Appleがプライバシー強化機能を導入してAndroidが恩恵を受ける
by asgw
iOS 14.5よりAppleはプライバシー機能を強化し、企業による広告のためのユーザー追跡を、ユーザーの許可制としました。多くのユーザーが「広告追跡を許可しないこと」を選択する中で、iOS向けモバイル広告への支出が減少し、Android向けモバイル広告への支出が増加していると、複数の広告企業が報告しています。
After Apple Tightens Tracking Rules, Advertisers Shift Spending Toward Android Devices - WSJ
https://www.wsj.com/articles/after-apple-tightens-tracking-rules-advertisers-shift-spending-toward-android-devices-11625477401
2021年4月26日にAppleがリリースした「iOS 14.5」では、プライバシー向上のためのフレームワーク「App Tracking Transparency」が導入されました。これにより、iOS端末でアプリを利用するユーザーは、アプリ利用前に「広告のための行動追跡を許可するか」を尋ねられることになっています。この問いに対し「許可する」としたユーザーは5月6日時点で12%、アメリカ限定だと4%だと報告されており、ほとんどのユーザーが追跡を拒否しているとみられています。
iPhoneユーザーのほとんどがiOS 14.5で有効になったATTからアプリによるユーザー追跡を拒否していることが明らかに - GIGAZINE
その後、iOS 14.5に更新する人の数が増加すると共に、「許可する」としたユーザーも増加していますが、依然として「追跡を拒否する人」が多数派です。追跡が拒否されると、ユーザーの興味・関心が企業からわからないようになるため、ターゲティング広告の効果が落ちると考えられています。
このため、企業のモバイル広告に対する支出がiOSユーザーからAndroidユーザーに移っていると、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じています。たとえば広告測定企業のTenjinは、6月1日から7月1日の期間にiOSモバイル広告に対する支出がこれまでの3分の1ほど減少し、一方で同期間のAndroidへの支出が10%増加したと述べています。
またデジタル広告の代理店であるTinuitiも同様の傾向を確認しており、追跡できるiOSユーザーが不足することにより、Android向けモバイル広告の価格が上昇していることを報告しています。TinuitiのリサーチディレクターであるAndy Taylor氏によれば、Androidの広告価格はiOSの広告価格よりも30%高いとのこと。また、多くのFacebookユーザーはAndroidユーザーであり、クライアントによるFacebook広告への支出も増加しているため、今後Android向けのモバイル広告への支出がさらに大きくなる可能性も示唆されています。
by Saad Irfan
なお、ウェブトラフィック分析サイトのStatcounterによると、世界中のスマートフォンのうちAndroidが占める割合は約72.8%、iOSの占める割合は26.4%とのことです。
広告企業であるFacebookはAppleによるATTの実装に真っ向から反対してきました。Appleが仕様を変更してからは、Facebookはこれまで広告識別子に依存してきたオーディエンスネットワークを大幅に変更し、コンテンツターゲット広告の配置機能を広告主向けのメールで発表しています。
なお、Androidでもバージョン12以降では広告追跡が制限されていく予定となっています。
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