driveがまとめています。
Tesla’s $16,000 Quote for a $700 Fix Is Why Right to Repair Matters
https://www.thedrive.com/news/41493/teslas-16000-quote-for-a-700-fix-is-why-right-to-repair-matters
Tesla wanted $16,000 to fix this NEW Model 3, we did it for $700! The importance of Right to REPAIR! - YouTube
「修理する権利」とは、電子機器等を修理する人に制限がかけてあったり、修理するための純正の部品やツールが流通していなかったりといった消費者の不利益を改善しようと主張するもの。イギリスでは2021年7月1日から修理する権利を保障する法律が施行されたほか、アメリカでは消費者や非認可の業者による修理をメーカーが禁止することを制限するための大統領令を予定していると発表しています。
「修理する権利」をメーカーが制限することを禁じる規制案の作成をバイデン大統領が指示か - GIGAZINE
修理する権利はスマートフォンやゲーム機、トラクターなどについての争いが報告されていますが、The Driveが2021年7月12日に報じたのは、テスラの新車に関する事例です。テスラ・モデル3のカーリースを行う会社が、道路のガレキにぶつかってバッテリーパックに損傷ができたためテスラのサービスセンターに修理の見積を依頼すると、バッテリーパックの交換のために1万6000ドル(約176万円)を請求されたとのこと。
テスラのサービスセンターによる見積の後、カーリース会社がネットで他の解決策を探したところ、テスラ車の修理を請け負うElectrified Garageと修理権についてのコミュニティで代表的な一人であるRich Benoit氏のチームを発見しました。結果として、わずか700ドル(約7万7千円)で車を再走行可能にできたとのこと。
車の故障はバッテリーパックにひび割れが起きて冷却システムに損傷が発生し、電気自動車を冷却するためのクーラント液が漏れ出したことが原因でしたが、丸ごとパックを交換する必要はなく、Electrified Garageのショップにあった大幅に安価な部品などで問題なく修繕を行うことができたため、コスト自体はほとんどかからずに済んだと報告しています。
このような差異が生まれた大きな原因として、そもそもテスラのサービスセンターにはテスラ・モデル3の修理の準備がなく交換するしかなかったためバッテリーパックの高額な負担が必要だったことにあります。また、部品が一つ損傷しただけでも、同じ部品は流通していないため、単純に交換することがかなわないというのも問題点として挙げられています。
Electrified GarageとRich Benoit氏のチームは「修理する権利」の大きな支持者であり、今回のケースもこの権利に関する教訓だと述べています。一方でThe Driveは、冷却システムが壊れやすく修理しにくい設計になっているというような問題や、バッテリーを交換して再利用する費用効果への疑問など、「工学面の教訓」として捉え、最新の車にそのような問題が見られることに対して不満を述べています。
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