Appleと契約したサードパーティ修理業者に突きつけられる契約内容が「一方的すぎる」という報道
By Bru-nO
テクノロジー系メディアのMotherboardが、Appleとサードパーティの修理業者の間で交わされる「正規の部品&修理ツールを供給する契約」に関する契約書を入手しました。契約書を精査したMotherboardは、「弁護士や修理する権利を主張する人間ならば、『狂っている』と表現するような条項が盛り込まれている」と述べています。
Apple’s Independent Repair Program Is Invasive to Shops and Their Customers, Contract Shows - VICE
https://www.vice.com/en_us/article/qjdjnv/apples-independent-repair-program-is-invasive-to-shops-and-their-customers-contract-shows
Apple認定サービスプロバイダ(AASP)にApple製品を持ち込んだ場合、驚くほど高額な修理費用を請求されるケースがあるという批判が長らく存在しています。Appleはユーザーが自分の手で製品の修理を行うことが難しくなるように、分解・修理が難しくなるよう端末を設計することでユーザーの「修理する権利」を奪おうとしているとまで非難されてきました。
Appleは修理代金を高額にする一方でユーザーの「修理する権利」を奪おうとしている - GIGAZINE
by Morten Skogly
このような批判を受け、Appleは正規の修理プロバイダ以外でもiPhoneやMacBookなどの製品を修理できるように、2019年8月から「独立系修理プロバイダープログラム」を開始。独立系修理プロバイダープログラムは、サードパーティーの修理業者(IRP)でもAppleから供給された正規の部品と修理ツールを用いて修理を行うことが可能になるというもので、「Appleは修理する権利に向けて一歩配慮した」と各所で報じらました。
Appleがサードパーティーの修理業者にも正規の部品&修理ツールを供給 - GIGAZINE
しかし、独立系修理プロバイダープログラムの契約書を入手したMotherboardは、この契約には問題が多数存在すると指摘しています。その1つが、契約を結んだ後もIRPはAASPと厳密に区別されるという点。契約書によると、IRPは店頭とウェブサイト上の両方に、わかりやすい形で『サードパーティの修理業者』である旨を掲示する必要があり、顧客と「契約しようとしているのはAASPではないことを理解しています」「Appleが今回の修理を保証しないことに同意します」という内容の書面契約を交わす必要があるとのこと。
また、契約書には「禁止部品」を使った修理が許可されない旨も記載されています。禁止部品とは、偽造品や偽造パーツ、そしてAppleの知的財産権を侵害する部品のことを指しています。このような契約条項の背景には、「iPhoneの偽造パーツ」などが大規模に出回っているという事実があるとMotherboardは指摘しました。
さらに、IRPが禁止部品を入荷してしまった場合、費用はIRP負担でAppleに当該部品を送付する必要がある上に、送付後も禁止部品に関するAppleの調査に協力しなければなりません。仮に禁止部品に関わりがなかったとしても、Apple側にはIRPの施設を「いつでも」監査できるという権利が認められる上に、この権利は契約終了後も5年間は維持するとのこと。この監査には、「従業員への聞き取り調査」も含まれることが明記されています。
By BrianAJackson
このような監査でAppleが「異常」を発見した場合、契約によってIRP側に厳しい罰則を科すことが可能になります。全修理取引の2%以上が「禁止部品」に関連しているとAppleが判断した場合、IRP側には監査期間中の取引1つにつき1000ドル(約11万)の罰金と、Appleが監査に費やした費用を請求する権利がAppleに認められます。
Appleの知的財産権を侵害する部品が「禁止部品」に含まれていることに関して、電子フロンティア財団の顧問弁護士の1人であるキット・ウォルシュ氏は、Appleは知的財産権を非常に広く解釈することで悪名高いことを指摘し、この契約を結ぶとAppleに莫大な裁量権が与えられるため、修理工場は多大な経営リスクを負うことになるという懸念を示しました。
By KonstantinKolosov
さらに、IRPはAppleに対して、修理を行った顧客の氏名・住所・電話番号・メールアドレスなどの個人情報をApple側に送信する必要があるとのこと。スマートフォン修理ビジネスを運営するPedro Ferrer氏は、「個人情報は修理内容に無関係で、全ての顧客情報がAppleに送信されると聞いた」とも証言しています。秘密保持契約書に同意しなければこの契約内容を確認することはできませんが、Motherboardは独自のルートでこの契約書を入手したと述べています。
入手した契約書の情報に関してMotherboardがAppleに直接問い合わせたところ、Appleはその契約書が正確であることに異議を唱えなかったとのこと。Appleは「あらゆる規模の修理業者に対し、iPhoneの修理に必要な純正部品・修理法・修理ツールを提供します。安全で信頼性の高い修理のために、より多くの選択肢と機会を顧客に提供できるようになることを約束します」とMotherboardに対して述べました。
連邦取引委員会が2019年に開いた「修理する権利」に関するワークショップに際して、Appleを含む2200以上の企業を代表して修理する権利に反対しているConsumer Technology Associationは、「AppleのIRPプログラムのように、消費者は修理のための幅広い選択肢をすでに持っている」と提言しています。
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